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磯崎新著「手法論の射程」を読む

磯崎新は模型的思考という章の中で、「自然そのものは、どのような手続きによって記述できるのだろうか」という問いを発し、その答えとして、「共通して言えることは、これらの手続き(言語による記述、絵言葉などによる記述)は、自然をみずからが組み立てた鏡にうつしとろうとしたことだ。つまり、模型をつくることであった。」と述べ、いくつかのキーワードを示している。

補助線
補助線は、ユークリッド幾何学の演習にあらわれてくる。幾何学の図形の中にひそむ見えない関係性を、一気に決まりをつけるために引かれる最小限の線だ。(中略)補助線という思考、あるいは認知の形式に、実は幾何学的空間のすべてがよりかかっているといえるのではないか。
言い換えると、自然のもっている複雑な構造を、たやすく認知しうるような手段として、線を引き始めたのである。

「手法論の射程」P112

自然はありのままには認知することができないため、自然の表面に補助線を発見し、人間は目に見えない「補助線」を引くことによって、自然の縮尺模型を取り出している。模型的思考の発生であり、模型でしか、自然を記述することはできなかったのであると述べている。

「自然をありのままに認知するということは、できやすいようであって、結局、不可能なのである。その不可能性を問い詰めて行った過程が、補助線の発見であり、模型的思考の発生であった。模型でしか、自然を記述することはできなかったのである。」

「模型的思考」『手法が』より

少々わかりづらい、磯崎の表現について、日杢直彦がかみくだいて次のように解説している。
ここでの模型とは、単にスケールモデルのことではなく、むしろ曼荼羅のような概念模型類であり、その模型は世界全体のうつしなのである。(中略)普遍的な幾何学的形態は世界の形式であり、同時に建築の形式となる。

銀閣寺の向月台と銀沙灘

磯崎新は日本庭園は「海のメタファー」にしぼられていると解説している。
東洋の宇宙模型を融合する庭の事例として銀閣寺等を事例に模型的思考について解説している。

銀閣寺の向月台と銀沙灘 京都フリー写真素材集より

記号的図式、非図形的模型については次号で記載する予定です。


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