マンボウのさしみ

むかし、熱海の居酒屋でマンボウの刺身を食べさせてもらったことがある。

マンボウとはエイを縦にしたような、いかにもマンボウです、といった茫洋とした顔をした魚である。

居酒屋の店長の話しによると、このマンボウという魚は、時々海面に横になってぷかぷか浮かぶらしい。

マンボウなりに疲れることもあって、海中を逃れ海面で現実逃避でもするのだろうか。

それはどうだかわからないが、ともかくマンボウは体を海面に横たえて浮かぶことがあるという。

すると、時々おぼれた漁師がこのマンボウにつかまって助けられるそうだ。

だから、猟師はマンボウを獲らず、偶然網にかかってしまったものがごくまれに市場に出回るのみとのこと。

居酒屋の店長は、そういって一見の旅行者の我々に確かにおいしいが、しっかり高い白身の魚の刺身を食べさせてくれた。


その後、どこかの水族館で水槽の中を泳ぐマンボウを見た。

それは想像していたより巨大な魚で、こんなものが本当に海面に浮かぶことがあるのだろうかと疑わしかったが、確かにおぼれた漁師を数人救えるくらいの浮力はありそうだ。

でも、おいしそうな魚には見えなかったな。というより、積極的に獲って食べようとは思わない。そんな魚だった。



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Yori

雪国で暮らしています。

つれづれなるまま

昔のこと、今のこと。
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