推しグループが解散することになった

 

 バイトの休憩中に見て、頭は真っ白に、目の前は真っ黒になった。

 高3で初めてフライトに行ってすっかりPASSPO☆に魅せられてしまった私は、大学生になって上京したのをいいことに、追っかけを始めた。
 大学に入ってから今日まで丸三年と数カ月、何をするにもPASSPO☆のことが一番だった。辛いことだらけの日々の中で、フライトに行っている時が一番楽しくて幸せだった。今、毎日毎日死にたいと思いながらも必死に就活してるのだって、これからもずっとPASSPO☆のファンとして生きていきたいと強く願っているからだ。「おばあちゃんになってもアイドル」を掲げる彼女たちと一緒に年を取って人生を歩んでいきたいと、本気で夢見ていた。
 そのグループが、後数カ月で解散してしまう。
 4月に推しのバースデーイベントに行って就活辛いと言う話をしたら、推しは「じゃあPASSPO☆がよもぎちゃんの頑張る源になるね!」って言ってくれた。でも9月までに就職が決まらなかったらその頑張る源がなくなってしまう。
 あの時推しは、どんな思いで私にああ言ってくれたのだろうか。もろもろの情報から考えると、あの時期は解散するかしないかの話し合いをしている真っただ中だったはずだ。
 それでも推しはPASSPO☆が力になると私に言ってくれた。そして私は無邪気に、これからもずっとPASSPO☆を応援していきたいと推しに話してしまった。
 PASSPO☆のことも推しのことも分かってるようなつもりになってただけで、私は何も知らなかった。
 
 
 帰ってきてからパソコンを立ち上げて、思い出を振り返りながらもっとああしたかったこうしたかったとひたすらキーボードを打った。そうしないと気持ちが落ち着かなかった。でもこんな時に自分の願望や欲望ばかり書いてしまう自分の浅ましさに嫌気がさして全部消した。そしてめちゃくちゃ泣いた。
 今も9月22日以降の事を考えると、息が苦しくなるくらい辛い。自分を支えてきてくれたもの、これからも共にあれると思っていたものに後数カ月でお別れを告げなければいけない現実を、まだ受け入れられていない。
 
 でも、これだけは声を大にして言いたい。私は裏切られたなんて微塵も思っていない。
 
 アイドルは偶像だ。オタクはそこに多かれ少なかれ自分の理想を投影して夢を見る。私だってそうだった。彼女たちが口にする「PASSPO☆で居続ける」という言葉を信じて、そこに夢を見ていた。
 一方で、何度も推しと握手して話をしていると、偶像として見るよりも相手が生身の女の子であるという実感の方が強くなってくる。推しや他のクルーのことをアイドルというフィルターを通して見ていたのは間違いないけど、「笑顔で歌って踊って夢を見させてくれるアイドルという存在」というベールで彼女たちを完全に包んでしまうことはできなかった。アイドルを偶像として見ることは何ら悪いことではないけど、私はアイドルと言えども感情と意志と人格を持つ一人の人間なのだという当たり前のことを忘れたくはなかった。振り返れば彼女たち自身も、アイドルではタブー視されがちな結婚や恋愛の話を積極的にすることで、その偶像から抜け出そうとしていたようにも思える。
 
 アイドルだって人間だ。アイドルで居続けるにしても辞めるにしても、これから先、何十年と、一度しかない自分の人生を生きていく。
 
 私も就活生として今後の自分の生き方を模索している真っ最中なので、今のままの自分でいいのかとか自分は本当は何をしたいのかとか考えることの辛さしんどさは分かる。どんな道を選んだって正解なんてないし、誰に何を言われようと最終的には自分で決めて、自分で進まなきゃならない。自分の将来について考えることは本当に怖い。ある程度キャリアを積んで成果を残しているなら、それを手放すことへの恐怖だってあるはずだ。
 9年間アイドルを続けてきて、辞めないと言い続けてきたけどやっぱり迷いが生じて、自分の道を決めなおしたいって思った人に、オタクとして見ていた夢を押し付けて裏切られたと言うことは私にはできない。
 まあ偉そうに言ってるけど私のパッセン歴はたかだか4年しかないし、それよりもっと時間と情熱を捧げて応援してきた人が裏切られたと怒っていてもそれは仕方ないことだと思う。怒らないからいいファン、正しいファンという訳でもない。推しグループの解散にどんな感情を抱くかによってファンであることをジャッジされるべきではない。
 ただ私は、偶像のアイドルとしてよりも、一人の人間として推しグループのメンバーたちに幸せになってほしい。
 
 PASSPO☆が今までしてきたことは何一つ間違っていないし、これからしていくことも間違っていない。クルーがそれぞれどんな道を選んだとしても、そこで幸せに生きていけるならそれでいい。
 
 怒るより悲しむより人間としての幸せを祈ってしまうくらいには、近づきすぎたし好きになりすぎてしまった。
 
 
 
 なんてかっこつけて書いてるけど本当にマジでこれからどうしたらいいのか分からない!!!
 自分の人生すらままなってないのにこれからを生きる上で心の支えにしようと思ってたものがなくなるって言われていやちょっと無理ですっていうのが正直な気持ちだけど、もうそれは明後日からのツアーの中で追々折り合いを付けていくしかない。
 泣いても笑ってもこれが最後のツアー。それが終わるまでには、私もPASSPO☆がなくなった後の世界でどう生きていくか答えを見付けたい(あと内定も貰いたい)。
 そして最後に、笑顔で「ありがとう」って心の底から大好きな人に伝えたいな。

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