ラガーが逝った。〜怖いのは敗血症ではない〜

 森保ジャパン🇯🇵が無敵艦隊スペイン🇪🇸を撃破したことに日本中が沸き立っているとき、ネットニュースに衝撃的な見出しがあった。
 「渡辺徹さん死去」

 え?嘘だろ。え?61歳?なんで…。目を疑ったが、記事を読みこんだ。
太陽にほえろで刑事役、イケメンで、歌まで歌って聖子ちゃんとCMで恋人役。こんな完璧な人はいないと思うほどだった。その後はぽっちゃりの大食いきゃらになってはいたが…

 記事によると渡辺さんの病歴は、
30歳で2型糖尿病
その後糖尿病性腎不全で血液透析
51歳で心筋梗塞
60歳で大動脈弁狭窄症に対して手術
11/20に細菌性胃腸炎の疑いで入院
敗血症で11/28に死去

 うーん。非常に残念だ。
詳細な病歴は不明だが、糖尿病性腎症から血液透析になるのは、やはりかなりコントロールが悪かったと思わざるを得ない。
 急性心筋梗塞の罹患歴もあるので大動脈弁狭窄症もおそらくは動脈硬化性と思われる。おそらくは人工弁(ブタの心臓弁を加工したものが用いられることがほとんど)置換術を受けていたのだろう。
 細菌性胃腸炎からのbacterial translocation(細菌が腸管のバリアを越えて組織内に入り込んでいく)も考えられるが、経過が1週間余りと早すぎるので、おそらくはもっと早期に感染は起こっていて、敗血症からDIC(播種性血管内凝固症候群)を起こして腸管動脈の血栓閉塞を起こしたとするのが考え易い。

 敗血症とは何らかの感染によって全身に強い炎症を生じる疾患だが、細菌が血液から検出されると菌血症と言う。DICを合併することも多く致命的である。

 糖尿病で感染に対する抵抗力が低い。
 血液透析で感染機会が多い。
 心筋梗塞後で心機能が悪い。
 心臓の出口には人工弁という異物がある。

 医療側としては頭を抱える状況だ。人工弁に細菌の塊がついていれば手術しかないが、全身状態が悪ければ手術に耐えられない。敗血症は本当に致命的な怖い疾患なのだ。今回の訃報を受けて、敗血症の怖さを感じた人も多いだろう。

 だがちょっと待ってみよう。
 血液透析になったのは糖尿病からの腎症。
 心筋梗塞や弁膜症になったのは糖尿病が関与する動脈硬化(※大動脈弁狭窄症には先天的なものも一部にはある)。
 結局のところ諸悪の根源は糖尿病にあるのかもしれない。

 糖尿病には基本的に症状がない。血糖が高くても痛くも痒くもない。でも知らない内に血管や神経を蝕んでいく。現在新規に透析導入する人の約4割が糖尿病性腎症だ。

 渡辺徹さんが好きでたくさん食べていたのか、それとも仕事で大食いぽっちゃりキャラを演じざるを得なかったのか、それはわからない。
 今回この訃報を聞いて少しでも多くの人が糖尿病に対して真剣に考えてくれるようになれば、もしかすると渡辺徹さんも喜んでくれるのではないか。
 ご冥福をお祈りします。


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