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退職所得は優遇されている 退職所得vs給与所得

所得の分類シリーズです。
今回も、『租税判例百選』を脇に記事を書いていきます。そういえば、今持っているのは第六版ですが、最新の七版もでたとのことで、買わないとな。

今回は、退職所得についてです。
①利子②配当③不動産④事業⑤給与⑥退職⑦山林⑧譲渡⑨一時⑩雑
(り  はい  ふ  じ  きゅう  たい  さん  じょう  いつ  ざつ)
のうち⑥退職所得です。

退職所得は分離課税

退職所得の金額は、原則として、次のように計算します。

退職所得の金額(課税退職所得金額)
(収入金額(源泉徴収される前の金額)- 退職所得控除額)× 1/2

ここで、退職所得控除額は以下のようになっています。

20年以下   40万円×勤続年数
20年超    800万円+70万円×(勤続年数ー20年)

上記の課税退職所得金額に、通常の所得税率をかけて、税額を算出します。他の所得とは別に計算しますので、退職所得は分離課税です。

具体例として、国税庁の「退職金と税」というパンフレットの画像をそのまま持ってきます。

退職所得

30年勤務して退職金として2,500万円をもらうと、その所得税及び復興特別所得税(所得税等)は 58.4万円です。…①

ちなみに、同じ2,500万円を給与としてもらうと、給与所得は
2,500万円-195万円(給与所得控除)=2,305万円です。

ここから、所得控除として少なくとも社会保険料控除(175万円くらい)、基礎控除(納税者本人の合計所得金額が2,400万円以下になるので48万円)があります。

そうすると
2,305-〔所得控除(175+48)〕=2,082
2,082×40%-279.6=553.2万円 
さらに復興特別所得税を加算し 所得税等は
553.2×1.021=564.8万円です。...②

退職所得①:58.4万円と 給与所得②:564.8万円 で10倍近く違います。

退職所得が優遇措置を設けている理由

10年退職金事件と呼ばれる事件の、昭和58年12月6日最高裁判例があります。これによると以下のように判事されています。

受給者の退職後の生活を保障し、多くの場合いわゆる老後の生活の糧となるものであるため、他の一般の給与所得と同様に一律に累進税率による課税の対象とし、一時に高額の所得税を課することとしたのでは、公正を欠き、かつ、社会政策的にも妥当でない結果を生ずることになることから、かかる結果を避ける趣旨

今後の生活のあてにされる退職金に高額の税率を課すわけにいかない、ということですね。

勤務10年で定年と決めたから退職所得 にはならかった

上記の10年退職金事件の最高裁結論です。

本件では、会社が半ば倒産状態だったので、従業員側から勤続満10年をもって定年とし、その時点で退職金を支給し、その後引き続き勤務する場合は再雇用という形にするよう要望があったという状況です。

ですが実際は、定年となった後も多くの従業員が引き続き勤務し、役職、給与、有給休暇の日数の算定等には変化がなかった、とのことです。

以上のような事実認定の下、最高裁では「退職」とは言えないだろう、という結論となりました。

通常の定年再雇用に伴う退職金であれば退職所得

上記の事例では「退職」とは言えないとされましたが、一方で、通達(所得税基本通達30-2)では以下のように規定されています。

引き続き勤務する役員又は使用人に対し退職手当等として一時に支払われる給与のうち、次に掲げるものでその給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるもの
・・・
(4) いわゆる定年に達した後引き続き勤務する使用人に対し、その定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与

まあ読みにくいですが、いったん退職してその時に退職金が出て、再雇用されさらに退職金が出たそのあとの退職金も、再雇用ベースで退職金の計算がなされていれば、退職所得となります。

実務的には退職所得をどう使うかが頭の使いどころ

ともかく、おなじ働いて得られる所得だとしても給与所得よりも退職所得の方が有利になります。いわば、ギャップがある状態。そうすると、このギャップを賢く利用すれば、うまいことできるんじゃないか、というのが実務に生きるものの発想です。

でも詳細は、割愛します。

本日は以上です。ご覧いただきありがとうございました。

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