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PTA会長のためのやさしい祝辞講座(卒業式編)

というわけで、昨日noteデビュー()をしたわけですが、途中での中だるみならともかく、最初から間が空くのはよろしくない。

しかし、最初からポンポンとネタが出てくるわけではない。
そう、そんなときにはアレですよ。過去のリソースの活用ですよ。うふふ。

実はわたくし、せがれの通っている公立小学校でPTA会長をしております。
そうするってえと、市のPTA連合会で他校のPTA会長さんたちとのお付き合いもあるのですが、年度末の時期に多くの会長さんたちがぼやいていたのが「卒業式・入学式」の式辞です。
自分はこういう文章を考えるのが好きな質なのですが、多くの皆さんにとっては悩みの種なのだということを、改めて感じました。

そこで、自分がこの2019年の春、つまり2018年度の卒業式でお話した祝辞を題材にして、どういう意図で文章を組み立てたのかを解説したいと思います。

1.まずは全文をご紹介

まずは、全文をご紹介します。Wordのカウントだとほぼ1200字です。
私の場合、話すスピードが1分400字程度なので、3分強で収めることを念頭に書き上げたものです。

3分強の理由としては、そもそも長い祝辞は聞く側としてうれしくないものであること、それに、校長先生の式辞や教育委員会の告辞とのバランス上、それを上回ることが好ましくないからです。

みなさま、本日はご卒業誠におめでとうございます。まだ実感がわかないかもしれませんが、入学してからのこの6年間、あるいは転校してきてからの月日、毎日ランドセルを背負って通ったこの〓〓小での生活は、本日が最後です。みなさんにとって、小学生であったこの6年間はどんな時間だったでしょうか?

楽しいことばかりだったという人もいれば、そうではなかったという人もいるでしょう。でも、ぜひ心に留めてほしいのは、思い出というものには、正解も不正解もないということです。
ここにいるみなさんの数だけ心があり、それぞれ少しずつ違ったものの感じ方があります。同じ場所で同じことをして過ごした思い出でも、感じ方は人によって違うものです。
ですから、たとえ今日、自分の思い出の感じ方が、他のみんなと違うなと思っても、それを間違っていると思ったりしないで、その気持ちをどうか大切にしてあげてください。

どんな気持ちで過ごしてきたかに関係なく、今ここで受け取った「卒業証書」には同じ文章が書いてあるはずです。
面白かったという人も、大変だったという人も、みなさんがそれぞれいろいろな思いを抱えながら、小学生として6年間を過ごしてきた結果が今日の「卒業」なのです。
あまり自信がないという人も、無事に今日のこの日を迎えた自分を、ぜひ褒めてあげてください。

また、この6年間、みなさんは保育園や幼稚園の小さかったときからどんどん成長し、「大きな子ども」になってきました。しかし、この後、中学校へ、そしてその先へと進む中で、みなさんは「大きな子ども」から、「小さな大人」へと変わっていきます。

小学校での学びは、保護者の方々や先生方、周りの大人に教えてもらうものが多かったと思います。しかし、これからは、自分がどんな大人になりたいのかを考えて、そのためにどんなことを学んでいくことが必要なのか、自分自身で選び、そして行動していく場面が増えてきます。
特に、これからみなさんが大人になっていく時代は、私たち保護者が同じ年頃を過ごした時代とは、世の中の仕組みも、人々の価値観も大きく違ったものになってきます。
とても大変だとは思いますが、いままでの「当たり前」が変わる時代には、たくさんのチャンスや可能性があります。ぜひ、みなさんが生まれ持った才能、そして感じ方を活かせる学び、そして社会での役割を見つけていってください。

保護者のみなさまも、先生方も、そしてご参集の地域の皆さまも、この6年間本当にお疲れさまでした。保護者としても、地域で子どもたちに携わる一人としても、後輩にあたる私から申し上げられるようなことはありません。
ただ、引き続き、この〓〓小にご縁のある同じ大人として、今日巣立っていく子どもたちの未来を、一緒に見守っていけたらと思います。

以上、拙いお話で恐縮ですが、私からのお祝いの言葉とさせていただきます。

平成三十一年三月〓〓日
〓〓市立〓〓小学校PTA
会長 〓〓 〓

2.解説①:冒頭・呼びかけ

ここは「どんな時間だったでしょうか?」という問いかけで、卒業生たちに話しかけるかたちにしました。
なにせ、PTA会長の前に、校長先生の式辞と教育委員会の告辞がありますので(これは学校や地域によって異なる)、聞く一方でみんな疲れているはずです。

そのため、呼びかけや質問で、ボールを聞く側に投げてみることが大切です。

また、「この学校での6年間」と括ってしまうと、転校生に疎外感を与えてしまいます。その点への配慮も行いました。

みなさま、本日はご卒業誠におめでとうございます。まだ実感がわかないかもしれませんが、入学してからのこの6年間、あるいは転校してきてからの月日、毎日ランドセルを背負って通ったこの〓〓小での生活は、本日が最後です。みなさんにとって、小学生であったこの6年間はどんな時間だったでしょうか?

3.解説②:本文1・小学校生活の肯定

冒頭の問いかけを受けて、きっといろんな思い出がよみがえってきたと思います。(そう思いたい)
そして、その中には、楽しくないこと、嫌だったことだってあるはずです。

基本的に、校長先生の祝辞では、具体的な行事などを挙げて、どれだけみんなが頑張ったかを称えるものが多いと思います。そして、保護者の立場でそれと同じこととしてもあまり意味はない。

そこで、ネガティブな思いを抱いている子たちに向かって、そのことが別におかしいことではないと伝えるメッセージとして、本文の前半を構成しました。

楽しいことばかりだったという人もいれば、そうではなかったという人もいるでしょう。でも、ぜひ心に留めてほしいのは、思い出というものには、正解も不正解もないということです。
ここにいるみなさんの数だけ心があり、それぞれ少しずつ違ったものの感じ方があります。同じ場所で同じことをして過ごした思い出でも、感じ方は人によって違うものです。
ですから、たとえ今日、自分の思い出の感じ方が、他のみんなと違うなと思っても、それを間違っていると思ったりしないで、その気持ちをどうか大切にしてあげてください。

どんな気持ちで過ごしてきたかに関係なく、今ここで受け取った「卒業証書」には同じ文章が書いてあるはずです。
面白かったという人も、大変だったという人も、みなさんがそれぞれいろいろな思いを抱えながら、小学生として6年間を過ごしてきた結果が今日の「卒業」なのです。
あまり自信がないという人も、無事に今日のこの日を迎えた自分を、ぜひ褒めてあげてください。

4.解説③:本文2・未来へのエール

続いて、本文の後半は、中学校生活、そしてその先の未来へのエールです。

昔だったら、「えー、中学校生活においては部活動に励み…」とか言ったのかもしれませんが、今のスマホ時代、動画時代の中学生がどう学び、どう悩み、どう恋すべきかなんて、正直おじさんにはわかりません。

そして、そのさらに先なんて、この不確実な時代においてどうこう言えるはずがありません。「プログラミング教育」や「AI」「グローバル化」だって、4年後には別のバズワードに駆逐されているかもしれない。

そのため、率直に、私たち保護者世代の経験則は通用しない時代であり、「自分で考え、見つけてください」という内容にしました。

また、この6年間、みなさんは保育園や幼稚園の小さかったときからどんどん成長し、「大きな子ども」になってきました。しかし、この後、中学校へ、そしてその先へと進む中で、みなさんは「大きな子ども」から、「小さな大人」へと変わっていきます。

小学校での学びは、保護者の方々や先生方、周りの大人に教えてもらうものが多かったと思います。しかし、これからは、自分がどんな大人になりたいのかを考えて、そのためにどんなことを学んでいくことが必要なのか、自分自身で選び、そして行動していく場面が増えてきます。
特に、これからみなさんが大人になっていく時代は、私たち保護者が同じ年頃を過ごした時代とは、世の中の仕組みも、人々の価値観も大きく違ったものになってきます。
とても大変だとは思いますが、いままでの「当たり前」が変わる時代には、たくさんのチャンスや可能性があります。ぜひ、みなさんが生まれ持った才能、そして感じ方を活かせる学び、そして社会での役割を見つけていってください。

5.解説④:結び・保護者に向けて

卒業生に向けた祝辞とはいえ、会場には、保護者、地域の皆さんをはじめ来賓の方々がいます。壇上でお話をさせていただいている以上、ご挨拶せねばなりません。

しかし、そこはPTAの立場。自分自身も保護者であり地域の一員であり、それら皆さんと同じ側の人間です。しかも、どちらかといえば若輩です。

そこで、簡潔に、本当に一言だけというかたちにして、同じ立場でこれからも一緒にやっていきましょうという呼びかけで話を終えることにしました。

ちなみに、これが入学式の祝辞であれば話が違ってきます。新入生の保護者は、これから自分たちの仲間になる人達ですから、それなりの内容を割く必要があります。

保護者のみなさまも、先生方も、そしてご参集の地域の皆さまも、この6年間本当にお疲れさまでした。保護者としても、地域で子どもたちに携わる一人としても、後輩にあたる私から申し上げられるようなことはありません。
ただ、引き続き、この〓〓小にご縁のある同じ大人として、今日巣立っていく子どもたちの未来を、一緒に見守っていけたらと思います。

以上、拙いお話で恐縮ですが、私からのお祝いの言葉とさせていただきます。

6.おわりに

以上、拙い文章で恐縮ですが、毎年3月頃、頭をかかえるPTA会長さんたちに、ひとつの事例としてお役立ていただけたら幸いです。

また、内容はともかく、「冒頭・本文前半・本文後半・結び」という構成で考えていくと、事例集などに頼らなくても、自分の言葉を散りばめた祝辞を作ることができると思います。

なお、最後に個人的な持論を一つ、、、。

祝辞の場合、手に紙を持って読むため、ついつい目を落として読んでしまいがちです。でも、それでは、聴いてくださる側の子どもたちや保護者に言葉が届きません。
可能なことなら、予め内容を覚え、難しい場合も、一文が終わるごとに目を上げて会場をしっかり見渡すなどして、アイコンタクトを通した会場とのコミュニケーションを心がけると、より効果的ですよ。

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