議論の引き際のための11のルール

2011.07.27に書いたテキストを再掲する。のちに「SNS断捨離」の発想につながる「SNSで無駄な議論をしないためにメモ」として書いたものだ。
いまも、このスタンスは守っていて、議論はSNSではなく、他の場(リアルに会うとか、DMとか)でやるようにしている。そのほうが圧倒的に深く速くノイズなく議論できるからだ。

SNSは公の場だ。パーティーの場ぐらいのイメージでやっていたほうがいい(しかも、通りすがりの人が乱入できてしまう割とオープンなパーティーだ)。
そういった場で、ときどき発言権が回ってきて、みんなに何かひとことを言う。そんなとき、議論をふっかけたり、誰かの非難したりするだろうか。しない。

「オープンなSNSは議論する場ではない」と考えたほうが、スッキリする。

とはいえ、リアクションがあって、それに返信して、対話になることもある。それは歓迎だ。だが、対話が議論になったとたんにSNSでやることじゃなくなる。そこで、“引き際”を明確にしておいたほうがいいと考えて、以下の条項を作った。

追記:いまや、無駄な議論になってきたら、すっと抜ける紳士淑女力が必要だろう。最後に無駄な追い打ちを重ねる側のほうが負け犬ライクでかっこ悪い。
特にトンチンカンなうざ絡みしている相手に対しては、トンチンカンな部分を指摘し「不快だ」といことを伝えれば、「こちらも不快だったので双方不快ということでイーブンですね」とトンチンカン理屈で逃げの手をうってくるので、そこで引いてあげると相手の気も収まってよい。

以下、2011.07.27に書いた「議論の引き際のための11のルール」(若干の修正加筆あり)。

議論の引き際のための11のルール

対話のつもりでも、長引くと、好戦的な視野になってしまう。
そうなるといけない。
どんどん視野が狭くなってしまう。
どんどん建設的な対話でなくなってしまう。
「相手を打ち負かす」という姿勢は虚しいだけだ。

襲いかかってくる者は攻撃することしか頭にない。でも先生は他の可能性もあるのだと見せることができる。「攻撃とは狭い視野でしかない、もっと広く」と。
日野晃/押切伸一『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』

そういうときは、やはり「そこから離れて頭を冷やす」ということが必要。
リアルな場であれば、それも簡単なんだけど、ネットだとむずかしい。
ずるずると長引かせてしまう。
そこで、自分内ルール化することにした。
*年に1度ぐらいルールを違反してやりとりすることがありますが、(行儀が悪いけど)事例を収集しているんだなと思ってください。

まず「お気持ち」「筋が悪い」「腹落ち」などと言った言葉でなんくせをつけてくる人は相手にしない。

【“悪口言い出した人は泣いてるのでそっとしておいてあげよう”の法則】

「キモい」「バカ」「アホ」「死ね」など錯乱しはじめたら、落ち着くのを(三日以上)待ってあげる。礼を失した人には、頭を冷やす時間をあげよう。
例)「もしかしてIQ低いですか」「この人は頭が悪いのか、心が濁ってるのか判別が付かないけど」「へた」「黙れ」「信者だな」「よほど偉いのだろう」「面白くない」「無能」等

【“常識という「我々」の向こうに逃げ隠れした場合は追い詰めてはいけない”の法則】

「非常識だ」「あり得ない」とか言い出した人には、もう「あなたの偏狭な常識世界に閉じこもってお過ごしください、こちらはもっと豊かで多様な世界で生きるので」と心の中で返してあげよう。
「~は常識だ」「~は非常識だ」「普通は~」「世界の共通認識」
と言い始めたら、もう追い詰めない。まとめにはいろう。「この業界では~」「アカデミックでは~」と勝手に土俵を作り出して、相手をくさすやり方もある(よくあることらしく、「アカデミックマウンティング」略して「アカマウ」と言われてるそうだ)。
類例)「~のどこがいいんだ? わからん」と言って批難するケース。「~するのが普通」「~するのが当たり前」「分かってないなら黙れ」「僕は」。当事者じゃないのに当事者ぶって「~に謝れ」も同ケース。「~失望させられた」「~とても残念」と勝手に(以前は期待していたふうを装って)下げる方法もマウティングだろう。
「スタンスの違い」「平行線だ」と言い出しているのに反論を繰り出してくる人も、大人しく見守ってあげるといい。
*自分の言葉でその理由が説明できないときの逃げ場として、「普通は~」「常識的には~」と言ってしまう。

【暴言の果て】

暴言を繰り返した果てに、みんなに批判される。相手はいつまでも暴言を吐き続ける。特に、勝手に相手がグルになっている妄想を持ち始めたら危うい。かわいそうなので、もう放っておいてあげよう。
例)「集団に頼る」「呆れた」「加害者だ」「挙兵」

【未来志向でいこう】

言い分が途中で変わっても、「最初は違ったじゃないか」と過去を責めない。意見が変わったことをよろこぼう。

【言ってないことをでっちあげて批難するひとりずもうには……】

引用符でくくりながら正確な引用でない人には、その点だけを指摘してあげて、それ以外はそっとしておいてあげる。
また引用すらせずに、書いてないことを勝手に読み取って反論してくる人は、もっとたちが悪い。
前後の文脈を恣意的に読んで、言ってないことに反論してくる。これを見逃すと、自分が主張していないことを主張したようになっちゃうので反論をしたくなる。が、勝手に読み取る人は、さらに勝手な解釈をして、混乱を極める。
勝手な解釈、拡大解釈をする人は、こちらのテキストに怒ってるのではなく、自分の中にある問題に怒ってる場合が多いので、そっとしておいてあげよう。
類例)「前後の文脈で(こう読める)」「普通は(そう解釈する)」「こう捉えるのが当然」「(そう解釈することは)普通にありうる」「あのツイートからはそう言ってるようにしかみえない」「まあそうなんだけど、(以下、論点のズレた例外をあげる)」
また、相手の書き方を責める。「アウトプットの仕方がわるい」「誤読させる」「わざとミスリードさせている」「議論にならない」
誤読が多いので丁寧に返答していると「重箱の隅をつつくな」と言い出す。
この状態になると勢いで書いているので誤字が多い

【読む力ってけっこう大切】

微妙にズレて解釈されて返信がくると「いやいや、そうじゃないです」と訂正したくなる。だが、訂正を相手にメッセージしても、その訂正を微妙にズレて解釈して、よけいにこじれる。
「言ってるのに等しい」「たいして変わらないことを言っている」「ねじ曲げていっているのではなくて、言い換えているだけ」と言い出す人もいる。
しまいには、相手から絡んできたのにもかかわらず「変なのに絡まれた」などと言い出す。
また「最初からそう書いておけばよかっただろ」「だとしたら最初にそれ込みで書いておけば誤解されなかったんじゃないですかね」などと、自分が予測もつかないような曲解をしたことを置いておいて、相手に責任をなすりつけるパタンも多くみられる。
今後さらにねじ曲げられる可能性が大きいので、読解能力がつくまで(一年以上)待ってあげよう。
例)「~と取られても仕方ない」「どう考えても~だ」「どう見ても~だ」「~と読めます」「~と書いてますよね」

【勝手に心を読み始めたら】

「あなたは~と思ってますね」「怒らせてしまったみたいですねぇ」「~な状況になったらそんなこと言わないくせに」「あなたの想定してる何かがあるはずです」と勝手な妄想で他人の気持ちを読解しはじめたら、超能力妄想がおさまるまで(三日以上)待ってあげる。
勝手なレッテル貼りも、このパタン。「感情的だ」「攻撃的だ」「特別な立場だから」といったレッテルを貼り出すと、これも議論にならない。
超能力妄想がおさまるまで(三日以上)待ってあげよう。

【逃げ道をふさがない】

対話の内容と関係ないことを言い始めたら、そっちにのってあげる。
逆に、「逃げないでくださいよ」「はい論破」「こちらが正しいと分かりましたね」と言う人もいる。対話をして解決するためではなく、言い合いになっているだけなので、「どうぞ、あなたの勝ちですよ」と心の中でつぶやいて、そっとしておいてあげよう。
「議論にならない」「生産的じゃない」と相手が言ったら、もう何も返信しないのもいい。

【急に弱者になる】

公のネットの場で相手の悪口を書いたうえで、それに対してリアクションすると、急に弱者になるケースは多い。「強者の理論だ」「弱者を晒し者にするのは酷い」「想定外の大きな場に出すのは問題」「人格否定された」とか言い出したら、放っておいてあげよう。
さんざん難癖をつけて絡んできておいて、「素直につぶやくことすらできないのか」「感じたことをツイートしてはいけないという自戒」「思ったことをツイートできない世界……」などと言うパタンもある。
泣きながら逃走して何か言ってる状態に近いので静かに逃してあげよう。

【文脈事故】

RTや引用によって一部分だけを読んで、かっとなって反論してくるケース。感情的な反論で、相手が自分をフォローしていない場合はこのケースを疑ってみよう。文脈がズレてることによる事故だから、文脈事故であることを伝えて、それまでの対話の全文を読んでもらって参加してもらおう。

【原因違い】

異論を唱える原因が実は別のところにある場合がある。Aについて腹を立てたけど、それは言いにくいのでBを批難するというケース。こうなるとBについていくら対話しても虚しい。その人の過去の発言を読んだり、相手の背景を考えてみよう。相手の気持ちを類推することで解消することがある。

【要因違い】

特別な経験が異論の要因になっている場合がある。包丁で刺されたことがあるので、包丁を見るだけで「わーっ」って言ってしまう人に「包丁が悪いのではなくて刺した人が……」と言ってもなかなか通じない。個人的な要因をもとに一般論として語っている場合も多い。そのような気配をさっしたら、ゆるやかに解散しよう。

【間違いを謝罪しない】

間違いを指摘されて、それを認めても謝罪しないパタンもある。自分が持ちがした話題なのに「そこのとは置いておいて」とか言い出して別の攻撃をしかけてくる。相手はもうこちらを屈服したいだけの怒りで視野が狭くなっている状態だ。そっとしておいてあげよう。
例)「あなたの書き方が悪いので」「普通はそう解釈しない」

【自意識過剰】

実力がなく認められないことを他人のせいにするタイプは、嫉妬にかられて他者をこき下ろす。「ダメ」「クソ」「つまらない」「有名なだけ」と言った悪口を吐く。注意されるとグルだと言う。自分が認められないのは、世界が悪いのだと思っている。そっとしておいてあげよう。
例)「有名なだけ」「有名人様」「親衛隊」「仲良しごっこ」

【やっかみ】

やっかむ輩がいる。たとえば何かのベスト5などを選ぼうとしているとき。楽しそうにみんなでわいわい選出して遊んでいると、やっかみツイートを投げ込んでくる。
・建設的じゃない、前提が共有されてない、定義が曖昧といったことをひっさげて遊びそのものを否定する。
・あれが入ってないのはおかしい。×××に関する視点が入ってないのでダメ。あのへんへの目配せが足りない、など。ひとの選出を否定する。

いっしょに遊びたいのに不器用で邪魔してくるいじめっこみたいなヤツだ。
「○○○を基準にして、自分なりに選んでみました」みたいに入ってくればいいのに、否定からはいって自分の案はろくに出さない。
こういう人は、たんにマナーがなってない。もしくは不器用すぎて、場を壊すことでしか自己主張ができない。
そっとしておいても、楽しそうにやってると、場をこわそうとしつこく絡んでくるからやっかいだ。
「いっしょに遊ぼうよ」と声をかけてあげるのもいいかもしれない(むずかしそうだけど)。

【長引くのがそもそも……】

たとえばtwitterでの対話が長引いた場合。有意義ならば、会って話したり、もっと便利なメッセージやチャットで行うのがいいのではないか。場を変えることを検討してみよう。

【論点がずれたら1日置く】

論点がずれてるやりとりが二往復したら、1日置く。
論点がずれる原因は、視野狭窄になっているか、ずらしたいか、だ。
どちらにしろ続けていてもズレがなかなか解消せず、双方が不愉快になる可能性が高い。
実際の対話だと、表情や、言葉の補足が可能なので、ズレを補正することが容易だが、テキストだとそういった微妙な補正がむずかしい。
読む側も、多様な解釈ができるために、ズレた視点で解釈してしまって、双方が、「なんで、そんなこと言ってるんだろう」って思いながら、テキストをやりとりすることになる。
こういう場合、一日置くと、視野の狭さが少しゆるむ。お互いが、ゆったりと考えることができて、相手のテキストをもうすこし違う視点から読むことも可能になる。

以上は、2011年のテキストだ。今は、上記11の項目を1文にまとめて、もっと明確な規準になった。
さらに、こちらがリアクションを止めても、うじうじと議論を長引かせる(一方的に遠吠えしてくる)相手は、表示しないようにするというスタイル担ってきた。
そういった現状についての追記を以下にまとめる。

*「議論がずれてるやりとりが」という判断が難しい。ずれてるかどうかではなく、事務的な話ではなく議論で、双方が10分ごとにやりとりするスピードになったら、白熱しているので、まず1時間、間をあけようと考えるのが良いだろう。

*twitterでの議論の場合、相手のプロフィールと過去の発言を読んでからにしよう。

*Twitterをやる人が増え、さらに気楽にツイートできる状況になってきたので、文脈事故の発生率があがった。
もはや、Twitterは議論をするような場ではなくなったと考えたほうがいいだろう。
噛み合ってなかったり、対立しているような意見は、最初からスルーする、1往復でやめるぐらいがいいだろう。
精神科医ゆうきゆうのツイートを引用する。
ネットでの口論は無意味です。「勝ち」はありえません。ただ「あなたの大切な人生を使って、どうでもいい相手との時間を過ごした」という事実が残るだけです。

上記は、乱暴に、以下のようにまとめられるかもしれない。
冗談が通じない状態になったなと思ったら、いったんお休み

「わかっていても、やめられない。ついついリアクションしてしまう」という場合もあるだろう。その場合は、せめて相手のツイートをさかのぼって、じっくり読むことをオススメ。
そうすると、その人が何故、そんなことを言ってくるのかが分かることが多い。
たとえば、
・やたらめったら、だれにでも暴言を吐いているタイプ
・勘違いしやすいタイプ
・読んだり書いたりするのが不自由なタイプ
・過去に別のことで逆恨みしていることがある
などなど。
それが分かれば、少しは心穏やかに対応できるだろう。

*さんざんやられて参ったと思ってる自分も、さんざんやってる危険性がある。自分がこうなっていないかのチェックにも使うよ!
*「相手があることなので難しい」という意見。相手があることなのでなおさら待ってあげよう。上記状態になっている場合すでにそれは冷静な議論ではない。
*相手の気持ちを考えて対応しよう。視野狭窄に陥って、自分が傷つけられたと思っている人は、少しのあいだそっとしておいてあげよう。傷つけた相手からの声は、やさしくても、正しくても、聞きたくないと思うだろうから。
*そもそも悪口はストレス発散のために書き捨てているケースが多い。誤解を解こうにもストレス発散なので、何を書いても、読まずに反発し、「いつまでも言い訳してるヤツ」だと思われて、より誤解が深まるハメになる。
*ゆっくりと意見を交換しあうこと。人の気持ちが変わるには長い時間がかかること。みんなをすべて同じ意見にまとめる必要はないこと。これらを忘れないこと。
*相手にアットを飛ばさず相手のことじゃないというふうに反論を書くのはみっともないのでやめよう。「自戒を込めて」といったエクスキューズや、自分も昔はそうだったがうんぬんという書き方も嫌味だよね。

以上は、2011.07.27に書いた記事とその追記である。ぼくは、その後、「議論の引き際」どころか、SNSで議論することはまったくなくなった。最初にも書いたがSNSで議論をしている人たちは「パーティー会場で議論をはじめる迷惑なヤツだ」という認識になって、そういう人をいかに自分の素敵なパーティー会場(タイムラインとかね)から締め出すかというステップに入っている。(→SNS断捨離:スリム化して育てる

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