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あなたの「クリエイティブ」を解き放つ可能性 〜デザインx教育xビジネス論〜

Unlock your creativity (「創造力」を解き放て)という言葉。
これはクリエイティブやデザインが好きな私のお気に入りキーフレイズです。

私はデザイナーに限らず、全ての人にデザインや創造性があると思っています。なぜなら、小学生時代の10歳くらいまでは、みんな図画工作で絵を書いたり、物を組み立てたり、あるいは授業中にノートの端っこに落書きしてみたり、うまいへたは別として、子供の頃には皆、遊びゴコロのある「絵心」をもっていたはずだからです。
でも、残念なことに徐々に大人になってゆくにつれて、「デザインやアート」に関する授業内容が減ってゆき、専門大学の受験以外に受験科目になっていない日本では、いつの間に「デザインやアート」に触れる機会が急激に減ってしまうのです。
特に「描く」ことには、文字・言語教育に比べて習熟度はこのように低下していってしまうのではないでしょうか?(大まかなイメージグラフ)

ビジネスパーソンのデザインに対する理解度の低さ
このように「デザイン・アート」に対する学習が不十分なまま大人になってきた我々日本人は、社会人になると「デザイン」に関連性の少ない職業になればなるほど、「デザイン」と聞くととたんに思考停止してしまう状況になります。
あるいは、アイデアはあってもうまくそれを表現することができなかったり、さのうてきなデータ・論理的思考になれすぎてしまい、新しいアイデアがなかなか出てこない、という状況に陥っているのが現状ではないでしょうか?

  ここ数年、ビジネスの世界で「デザイン」という言葉が「デザイン」という言葉がキーワードのひとつになっています。
   顕著だったのが、先月、経済メディアアプリのNewspicks で特集された「デザイン」連載号。驚きだったのが、軒並み2800〜5000近くのpick数(閲覧数)。通常であればpick数(閲覧数)は1000以上であるのと比較すると、もの凄く関心が高い話題であるのは確かです。
ただ逆に言うと、それだけ「デザイン」の意味をまだビジネスに結びられず試行錯誤しているからではないでしょうか?
(参考)Newspicksの記事、0話のみ無料視聴可能。

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また、先日NEWSPICKS アカデミアの「デザインの力」というイベントが大手企業が多いビジネス界隈の大手町で行われ、イベントの登壇者は、Newspicksのインフォグラフィックエディターの櫻田潤さんと、デザインファームのGoodpatch創業者の土屋尚史さんが対談されました。大手町界隈のエリートビジネスパーソン達がなんと満員御礼、「経営」と「デザイン」をいかに結び付けてゆこう?と考えているのか?大変関心が高いのだと実感しました。

「デザイン経営宣言」が意味するクリエイティブへの危機感

では、何故、ビジネスの世界で「デザイン」が必要とされ、注目されるようになったのか?その象徴的な出来事は、 ご存知の方も多いかもしれませんが、昨年5月に経産省特許庁によって発表された「デザイン経営宣言」です。

↓  リンク先:経済産業省特許庁ホームページ「デザイン経営宣言」pdf資料

 かつて、戦後の高度経済成長期にソニーや松下、ホンダなどの日本企業が斬新なアイデアやデザイン性のある商品(Walkmanなど)で数々のイノベーションを生み出し、世界を席巻しました。
が、そんな時代は一転、現代はApple(米)やDyson(英)など、イノベーティブな新商品を生み出す海外企業に押されている状況、特にモノ作り大国・日本企業にとっては、「デザイン」や「クリエイティブ」という言葉が日本経済復活のために切実に必要とされていることが、政府からの宣言からも容易に想像できます。

また、これ以外でも「デザイン思考」を導入する企業や、大手戦略コンサルティングファームによる、デザイン人材の大量採用の動きなど、ビジネスの世界で「デザイン」が経営再建の成長エンジンになるという動きが盛んに行われ、新しいサービス・デザイン・商品開発の動きも活発化してきているが、まだ特出すべき成功事例が、まだグローバルのレベルでは多くみられていないのが現状です。

脳科学者 茂木健一郎氏が語る「創造力」の始まりとは?

次に、茂木健一郎による、日本の「デザイン・アート」教育の日欧比較の現状がどうなのか?を簡単にまとめてみたのが下の図になります。

 茂木健一郎氏いわく、ヨーロッパ(ここではEUと表現します)は、「デザイン・アート」という教養が教育のベースに存在していますが、一方の日本はいわゆる主要5教科中心の教育に偏ってきた経緯があり、美術や音楽といった「デザイン・アート」という「教養(リベラルアーツ)に関する教育が付け足しのような扱い(やや軽視されがち)と、述べています。
ヨーロッパでの学習体系で何故こうなるかというと、音楽や芸術が「脳」を豊かに発達させるのに欠かせない要素だからではないか?と茂木氏は述べています。
一方、我々日本人は、「脳」を豊かにするための「デザイン・アート」という教養の素地が不足したまま社会人となり、ビジネスでデータや論理思考(左脳)に偏り過ぎてしまい、気がつくと数字や論理だけではなかなか説明の難しい「デザイン・アート」といったクリエイティブの領域に対して、良し悪しの判断できる感度(直観アンテナ)を十分に鍛えられていないのが実態ではないでしょうか?

この話からすると、結果、「デザインはデザイナーの仕事」、あるいは「デザインファーム」へ依頼する、というように切り話されてしまい、経営に必要とされるクリエイティブの発想を社内文化に根付かさせることに苦心しているのでは?と想像しています。またデザイナーにしても、専門学校卒でデザインには長けているがビジネス知識が不足している傾向にあるため、よりビジネス観点・経営観点で「デザイン」を語れる人材が足りない状況だと考えます。
(また日本ではデザイナーに対する地位が低く、年収ベースでもアメリカの3分の1くらいの平均年収しかないような状況、「デザイン」への理解度が低い現状)
もしヨーロッパのように、日本人が「デザイン・アート」といったクリエイティブの領域に、自ら再教育して能力を育むことができれば、実は今まで潜在的にかくれていた自らのクリエイティブの力を十分に発揮できるのではないでしょうか?

日本は実は「クリエイティブ」の非常に高い国

   こんなデザイン・クリエイティブ論を語っている筆者自身も、経済学部卒の人間で、デザイナーでもなければ、美大卒で絵のセンスが特別にあるわけでもありません。ただ他人との唯一の違いは、私が若い頃からファッションが好きで、ずっとデザインを追いかけ続けてきたこと、そして好きな「服」を仕事に、服の生産から商品開発を長く生業とし、ファッションという流行や感性の世界と、ビジネスという数字・データの相反する世界で長く働き、感性(クリエイティブ)とビジネスを両立させる難しさを数多く体感してきたことです。
  そんな私でも言えること、それは「日本は今でもクリエイティブの力は非常に長けている国である」ということです
   わかりやすい小売業を例にしてあげると、例えば、日本の都市にある小売店を他の国と比較すると一目瞭然です。ショッピングモールを他の国と比較して、こんなに面白い多種多様な雑貨・服飾品が豊富で、こんなに安い値段で買える国は世界のどこへ行っても日本だけでしょう。
  事実、日本を代表する小売業、ユニクロや無印良品をはじめとして、DAISO、ニトリなど、世界へ進出している企業が増えてきており、また観光客も日本製品に対する高品質と価格の安さだけではなく、他の国にはない、独自性あるデザインの高さや独特の感覚(センス)に魅了されている外国人の方も多いと思います。
  また、マンガ・オタク文化や渋谷・原宿ファッション、さらには各地方都市の独自の名産品の数々、これだけ発想のバラエティに富んだ国は珍しいのです。
ただし、唯一日本が弱い点は、これだけのクリエイティブを「ガラパゴス化」させてしまっていることです。(また、世界を意識している企業が少ないこと)

「木を見て森を見ず」の言葉通り、現場担当者(デザイナーやマーチャンダイザー)主導でやっているからなのか?はたまた経営者の問題か?わかりませんが、クリエイティブな力を一つの「ブランド」という一つのコンセプトとしてまとめる力にし、シンプルに情報発信する力、またそのコンセプトに基づいて商品開発やマーケティングが一本の筋を通して編集(マーチャンダイジング)することが、単純にできていない(=ガラパゴス化になっている)、それだけだと思います。
※すぐに日本人は職人気質(Craft)志向になってしまうのだと思います

この日本のクリエイティブの力を「デザイン経営」として最もうまく実現している好例がユニクロ(ファーストリテイリング)です。
  ユニクロは2006年より本格的に世界戦略を開始し、2006年のNY SOHO店OPENを皮切りにアジア・欧米各国へ店舗展開をして、現在展開国は20以上、売上はGAPを超えて、世界第3位のアパレル製造小売業になりました。
(現在は海外売上比率の方が日本を上回っている状況です)
      ユニクロが昔と比べて何が変わったか?。みなさん、消費者視点でちょっと考えてもらうとわかると思いますが、ユニクロの以前のイメージは「安くて品質がいい「部屋着」」だったと思います。それから、12年ほど前のヒートテックが大ヒットした頃から、「世界最高品質を最低価格で提供の実現』ー>「日本品質の実現(東レやカイハラデニムとの協業など)」ー>「日本文化(マンガなど)の発信(UT)」」ー>世界一流デザイナーとのコラボ企画(ジル・サンダーなど)を展開ー>ユニクロU(クリストフ・ルメール氏率いるパリデザイン事務所での未来のユニクロの服、真善美)等、ブランドイメージを年々高めてゆきました。
そして、一番の大きな転機は、ユニクロロゴの下に書いてあるメッセージ「Lifewear」という言葉にあると思っています。
つまり、ユニクロはかつて顧客にとっての「部屋着」のようなブランドだった企業から、10年以上の期間をかけて、「Lifewear」ブランド=生活に寄り添う「日常着」=「人生に欠かせない究極の真善美を持った服」へと、カッコいい、かわいい、着やすい、便利、買いやすい「一大ブランド」企業へと大きく変貌を遂げたのです。もちろん、ユニクロがこれだけの会社にまで成長したのは、当然ながら創業者である柳井正氏のカリスマ的な経営手腕が一番ですが、柳井氏の参謀として力を発揮したクリエイティブの力(=佐藤可士和氏や滝沢直己氏、ジョン・ジェイ氏など)がその裏には存在していました。
  そしてそれは無印良品でも存在し、またニトリやDAISOなどにしても、同様の手法でブランド価値を高め、顧客の要望や潜在的な期待を捉えて、テクノロジーの進化をうまく活用しながら応えることができれば十分に実現可能なことだとおもいます。(メーカーに関しても簡単に言えば、同様のことが言えると思います)

  少し脱線してしまいましたが、改めていうと、「日本には本来クリエイティブの力の土壌を持っている」のです。ただ、これをいかに正しく活用し、いかにアイデアを見つけて、斬新な発想で戦略的に実行に移せるか?それだけのことだと思っています。(口で言うのは簡単ですが、行うのは難しです・・・)

まず日本人は「クリエイティブ」への自己意識の変革を

   「デザイン」が注目されたきっかけとして、「デザイン思考」の代表的なデザイン・ファームとして有名なアメリカの企業であるIDEOが挙げられます。かのアップル製品などのデザインを手がけて有名になったデザインファームです。
同社の共同創業者である、トム・ケリー氏(愛日家の方ですね)がかつて書いた著書、「Creative Mindset」で同氏が述べていたコメントに、「日本人は非常に創造性に長けた国民である」が、それに対する認識とクリエイティブへの自信をもっていない、と言っていました。


おそらく、前述の通り、学校で芸術や音楽などのアートの学習がやや軽視されてきて育った結果、クリエイティブへの直観に対する理解や自信をこれまで十分にもてないのかもしれません。
トムケリー氏曰く、 今までにない斬新な「デザイン」を生むための思考を持つのに一番大切なことは、「クリエイティブへの意識変革」だといっています。   
(これこそがデザイン思考の本質だと私は考えます)

まずは、本日あげた「デザイン」に関するNewspicks記事やIDEOの書籍を読みながら、「クリエイティブとは?」について考えていただけたら、と思います。

次回は、具体的にではどうやってという持論を話してゆきたいと思います。


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