1996年　平成８年　２０歳　大学２年生

☆５月　puffy「アジアの純真」、川本真琴「愛の才能」

　独立夜間学校ライターズ・デンは、新宿ロフトプラスワンでイベントを開くようになった。お店は新宿三丁目駅から少し歩いたところ、富久町に、1995年にオープン。トークライヴが聴ける居酒屋。店長は平野悠氏。宗教・オカルト系のイベントのときなどに、「風水的に最悪」「悪い霊がたくさん集まる場所」「邪悪なものがいる」などと散々に言われることが多いという。
　まず平野氏が藤井良樹氏にいろいろインタビューし、講師陣が登壇。藤井さんが「鶴見済さーん」と呼びかけ、ご本人登場！ほんもの！背、高い。緑色のポロシャツ。「はーい」思ってたよりも声が少し高い。平野さんに自殺についてなんか絡まれていて、「つるみさいさん」と呼ばれて「わたるです」「終わりなき日常、ってそもそも俺が言い出したんスけどねえ」と語っていた。山崎浩一氏も登壇。こざっぱりナチュラル系のお洒落な方。私は高校時代、宝島とＳＰＡ！と週刊ポストの連載をいつも読んでいた。鶴見さんは『退屈なパラダイス』を愛読していたそうだ。お二人が会うのは初めてという。
　終演後、何人か残っていたので、私も鶴見さんに話しかけた。「あの、ファンレターのお返事をいただいた者です」「え？…えーと、新潟の人？」「静岡です！！」なんとおぼえてなぁぁぁい！！「今度、いただいたお葉書もってきます！！」急いで学生寮に帰る。門限は夜九時。延長しても十時。昭和女子大学緑声舎のかなしみ。
　そんなこんなで次に鶴見氏が講師の授業。最後の質疑応答のとき、若い女性が自殺について質問したら、「もう自殺の話、自分で飽きちゃったんだよね。もう次のテーマの準備をしてます」というようなことをおっしゃっていた。
　授業の後、「この前の、静岡の者です。いただいたのはこれです！」岡崎京子の黄色い絵葉書。「あー、これ。覚えてるよー！一番気に入ってた葉書で出したんだもん。返事なんて滅多に書かないしさー。忘れるわけないよ」うわああ！！そんなこといわれたらもう！！
　帰りが夜十時を過ぎそうだなという日は、外泊許可をとりつけて高円寺に住んでいるコイちゃんの家に泊めてもらっていた。この日もそのまま会場から新宿の居酒屋へ。雑誌やテレビなどのメディア取材に知り合いの女の子を、分厚いカタログと化したプリクラ帳を使って紹介・斡旋する「女子高生仕出し女子高生」柳川圭子ちゃんや、フェリス付属の女子高生をはじめ、鶴見ファンの女性の大橋さん、井島さん、「中森文化新聞」に「東京解析男」として鶴見さんに取材された塚本色夢さんらと知り合った。塚本氏が私に「鶴見さんと宮台さんどっちが好きなの？」と訊いてきて「鶴見さんに決まっているでしょうが！！」ご本人の目の前で何を！！圭子ちゃんが「写ルンです」で鶴見さんとツーショットを撮っていて、「若い子って今すごいたくさん写真撮るよねー。なんで？」と鶴見さんに訊かれていた。私は緊張しまくっていてそれどころではない。居酒屋はとても騒がしくて、隣に座ったときに鶴見さんに「ここ音がうるさくて話せないね」と言われてどきどきしてしまった。
　岡田斗司夫氏が中央大学学園祭で鶴見さんと公開対談をするという情報を聞きつけ、そのときの仲間・大橋さんと井島さん、あと初めて会う女の子二人の五人組で電車に乗って八王子キャンパスへ。一人は大橋さんと同い年？もう一人は私と同い年で、鶴見さんのクラブ友達という。黄色いスマイルマークが好きで丸顔なので、仮にニコちゃんとしておく。東京のクラブに興味津々の私は、ぜひ連れてって！とお願いすると、「新宿リキッドルームのＸ－ｔｒａとかゴアのパーティーとかあったら誘いますよー」と言ってくれた。
　岡田氏との対談で鶴見さんは、「いてもいなくてもどうでもいい存在なら、いてもいいじゃん」それ私が高校のときにお手紙に書いたやつじゃん。「少数精鋭のテクノクラートで社会を管理？そんな奴ら、俺が撃ち殺してやりますよ。パンパンパーンって」
　またしても終演後、こんどは女子五名で「鶴見さーん！！」他の子はなんか渡したりしていて、私は緊張して出遅れ、なにも言えなかった。そんな私は鶴見さんから「今日の話、難しかったでしょう」と訊かれ「いえ！おもしろかったです！」大して気の利いたことも言えず、でも話しかけてもらえたことがとても嬉しかったのだった。
　女の子みんなで学食へ行った。中央大学の学食は豪華だときいていたからそれも楽しみのひとつだ。私は竜田揚げ定食を頼んだ。評判どおり安くて美味しかった。400円台でおなかいっぱい。
　この日の両氏の対談内容はその後『マジメな話　岡田斗司夫世紀末対談』に収録され、「鶴見氏には追っかけの女の子たちがいる！」と記されることになる。テクノクラートを撃ち殺す話はカットされていた。