見出し画像

ウェールズ紹介

たまには住んでいるウェールズのことでも書こうかと思います。

<概要>

下の地図の赤い所がウェールズです。ただの一地方ではなく、「国(nation/country)」です。イギリスを構成する4つの国のうちの一つ。
他の3つは、イングランド、スコットランド、北アイルランドです。

画像1


首都は南部の港湾都市、カーディフ。ウェールズ最大の都市ですが、人口はたったの33万5145人です。
独立した議会がありますが、医療・教育はほぼ一緒。違いはあまり分かりません。

(画像はカーディフ市庁舎。クリスマスの季節になると、建物正面の原っぱに「ウィンターワンダーランド」という移動遊園地が設営されます。)

画像3


公用語はウェールズ語と英語。公的文書や標識は全部両言語併記です。ラグビーが強いです。
シンボルは赤いドラゴン、ラッパ水仙(daffodil)、西洋ネギ(leek)。
牧羊が盛んで原っぱや丘は羊だらけ。のどかなお国柄で人懐っこく親切な人が多いです。

3月1日はウェールズの聖人、聖デイヴィッドの日。子供たちは伝統衣装を着るのが恒例です。
女性のボンネットと呼ばれる背の高い帽子が有名です。あとは格子模様が多用されている気がします。イラストの男の子が胸につけているのは、ネギのブローチです。

画像3

<有名人>

ウェールズ出身の有名人は、歌手のトム・ジョーンズ、俳優のクリスチャン・ベール、キャサリン=ゼタ・ジョーンズ、自然保護家の故C.W.二コルさん、ロックバンドのマニック・ストリート・プリーチャーズ、元ボクサーのジョー・カルザゲなど。

<歴史>

イングランドに併合されたのは13世紀。
ウェールズ南部のロンダ渓谷は良質の石炭を産出し、18世紀の産業革命を支えました。石炭産業は20世紀前半に最盛期を迎え、カーディフは世界最大の輸出港として栄えました。しかし、20世紀後半のエネルギー革命で石炭産業が衰退してからは、あまりこれといった産業もなく、イングランドやスコットランドより貧乏です。

<民族・言語>

もともとの住民はケルト人。小柄でがっしりした体格の人が多い印象です。身長157㎝の私と同じぐらいの人がたくさんいます。もちろん、今は人種・民族ともに多種多様な人が住んでいます。

ウェールズ語はケルト系の言語です。ヨーロッパで現存する最古の言語の一つです。元になったケルト語は、アングロサクソン人の支配が始まるまでブリテン島で広く話されていました。ちなみにヨーロッパで一番古いのはバスク語らしいです。
ケルト系言語の仲間にはイングランド南部のコーンウォール語やアイルランド・ゲール語、スコットランド・ゲール語などがあります。

ウェールズ語話者は人口の約23%。学校や公の場所で使用を禁じられていた期間が長かったため、激減してしまったのです。しかし、20世紀後半には復興運動が盛んになり、1992年にはついに公用語として英語と同等の地位を獲得します。今では、公立校ではウェールズ語教育が必須になっており、また、全授業をウェールズ語で行う学校も愛国的な親たちに人気です。

ウェールズ語は英語とまったく違う言語です。『ロード・オブ・ザ・リング』の登場人物が実際話すのはこんな言語じゃないかと思うような、魔法の呪文のような響きです。
英語が主要言語である南部と違い、中・北部は日常的にウェールズ語が話されており、旅行に行くとまるでファンタジーの世界に迷い込んだような気分になります。
でも、ウェールズ訛りの英語はイングランド人には田舎臭く聞こえるらしく、笑い物にしたり馬鹿にしたりする心ない人もいます。

例えば、ロックバンド、オアシスのノエル・ギャラガー。

"The ones you meet in London are all right but the real ones are a nightmare. For starters you can't understand a word they say." 
ロンドンで会う奴ら(ウェールズ人)は別にいいけど、現地の奴らは最悪だよ。まず第一に奴らが何言ってるかさっぱり分からない。

まあ、彼は口が悪いので有名ですから。
次はお口直しに、前出の『ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)』の作者、J.R.R.トールキンの言葉。

“Welsh is of the soil, this island, the senior language of the men of Britain; and Welsh is beautiful.”
ウェールズ語は土の、この島の言葉。ブリテンの民の古くからの言葉。ウェールズ語は美しい。


ウェールズ語がいかに英語と違うか、という実例を二つ。

Bore da. (ボレダ)
おはよう。

Mae hi'n heulog heddiw. (マイヒン ハイログ へデュー)
今日は晴れです。


ウェールズの民謡もよろしければどうぞ。アイリッシュ音楽が好きな方はきっと好きだと思います。

"Dacw 'Nghariad" (There's My Sweetheart)




ありがたくいただきます。