プロは試作品をたくさんつくる。はじめて作る人ほど、最初から完成品を作ろうとする。

グラフィックを詰めずにゲームのプロトタイプを量産する方法は現代でも通用するのか」というテキストを読んだ。

「現代においてグラフィックの伴わないプロトタイプに意味はあるのか?」という問いが書かれている。興味深い。

面白いゲームがネット上にたくさんあるのに、グラフィックがしょぼいゲームなんて誰もダウンロードしないから、“ゲームの核だけを煮詰めたプロトタイプは誰にも見向きされないまま電子の海に沈んでいきます。これではプロトタイピングの意味がありません。”と。

さらに“もはやグラフィック無しではゲームは評価の舞台にすら登れない”と述べて、先輩の意見は間違ってると解く。

ううむ。

っていう記事を過去に書いたりしてるので、応答してみる。

グラフィックを詰めずにゲームのプロトタイプを量産する方法は現代でも通用するのか」という問いは、問いそのものが矛盾している。
システムだろうがグラフィックだろうが「詰めた」ら、それはプロトタイプじゃない。プロトタイプとは「詰める」前の試作品であり、詰めるための試みなのだから。

なぜ、プロトタイプを見知らぬ大勢の人に遊んでもらおうと思ってるのだろうか。
なぜ、プロトタイプを(見知らぬプレイヤーたちの)評価の舞台に登らせようと思っているのだろうか。

プロトタイプは試作品であるから、「やりなおす」の前提だ。
その前提で、友達や、スタッフや、仲間や、スポンサーや、そして自分が、試作品をチェックする。
「これでいける!」「こっちの方向性でいくといいんじゃないか」と、試作品をベースにより考えを深め、制作の方向性を定める。
それこそ、プロトタイプを5つぐらい作って、その中からおもしろくなりそうな試作品を選んで、詰めていく。
そのために作るものだ。

だから、プロトタイプを広く大勢に見せる必要はないし、そうしてはいけない(ノイズが増えるので)。「自分だけ」でもいいし、友達1人でもいいし、アドバイスしてくれた先輩でもいい。「詰める」前に、遊んでみようよ、ということね。

元テキストの先輩の言葉「短い期間でプロトタイプを沢山作れ、グラフィックは雑で良いから中身だけできたらまず公開しろ」は、正確に言えば「短い期間でプロタイプを作れ。核の部分だけで良いからできたら見せろ」だろう。

グラフィックが核なら、グラフィックがメインのプロトタイプを作ってもいい。とはいえ、現場で先輩が「グラフィックは雑でいいから」と言うのもわかる。

というのも、「あるある」だからだ。
たとえば(わかりやすいので)カードゲーム制作を例にあげる。
プロトタイプの締切になっても「できてない」
締切をすぎて、持ってきたものがカードが75枚、がんばってイラストを描いている。でも「イラストはまだ30枚しか描けてなくて、残り45枚はもう少しかかります」と言う。
さらに、ルールは定まってなくて、まだちゃんと遊べない
というのが、ほんとうに「あるある」なのだ。

これが困るのは、イラストを時間かけてがんばって描いているから、カード枚数や、その構成を変更したくなくなっている。だから、「カード枚数や構成を変更しない」という厳しい縛りのなかでルールを作ろうとして作れなくなる。

ぼくだったら、こうする。
最初にざっくりとルールを決めて、プロトタイプを作る(イラストは殴り書きか、文字だけ)。カード枚数は必要最小限と思う枚数の半分ぐらい。15枚とかね。それなら作るのに1日もかからない。半日でできる。

残り半日はテストプレイ。まずは1人何役かで遊んでみる。つまらないの前提で作ってるからおもしろくなくても気にしない。
プロトタイプを遊んで、必要であればカード枚数を増やせばいいし、構成もがんがん変えればいい。どんどんおもしろくしていく。ここ快楽。
あるていどゲームがおもしろくなって、ちょっとイラストをラフ絵の感じにバージョンアップする。
仮マニュアルを作る。

っていう流れかなー。

実感として、プロは試作品をたくさんつくる。はじめて作る人ほど、最初から完成品を作ろうとする

過去に書いた関連記事↓

【追記】これは雑誌の例。全部が投稿で構成された雑誌『ポンプ』。創刊前に冊子を作ったエピソード。「プロトタイプとは何か」がよくわかる記事。

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米光一成

ゲーム作家、ライター、デジタルハリウッド大学教授 代表作「ぷよぷよ」「バロック」「トレジャーハンターG」「はぁって言うゲーム」「はっきよいゲーム」「走るメロスたち」「ワンちゃんじゃんけん」 http://blog.lv99.com/

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