ちょ、そこの元サブカル女子!~白川ユウコの平成サブカル青春記 第二十八回/だいたい三十回くらい書きます

1998年 平成10年 22歳 大学4年生

☆1月 ノーパンしゃぶしゃぶ事件、モーニング娘。デビュー、庵野秀明「ラブ&ポップ」

 年末年始は静岡へ帰り、深夜放送の「ワンダフル」をテレビで視た。最後の十分間に、アニメ「すごいよ!マサルさん」が流れるのだ。オープニングの曲はPENICILLIN。コテコテのヴィジュアル系の曲「ロマンス」が、なぜかこの不条理ギャグ漫画の世界にジャストフィット。くせになる。東幹久と原千晶の司会の本編の後に放映。コマーシャルが終わったら…と心待ちにしていたら、あれ!?
 静岡では、Jリーグ・ジュビロ磐田の番組が入っていた…マサルさんやってない!!アニメ不毛の地!!
 大蔵省のノーパンしゃぶしゃぶ接待汚職事件を受けて、警察の捜査が入った。その系列店のキャバクラに私の地元出身の友人が勤務しており、抜き打ちのガサ入れ時に捜査官に写真を撮られたりしたという。そんな物騒な店よりはマシと、彼女も私の勤務する軍服パブに紹介した。彼女とコイちゃんとラブリーさん。連絡先を交換してはいけない規則があったが、私には友達が三人も。他のヘルプのフリーター女子たちも、指名争いには関係ないので平和に仲良く待機していた。盛り上がりすぎて私語を注意されるほどに。
 昼間はタワーレコードに勤務しているという子がいた。「お給料、安いです。社割でCD買えるっていうのと、タワレコの店員っていうプライドだけでやってる」。下北沢に住んでいて、彼氏が渋谷系といういかにもサブカルな子もいた。新宿駅までの帰り道で時々一緒になって歩いたけれど、「なんか、店長が、女の子同士で帰ってないかどうか駅に先回りして見張っているらしいですよ」。

☆2月 金大中大統領就任


 大学の友人たち、シノブさん、ナガセさん(仮名)、ケイコちゃん(仮名)が韓国旅行へ行くという。「よんぱるも一緒に来てくれない?メンバーが奇数だと一人部屋料金がかかるし、韓国語できるよね?」とお誘いを受けた。「えっ。行く」。
 H.I.S.で四人分の航空券とホテルを彼女たちが手配してくれたが、旅行社側から日程を変更してくれと申し出。まあいいですよといったら、今度は、宿泊予定だったホテルリッツが、金大中大統領就任式に使用されるためこれも変更と言ってきた。「これはねえ…」「ゴネてもいいやつだよねえ」ナガセさんがH.I.S.にちょっと強く言ってくれて、ソウル市内の焼肉屋さんの食べ放題チケットをゲット。
 町外れのスイスグランドソウルホテルは4つ星でなかなかよいところ。2002年日韓ワールドカップ開催前の、日本人観光客がまだ少ない韓国の国民たちは、日本人の私が懸命に拙いハングルを話すととても喜んで、街中でおまけやおしゃべりなどたくさんサービスしてくれた。東大門市場の近くで流れてきた音楽に「あっ、ポンチャックだ!」と反応したら、近くにいたお姉さんに失笑されてしまったが。女性同士で手をつないでいる人がけっこういた。インドでは男性同士が手をつないでいたなあ、などと思い出した。市場で買った洋服や下着を着て、ホテルのゴージャスな内装の廊下や部屋や洗面台の上などで写真を撮りあった。
 現地のツアーコンダクターに、「板門店に行きたい」と言うと、オプションを組んでくれた。規約がいろいろあり、念書を書かされる。ジーンズ、ミニスカート禁止。ジェスチャーみたいなことをしない。敵の攻撃によって負傷、死亡した場合は文句言わない。
 バスで北朝鮮との国境まで。サービスエリアみたいなところで昼食。途中の検問でパスポートを見せる。
 青い建物が並び、内部を横切って黒いコードが渡してある。それが国境。国連兵が警備している。この日は霧が出ていて、北側は見えない。ぼんやりとコンクリートの町のようなものがあるが、それは「宣伝村」、だれも住んでおらず、夜になると一斉に灯りがつき、朝、一斉に消えるという。その手前には冬の草原が広がり、「地雷畑でごじゃいます」だそうだ。国境のコードを跨いで、ヘルメットにUNと書いてある国連兵を入れて写真を撮った。
 天候がよければ、北側の警備兵らの姿も見られるという。北朝鮮国家の誇りのために、みめよき男性を見繕って配置していると聞き、「見たかったねー!」「こんなんとか、こんなん?」と絵日記に想像図を描いた私であった。

☆3月 「新世紀エヴァンゲリオン Death」
☆4月 木原浩勝『新耳袋』、古谷実「僕といっしょ」
 雑誌Quick Japanで漫画「首吊り気球」がすごい、と話題になっていた。作者は伊藤潤二。絵柄が、どこかで見たことがある。小学生の頃、朝日ソノラマ社の雑誌「ハロウィン」に、夜になると体の表面と内部が裏返る話が載っていた。あの作者ではないかと見当をつけ、下高井戸の貸本屋さんで探した。やはりそうだ。
 コイちゃんが好きそうだなと紹介すると、伊藤潤二先生に見事にハマッた。さらに犬木加奈子先生にも。「怪奇診察室」、ハンサムなカウンセラーにオカルトな懸案が持ち込まれ、全く解決にならない救いの無いストーリー。それが奇妙に魅力的で、「不思議のたたりちゃん」も読み始める。
 古谷実「僕といっしょ」もコイちゃんと読んだ。中学生・小学生の兄弟、すぐ夫といく夫が、死んだ母親の再婚相手に家を追い出されてホームレスになるところから始まる。「動物クイズ~」「ワァ~…」「犬と猫が結婚しました。その子どもの鳴き声は?」「ワ…ワニャン?」「ブ・ブー。正解は、ああ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“ぁぁぁ」基本、ダメなヤツしか出てこない。ヒロインあや子「人生って、何?」なんだか気分にしっくりときた漫画だった。

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