【伊達ルネッサンス塾 第3期/フィールドワークレポート1】不利な環境を乗り越える、技と知恵と視点―丸森町耕野地区

■2016/9/17(土)@丸森町耕野地区

今年度の伊達ルネッサンス塾では、塾生により深く地域を知ってもらうため、先人たちの現場を視察するフィールドワークを開催することになりました。1回目の舞台は丸森町耕野地区。塾生4名+一般参加者4名に参加いただき、山里で力強く地域づくりに取り組むみなさんのお話をお聞きしてきました。

主なメニューはこちらです。
○「丸森ザンビアプロジェクト」のお話&実例訪問
○“耕野の迎賓館”ツリーハウスのお話&見学
○振り返り

■「そこにあるもの」でつくる。

まずは耕野まちづくりセンターにて、丸森ザンビアプロジェクトのリーダーである養蜂家の石塚武夫さんから、プロジェクトの概要についてお話をうかがいました。丸森ザンビアプロジェクト(正式名称:丸森町の在来技術を活用した小規模農家の食糧安定利用強化プロジェクト)は、耕野振興会が JICA(独立行政法人国際協力機構)から委託を受け、南部アフリカのザンビアの農村部に技術や知識や経験を紹介するもので、今年度から2019年度まで3年間実施されます。耕野地区ではこれまでにも複数回、ザンビアとの交流事業を行っていて手応えを感じたことから、今回の事業が始まりました。国際的な技術支援というと大学や専門機関が行うものというイメージがあるかもしれませんが、耕野のような農村部の現場で培われた知恵や技術がとても役に立つのだそうです。また、ふだん接することのないアフリカの人と直接交流をし、同じものを食べたり一緒に作業をすることで、見知らぬ外国人から名前を持った「○○さん」へと変わる。それが耕野の人びとにとってとてもいい経験になっているというお話でした。

一通りお話をお聞きした後、芦沢集落にある「がったり」の見学へ。「がったり」とは、ししおどしや水車の仕組みを使って精米や製粉をする木製の道具で、1960年頃までは集落にたくさん見られたそうです。ここのがったりは、10年ほど前に、昔ながらの農村風景を復活させて地域を盛り上げようと、住民のみなさんの手で復元しました。ザンビアではトウモロコシやナッツを製粉して食べるため、女性たちは日々手作業で製粉をしていますが、数年前にこのがったりを見たザンビア人研修生が、ザンビアでも使えるのではないかと考え、現地で実際に制作したそうです。ザンビアで作られることになったのは偶然ですが、がったりを作った当時はニュースなどに取り上げられ、農村の風景に魅かれて移住した人たちも多くいたそう。「『よし作ろう!』と誰かが言い出すと、実際に楽しんで作ってしまう。この言い出しっぺの存在が大事」と石塚さん。芦沢集落は30戸ほどですが、今でも単独で行う盆踊りが維持されていたり、地域力の高い集落だそうです。

続いて、きのこ農家の加藤通明さんのお宅へ。加藤さんは40年前に東京から耕野地区へ移住されました。当時は都会から突然やってきた若者に何ができるのかと疑念を持たれたりもしたそうですが、この地に根付いてきのこ栽培を続けてきました。数年前にザンビアを訪問した際、加藤さんが菌床の殺菌方法について行ったアドバイスにより、きのこの生産量が増えたそうです。石塚さんは「ゼロの状態から自分で全て作り上げてきた加藤さんだから、現地の状況を見た時にすぐにアイディアを出すことができるんだと思う」とおっしゃっていました。

■とにかくやってみる。

お昼は「いなか道の駅 やしまや」さんで栗ぶかし(栗おこわ)を中心に旬の野菜を使ったごはんをいただきました。こんにゃくも手作りだそうです!八島哲郎さんは4代目。もともと雑貨屋とガソリンスタンドを経営していたお店を6年前にリニューアルオープン。「小さな『道の駅』」をコンセプトに、飲食コーナーを設けたり地元の特徴的な商品を扱い、たけのこ掘りなどの体験イベントも行っています。わざわざファイリングした資料まで用意して出迎えてくださいました。

お腹と心が満たされたところで、午後は〝耕野の迎賓館〟ツリーハウスへ。案内をしてくださったのは木津雄一さん。このツリーハウスを建設したのは平成20年。地域を盛り上げるために何をしたらいいか住民で話し合い、建設することにしたそうです。町からの助成金はたったの10万円。自分たちで木を伐って製材し、いろいろなところから材料を集めてきて、まさに「手作り」で作り上げました。のべ100人ほどに参加してもらい、なんと2ヶ月ほどで作り上げたそうです。ここでも、耕野の人たちの行動力とエネルギーを強く感じました。ツリーハウス見学は、ちょうど耕野に滞在中のザンビア人研修生も参加。ザンビアではツリーハウスは無いけれど、動物を寄せ付けないために長い柱を使って高床の建物を作ることがあるなど、興味深いお話も聞くことができました。

最後はお隣の大張地区にあるカフェ「つぶっこ」さんへ。コーヒー、ハーブティーとケーキをいただきながら、オーナーの佐藤真紀さんから、開店にいたるまでのお話をうかがいました。初めは、「リタイア後に自宅でサロンのようなものができたら」と思っている程度だったという真紀さん。いろいろな縁がつながって震災復興のための起業支援を受けることになり、パソコンもほとんど使ったことがない状態から「起業」に漕ぎ着けたそうです。「私は50歳を過ぎてからこうなってます。やってみなくちゃ分からないのだから、みなさんもとにかくやってみて」という言葉にとても説得力がありました。
一息ついた後は、振り返りタイム。とても濃い一日を過ごした参加者のみなさんからは「なぜそれをやっているのか、ライフヒストリーが大事だと感じた」「そこにあるものを使って作る工夫が素晴らしかった」「自分もどんどんチャレンジしていきたい」などの感想や決意が聞かれました。一人一人の技と知恵と視点で、一見不利な環境も乗り越えられる。また、お互いの得意なことを持ち寄って協力し合うことで実現できることがある。耕野のみなさんにそれを教えてもらった一日でした。

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