まめなちゃまめ

おもいつくことなど

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最近の記事

田舎で暮らす

最近、都会から地方に移住する人によく会う気がします。 ただ、本当に最近来た人もいるようですが、もう十年以上も前から、という人もいるようなので、必ずしも最近の流行、というわけでもないようです。 私が暮らしている場所は、田舎の中でも都会?の方なので、大都市の人から見ると不思議かもしれませんが、やはり田舎の田舎?の暮らしにはあこがれを感じる時があるのです。 それでも、某大手新聞社に勤めていたような人が、水道もないような集落にあえて転居してくるという話しを耳にすると、勇気がある

    • 冬の旅

       大学生の時、バイクでよく旅をしました。当時は部活をしていたので、活動のない年末年始に出かけることが多かったです。行く先は、冬なので雪の少ない西の方とだけきめて、あとはただ気の向くまま走りました。朝は3時に起きて出発し、夜の7時くらいまで走り、テントで寝ます。昼食と煙草を吸う以外は、休憩もとらず、ただひたすらバイクを走らせました。一番長く旅した年で、たしか10日間で5,000キロくらい走ったと思います。  当時はそんな自分の身を削るような旅が時々したくなりました。食事は朝夕

      • 雪国の春の花

        関東では、春の花には順番があったと思う。 木に咲くチューリップのようなモクレンの花がまず咲いて、しばらくしてから桜の季節になった。 私が今住んでいる雪国では、春の花が一斉に咲く。 モクレンと桜の開花時期はあまり差がなく、ほぼ同時期に咲いている。 太平洋側で生まれた育った自分にとっては、不思議な風景にみえるが、地元の人にとっては当たり前の風景なのだろう。 それとも、花の咲く時期、もしかしたら花の名前を知らない人も少なくないのかもしれない。 青年期からたまたま植物の名

        • お座敷通勤列車のこと

          ある日、仕事帰りに奮発して臨時の特急電車に乗ると、それはお座敷列車だった。 そんな馬鹿なことが、本当にあった。 普段は車通勤の私だが、その日は事情があって電車で通勤した。 帰りは普通電車の乗り継ぎが悪く、駅で随分待たなければならないところ、臨時の特急電車がくるという。 疲れてもいたので、時間を数百円で買うつもりで一駅分の特急券を買うことにした。 その特急は全席指定だという。自由席がないことに違和感を感じたが、指定席を発券され列車の到着を待つと、やってきたそれは、行楽

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        • 短編小説風
          1本
        • つれづれなるまま
          16本

        記事

          マンボウのさしみ

          むかし、熱海の居酒屋でマンボウの刺身を食べさせてもらったことがある。 マンボウとはエイを縦にしたような、いかにもマンボウです、といった茫洋とした顔をした魚である。 居酒屋の店長の話しによると、このマンボウという魚は、時々海面に横になってぷかぷか浮かぶらしい。 マンボウなりに疲れることもあって、海中を逃れ海面で現実逃避でもするのだろうか。 それはどうだかわからないが、ともかくマンボウは体を海面に横たえて浮かぶことがあるという。 すると、時々おぼれた漁師がこのマンボウに

          マンボウのさしみ

          お台場のこと

          東京のお台場ほど大きく変わった場所はないと思う。 20数年前のお台場は、売店が1軒あるだけで、本当になにもない所だった。 例えば、バイクに女の子を乗せて出かける場所としては、決して選ばない。男同士で、夜中行くところがなく、なんとなく来てしまう。そんな所だった。 時々、警察が改造車摘発のための検問をしていた。騒音と排気ガスの臭い漂う殺伐とした場所だった。 そんなお台場で、ある時、海の真ん中に真っ白な鉄塔が建った。 お台場と対岸を結ぶ橋を作るという。さらに、モノレールの

          さわやかな二人

          ある日、バスに乗ると、大学前のバス停から高校生がたくさん乗ってきた。 大学見学会があったようだった。 そのうち、一人の男子高校生が、女子高校生に大学見学会の感想を尋ねたのをきっかけに会話がはじまった。 二人は初対面のようだった。 今どきの高校生がナンパか、生意気な。と私を含め、多くの乗客のおじさん、おばさんは思ったに違いない。 みんなが二人の話を無関心を装いながら注視していることがよくわかった。 もちろん私もそうなのだが。 そして、二人の会話ははずんでいく。とて

          さわやかな二人

          こわい話

          はだかの女の人に、腕をつかまれ、アパートの部屋の中へ引きずり込まれそうになったことがある。 それはうれしい思い出ではなく、むしろ悪夢だった。 飲み会で、席を離れタバコを吸っている女性に声をかけたのがきっかけだった。 嫌なことを言う人がいるから、席にもどりたくない、という。 じゃあ、どこか別のところで飲みましょうかと、軽いつもりで言ったら、 タクシーを呼ばれ、隣の町まで連れていかれた。 際限なく飲む人だった。つられて結構飲んでしまった。 部屋まで送ると、ちょっとま

          いいこと

          なにかいいことありませんか、と隣のおじさんとよく話す。 別にいいことなんかありません。 でも、いいことってなんだろ。 こんなたわいもない日々を送れることがいいこと、かな。

          溺れる

          昔、海で溺れかけたことがある。 子どもの頃に流行った女性歌手の歌に「ジーンズを濡らして、泳ぐあなた、あきれて見てる」というのがあり、真似してみたかった。 別にその場に女性がいたわけではない。男の友人と二人だった。二人でズボンのまま海に飛び込んだ。房総半島の先端の方にある海岸だった。 半円形のきれいな入り江で、海はエメラルド色に透き通っていた。溺れるなんて考えもしかなった。 ただ、しばらく泳いでみて、体が重いことに気が付いた。考えてみれば当然だが、ズボンが水を吸い重くな

          短編小説 苦しさの先に

          大学生の頃、意味なく群れていることが嫌いだったので、大教室で講義を受けるときは、わざと一人で座るようにしていた。すると、一人でいる私を見て、隣に座ってくる同じクラスの女の子がいた。 別に言葉を交わすわけではない。目であいさつをするだけだったし、その子には当時交際している人がいたので、私に特別な感情があったわけではないと思う。ただ、そこに座りたいだけなんだろう、と思ってそのうち特に気もとめなくなっていった。 私は考古学者になろうと思って大学に進学したのだが、どうも思っていた

          短編小説 苦しさの先に

          pity's

          高校生のころ、夏目漱石の小説にはまった。 当時、文学好きな気になる女性がいて、話題作りのために読みはじめたのが正直なきっかけだった。 初期の作品は漢文調が強すぎて、面白味が感じられなかったが、『三四郎』以降の作品は大抵読んだ。 特に『三四郎』は面白くて繰り返し読んだが、作品中の「Pity’s akin to love」のフレーズが心に残った。 意味は「憐れみと愛情は似ている(あるいは、同じだ)」といったところだろうか。 彼女と、このフレーズについて話しをしたことがあ

          イカのはなし

          数年前、アオリイカが大量に釣れた年がありました。 アオリイカはスーパーでも、確か1匹1000円くらいする、高級魚(イカ)です。 その年、職場の釣り好きなおじさんに声をかけていただき、何度か釣りに行きました。 このイカはルアーを使って釣ります。 エギとかいうルアーは羽をとじた鳥のような形をしていて、イカは何と間違えてこれに飛びつくのか見当もつきませんが、たぶんネコが理性にかかわらずヒモに飛びついてしまうように、イカはエギにしがみつくようです。 すると、かわいそうなこと

          イカのはなし

          黄金色の輝き

          人の記憶は、どれくらい長く物事を覚えていることが出来るのだろうか。 どれくらい時間が経てば、今の気持ちを忘れてしまうのだろう。きっといつかは忘れる。 でも、たとえ忘れたつもりでも、突然ずっと昔の記憶がよみがえる時がある。 私の高校は、東京の荒川という川幅が1キロほどある巨大な人造河川の近くにあった。 荒川は私の家とは逆の方向にあるのだが、川を渡って帰る時があった。 親しくしていた友人の家がその方向にあり、時々回り道をして一緒に帰った。 川の上はいつも風が強く吹いて

          黄金色の輝き

          ”しみわたり”のこと

          雪国で暮らしはじめて、もう随分たちますが、よそ者の私にとって、雪はいまだに珍しい自然現象です。 雪で苦労する人も多いので申し訳ないのですが、降り始めた雪を見るとわくわくした気持ちになり、もっと降れと心に願ってしまいます。 特に風がない深夜の、雪が降る風景の中では、すべての音が雪に吸い込まれていくようで、不思議な静けさにつつまれます。 眺めていると、雪が音と一緒に煩わしい事々も吸いとってくれるような、静かな気持ちになります。 朝日に輝く雪景色も美しくはありますが、私は真

          ”しみわたり”のこと

          桜の木の思い出

          大学生の時、小学校時代の友人と3人で、バイクに乗って東北を旅をしたことがある。 季節は5月の連休だった。私の実家があった東京に集まり、そこから目的地も決めず、なんとなく北に向かった。あの頃はよくそういう旅をした。 国道6号線を北に進み、夜になると泊まれそうな場所を探した。初日は、茨城と福島の県境付近にある小さな漁港の無人駅舎に泊まることにした。 飲酒は出来る年齢だったがお金がないので、しらふで過ごした。一晩中ついている青白い蛍光灯の下で、やや義務的に昔の思い出を話したり

          桜の木の思い出