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心の安息所

カランコロン、
カランコロン、 


懐かしいような、でもどこか新鮮な可愛らしい音、

鼻の奥をくすぐる珈琲の香り。

普段は嫌なはずの煙草の匂いが、

ここではひとつの背景のように たたずんでいる。

珈琲の香りと入り混じり、

心が落ち着く場所を作っている。

ワインレッドよりもすこし深みのある色のベルベットソファに座る。 

互いに身を乗り出して頭を寄せ合い、楽しそうにお喋りをする恋人達。 

アイスティーに浮かぶ輪切りのレモンと、クリームソーダに浮かぶ溶けかけのアイスクリーム。

 

やけに濃くて苦い珈琲。

可愛らしいけれど、どこにでもある変哲のないショートケーキ。

スポンジは少しパサパサしていて、クリームは甘い。口の中へ入れるとそのどこか懐かしく感じる味が全身を喜ばせてくる。

何故かどこの名店よりも美味しく感じてしまう。

愛しい愛しいステキな空間。

誰もが足を踏み入れた瞬間に物語の主人公になったような気分になる、不思議な空間。

そこは時間の流れが穏やかに,ゆったりと流れ、

 いつでもわたしを優しく迎え入れてくれる。



純喫茶の魅力に取り憑かれています。
わたしにとっての心の安息所。

みなさんにとってのそんな場所はどこでしょうか。 

特別で、とっておきの空間。


#エッセイ #純喫茶 #ショートストーリー

 

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