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ミニマリストとは持つ持たないではなく、生き方であるということ

2年ほど、スーツケース1つで暮らしていたことがある。私が研究者の卵だった頃、調査のため海外で生活をしていたときのことだ。

南半球に位置するその国は、年中半袖とジャケット1枚あればことが足りる。月払いのアパートはほぼ家具付きで、身ひとつでの入居も可能だった。服と少しの化粧品、PCさえあれば、私はどこにでも移動できた。

高校を卒業し、はじめての一人暮らしをスタートしたときのことを思い出す。キッチン用品やら家具やら、あれもいる、これもいると、いろいろ買い込んだ。両親もはじめて娘を送り出すことを考えたくさんお金を使ってくれたのだろう。

でも海外に住んでみて、身の回りの物がスーツケース1つに収まってしまうとわかったときは「あ、私が必要な物ってこんなもんか」と思った。あとは物価の安い国なら学生の身分でもお金でなんとかなる。

持たないことがそのときの自分には当たり前で、いざ何かを新しく持つとなったらそれはそれは吟味に吟味を重ねて手に入れていた。無駄なものは持ちたくない。私はスーツケースひとつで足りるのだから、と。

あるとき、髪が伸びてきたので櫛が必要になりスーパーに買いに行った。私はどの色、どのデザインがいいか、これを使う自分を想像して15分ほど櫛コーナーで迷っていた。日本円にして100円もしない櫛である。

一度買ったら壊れるまで大切に使う。新しいモデルにもあまり興味はなく、それを周りは褒めてくれた。長女気質の倹約家な面もあったのかもしれない。

しばらくして日本に帰国してからも持たない生活は続いた。生きるために機能的に必要かどうかで判断するので、今さら新しい物が必要となることがあまりなかった。

しかし今年のコロナの影響で例に漏れず、私の生活スタイルも変わっていった。家には物がひとつひとつ増えていった。これまではなかった傾向である。

休日はまず外出することが多かったのが、家から出ないことが増えた。やはりそうなると人間、環境を整えようとしてくる。自分の気分が上がるもの、見るだけで嬉しくなるもの、全く生きるのに必要のないもの。かつて無駄だと思っていたものが部屋に出現し、それらとそれらに囲まれる生活を私は愛おしく思い始めた。北欧の家具が美しいのはそういう訳なのか、と納得する。寒い冬を家の中で過ごす時間が多い北欧では、とても素敵な家具がたくさんあることで有名である。

運ぶのにおっくうなお気に入りを持ってもいいんだ。持つことで満たされるのではなく、持つことで得られる気持ちを大切にするなら、それは意味のある生き方なんだ。

ミニマリストとは持つ持たないではなく、軽やかに生きるという選択をすること。もしかしたらこの議論はもうすでに世の当たり前なのかもしれないが、私が経験を通して得たひとつの着地点ということで記事に残しておこうと思う。

また数年後、私の生き方はガラッと様変わりしているかもしれない。でも今は、何の機能も果たさない、ただただ胸がときめく、南国インドネシアの風を感じるインテリアのバリ傘が朝一番に目に入る生活に私はとても満足を感じている。


他では見つけられない、可愛いアジアン雑貨のお店をご紹介。オーナーもとても素敵な方です。(オーナーと直接お会いしたことないけど、お店も店員さんも商品もとても好きなのです。)


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