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未来を切り拓くコミュニケーションとは?〜@東京藝術大学TURNミーティング(Socially Inclusive Art Project) 〜

先週末、東京藝術大学にて日比野克彦氏が主催している「福祉×アート・プロジェクト」、TURNプロジェクトでの対談会に参加してきました。
私は、東京藝術大学DOOR(Diversity on Art Project)の生徒として初めての体験、SDGs(持続可能な開発目標)の機運の高まりからか、大きな講義室に約200名ほどの来客で満員御礼、日本も「ダイバーシティ&インクルージョン」への意識が確実に高まっているのかなな、と感じました。

「福祉をアートの力で社会を良くしよう」という、このTURNプロジェクトですが、ご存知でない方も多いかと思いますので、詳細はこちらをご覧ください。
https://turn-project.com/

これからの未来社会で、皆さんが障がい者や高齢者、外国人など、多様性ある人々と「どのようにコミュニケーションして」人と人との繋がりを作っていったらいいか?を一緒に考えるとても意義ある対談の場でした。
今日はその対話から感じた内容を、私なりの視点でレポートしたいと思います。

なお、今年は新任TURNプロジェクトデザイナーのライラ・カセムさんがファシリテーターとなり、本日のテーマ「未来におけるコミュニケーションの在り方」について語り合いました。(笑顔が素敵でとても気さくなライラさんはこちらです👇)

〜本日の登壇者のご紹介〜

まずは本日の登壇者をざっとご紹介!登壇者は日比野先生を含めて4名です。
・オーガナイザー:日比野克彦先生
ライラ・カセムさん(ファシリテーター)
・今回のゲスト登壇者の2名
    ー「障がい者×アート」で異彩を放つ(株)ヘラルボニーの松田崇弥さん
    ー哲学対話など様々な研究されている哲学者の梶谷真司さん(東大大学院)
また、後方でグラフィックレコーダーの3名が「議論を可視化」してくれました!(櫻田visual thinkingラボ,グラレコ部の友人の田中さんともばったり笑)

ちなみにヘラルボニーの松田さんとは、昨年障がい者支援活動でご一緒したことがあり、久しぶりの再会!彼との記念に、へラルボニーの手掛ける「障がい者xアート」ブランド、「MUKU」のネクタイを付けて観覧しました👇

哲学者の梶谷さんは初めてお会いしましたが、今回の対話に「深み」をもたらしてくれるような、とても貴重な「問いかけ」「体験談」をいくつも語って下さいました。(洞察力の深さに、非常に学びが多かったです)

現代社会における最大の課題とは何か?

今、社会ではダイバーシティ(多様性)とかインクルージョン(全ての人々を包み込む社会創り)とか、必要性が語られています。
まず最初に、今私たちの住む社会における、最大の課題とは一体何なのでしょうか?

ライラさん曰く、それはコミュニケーションできない「孤独」だといいます。

たしかに、私自身も今「双極性障害(いわゆる躁鬱病)」という障害を持っているのですが、最近、私の体調が悪くなる(身体症状が最も現れる)時も、大抵がなぜか「孤独」である瞬間なのです。その通りかもしれません。

そして、その「孤独」をなくすための課題解決策として大切なことは「コミュニケーション」です。

「孤独」をなくすために「コミュニケーション」を重ねることで、人と人とが繋がりあい、グラデーションのように混ざり合ってゆく。
このように「コミュニケーション」によって、社会課題の解決が始まるのではないか?と思います。

「コミュニケーションをよくする秘訣」とは?

コミュニケーションは、一見簡単そうに思いがちです。
しかしながら、実際に初対面の人、あるいは文化の異なる外国人、障がい者とコミュニケーションすると想像した場合にはどうでしょうか? (なかなか一筋縄ではいかないのではないでしょうか?)
コミュニケーションを円滑にする秘訣について、ゲストスピーカーの梶谷さんが「哲学対話」の研究からわかったことによれば、「コミュニケーション(対話)」には正しいルールがあるようです。

それは「平等に話し合う」ということです。

そして、我々が気をつけなければならない、
一番の「コミュニケーション」のバリアとなること、それは「知識」です。

ひとつ学生の例を挙げると、偏差値が良い頭のいい人の場合、豊富な「知識」を持っているため、「・・では」というように、自分の知識を使って会話をし始める。すると「知識」のない人は、対話をできなくなってしまい、コミュニケーションが停止してしまうのです。

反対に、偏差値が高くない学校の子ども達の方の場合だと、いい意味で「知らない」が故に、「自分の言葉」で「ありのままに」感じたことを語ることができる。不思議なことに、この方がコミュニケーションは、円滑に進むようになるのです。「子ども心」というのでしょうか、持っている「知識」よりも、人間的な「経験(感情)」の方がコミュニケーションにとっては、円滑に進んでいく秘訣なのです。

そしてもう一つ、コニュニケーションを阻む要因としてあげられるのが、「カテゴリー」分けするということです。

皆さん、無意識のうちに「xx大学出身」だとか、「障がい者」とか「外国人」とか、人を何かの「カテゴリー」という枠にはめてしまっていませんか?

危険なことは、このような「カテゴリー化」によって、その中にある「個人(ひと)」という大切な要素を完全に見失ってしまう、ということです。

「人」とは、「カテゴリー」で分類されるような存在なのではなく、「ひとりひとり」がそれぞれの「個性」やそれぞれの「価値」をもちながら生きているのです。だから、そうした「カテゴリー」という一種のフィルターを取り払って、「個人化」すること、「ひとりひとり」の話に耳を傾け、その人のことを「心で感じる」ことがコミュニケーションを促進してゆくためには、最も大切なのだと思います。

では「個人化」するためには具体的にどうしたら良いのか?
例えば対話するときに、その人の「好きなこと」とか「今日食べたご飯」のこと、「嫌な出来事」とかすごく自然な会話あっていいんです。そういうちょっとした日々その人が「感じる」ことを中心に「対話」することによって、人と人との「こころとこころ」が繋がってゆくのではないでしょうか?

また、健常者の方が障害のある方々と接する時も同様に、「障がい者」というフィルター(偏見)を取り除いて、「一人の人間」として対話することが非常に大切です。「障がい者」ではなく、「渡辺さん」「小林さん」というように、その人のを知ろうと対話し続けることによって、その人の本質(性格や価値観)が見えてくるようになり、心の距離がぐっと近くなるのです。

少し長くなりましたが、ポイントをまとめると以下になります。

〜ポイント:「コミュニケーション」をよくする秘訣とは?〜
・お互いが「平等に話し合う」こと
・「知識」よりも「自分の言葉」で「ありのままに」語り合うこと
・人を「カテゴリー」で分類せず、ひとりひとりと向き合うこと(=個人化)

言語は不完全!?多様性社会におけるコミュニケーションの手段とは?

次に、障害のある方々との対話や、あるいは日本で働く外国人の方々などとのコミュニケーションで、どのような手段を使っていったら、円滑になるのでしょうか?

福祉実験ユニットの一つ、「未来言語」で障がいを超えたバリアフリーな言語創りの活動をされている松田さん。こんな興味深い100年先のコミュニケーションの在り方について実験をされています。

実際に障害のある方々との会話では、今の言語は「不完全」です。また普段は日本語で普通に会話できていたとしても、もっと広い視野で考えると、外国人とコミュニケーションする際には、まだまだ言語は不完全、であると言えるのではないでしょうか?(まだまだ「言語難民」です)

例えば、障害のある人となら点字や手話、書記、あるいは絵(ピクトグラム)など、あらゆるコミュニケーション言語が必要ですし、また街中にいる外国人観光客の方々とは、言語が違うだけで、途端にコミュニケーションが断絶してしまうと思います。

ここで話し合われた面白い話では、
例えば土をこねる、紐をよるという作業を一緒にやることで「皆で1つのもので心を通じ合うコミュニケーションを創る」というもの1つのやり方だということでした。

また、日比野先生よりコメントで、以前実践されたワークショップでされた「インタビュードローイング」では、「評価を外す」ために23人から見た自分を周りの人が、「話を聞きながらその人についての絵を描いてコミュニケーションする」というやり方をされて、とてもいい学びを得られたそうです。

実はコミュニケーションとは、「言語」という単一化されたものだけでなく、それ以外の様々なやり方で、「人と人とを繋ぐこと」ができるのだな、と思いました。(これこそ、アートにしかできない世界観ですね)

来年には2020年東京オリンピック・パラリンピックが開催されますが、その先の未来にはひょっとしたら「ピクトグラム」が円滑なコミュニケーションを創り出す言語である可能性も余地があるかもしれません。(ライラさん談)

このように、コミュニケーションの方法(手段)はまだまだ発展途上で、アートの力、人間の創意工夫の中で作り出してゆく必要があるのだろうな、と感じました。

偏差値偏重教育、画一的な詰込み型教育が「対話」をなくしている

学校でも教員をされているという梶谷さんから、今の学校教育についての問題提起がありました。先ほどの「偏差値」の話もありましたが、もうひとつ、今の知識偏重型の教育にも問題がある、とのことでした。

今教育現場では「詰込み型の教育」から「考える教育」へ変わりつつありますが、まだまだ改善の余地があるようです。
例えば、偏差値の高くない学校での授業風景。先生は教科書を持って教壇に立って教えているが、実際の生徒さん達のうち、大学に進学するのはごく僅か。ほとんどの生徒は専門学校へ行ったり就職したりするような高校です。
つまらない授業中では、寝ている生徒や受験勉強のための内職をしている生徒がいたりして、まさに「学級崩壊」している状況です。
「こんな時、先生は決まりきったことを教えることに本当に意味があるのかどうか?」これは教育におけるコミュニケーションの問題のひとつだ、と梶谷さんは言います。

「考える」教育が盛んになってきている昨今、知識詰め込み型教育からの転換へ向けて必要なことは、教育者自身も決まり切ったことを教科書通りに教える(やらせる)のではなく、生徒ともっと「対話」をしあいながら、生徒にとって最適な教育をするような「コミュニケーション」が、学級崩壊しない良い教育なのではないでしょうか?(ちょっと古いですが「金八先生」がそんな感じでしたね)

「助け合い」を忘れかけている日本人

日本生まれのイギリス育ち、かつ障害を持っているライラさん。彼女は日本で生まれて13歳でイギリスに留学して、その後日本に帰国されたそうなのですが、彼女が日本に戻ってきて感じたこと、それは、日本人が「助けてくれない」ということだったそうです。
イギリスなら不便なことが多いから、困った人がいたら、自然に声をかけてくれて助けてくれる。それなのに、日本にいると困っていても声を掛けて助けてくれる人がいない。ライラさん曰く、「日本は生活が便利すぎて、普段不自由がないから、不自由がある人に気づかないんだ」と言います。

私自身、この話を聞いてとても驚きの話です。
なぜなら、日本人というのは「おもてなし(Service)」「思いやり(Compassion)」「お裾分け(sharing economy)」等、人が支え合う文化が昔から根付いているはずで、日本は世界から尊敬されるサービス精神の高い国だと思っているからです。
確かに、現代の日本人は「情報化社会」で一日中スマホを見ている忙しい日々を送っている人がほとんど。「困っている人に手を差し伸べる」習慣を実践するのを実践する機会や、そんな場を目の当たりにする機会が減ってきているせいか、本来日本人が持っている「支え合う精神」を忘れかけているのでは?と思います。

こういう「助け合い」の精神も1つのコミュニケーションの在り方で、日本人にとって、「助け合い」は得意分野であるはずです。自分やスマホに集中ばかり見てないで、ちょっと周りを見回してみるる、困っている人に声を掛けてみる勇気、習慣が自然に生まれると良いですね。

↓いい解決策の例:スマホしていてもわかる「助け合い」の輪(アンドハンド)

「対話」で大切なのは「正解」を求めないこと

そろそろ対談も終盤になり、どういう「対話」があるべきなのか?という議論になりました。ここでも哲学対話を研究されている梶谷さんより非常に良い話を伺いました。

「話し合う時には、別に分かり合えなくて良いし、正解を求めなくても良いんですよ」ということでした。

大切なことは、「対話」をして人の話に耳を傾けること人を見ること決めつけないこと同じ空間を共にすること、特別に考える必要はなくて「感じる」ことができれば良い、と。
人はそれぞれだから相違はあるにしても、それを理解できなくても一緒に寄り添える気持ちが大切であり、それこそが「対話」の在り方なんだと感じました。
そして「コミュニケーション(意思疎通)」もこの延長線上にあって、大切なことは「心と心のコミュニケーション」。それさえあれば、互いに何とか理解し合おうとするようになるし、それが人のつながりを創る。

私は「社会を丸くする」という言葉がとても好きですが、やはりみんなが輪になって平等になって話し合う「対話」から、多様性ある社会における「コミュニケーション」が生まれるのではないかな?と改めて感じた一日でした。

二時間強の濃密な対談でしたが、深い対談内容で非常に意味のある一日でした。

松田崇弥さんの障がい者×アートのブランド、「MUKU」のネクタイをつけて、二人で記念写真✨

今回のNOTE、ものすごい長文になってしまいましたが、最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました!
今回は、この貴重な体験を、少しでも多くの方に「おすそ分け」したくて、頑張って書いてみました。
これを読んで、少しでも「未来のコミュニケーション」をどうしたら良いか?考えるヒントになってもらえたら、とても嬉しいです!

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