短文バトル222「徹夜」

夜を徹して何かをするのは独特に楽しい。テツな私はつい夜行列車で過ごす夜を思い出す。暗闇を切り裂く機関車のヘッドライトの明かりをチラチラと寝台車の窓から追う。寝台から這い出て眠れぬ夜を廊下の椅子でぼーっと過ごす。機関士さんはその間も運転操作を続け、車掌さんも最後尾の車掌室で執務している。眠りについた人々も含め、夜行列車で見知らぬ人と共有したその幼き日の夜。今でも徹夜にそんなことを思い出す。それから30年後の今、私もその夜を夜勤で共有している。

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