見出し画像

夫と「いつも見てます」

夫はさほど有名ではないとはいえ一応ローカルタレント兼YouTuberであるため、ときたま外出先で声をかけていただくことがある。
テレビ(地方局制作の番組)で観たことある!と気づくと、つい声をかけたくなってしまうものだろう。
皆さん必ずおっしゃる。

「いつも見てます!」と。

繰り返すようだが、夫は全く有名でないのでいつもテレビに出ているわけでもない。
絶対にいつも見るような人間ではないのだ。
なのに口をついて出てしまうのだろうか。

「いつも見てます!」

いつも、見ているのだ。

「好きです!」でも「応援してます!」でも「頑張ってください!」でもない。
皆、伝えたいのだ、いつも見ているということを。

お礼を言っている夫を横目に、つい考えてしまう。

いつも見ている、の中には感情やメッセージが何も含まれていない。
自分の行動の報告である。
見ていた、でもない。
いつも、過去も、今だってお前を見ているぞ、ということだ。

かといって脅迫の雰囲気はないのである。
いくらか肯定的な気持ちで、いつも見てあげているぞ、という意味なのであれば、それは嬉しいことだ。

夫はいつもありがとうございます、とお礼を言い続けている。
いつも見てくれてありがとうございます、ということか。
いつも、これからも、自分のことを見続けてくれ、ということなのか。
私は隣でにこにこしながら、見ているって何だろう……と考えている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?