モンテディオ山形 サッカー×将棋コラボ2014 イベント報告①

〜トークショー前半〜

モンテディオ山形では、8月17日(日)に行われた第24節札幌戦(@NDソフトスタジアム山形)のホームゲームイベントとして、サッカー×将棋コラボ企画を実施。天童市と日本将棋連盟の協力を得て、元日本代表・波戸康広氏とプロ棋士4名を招き、トークショーと公開対局を行った。 

波戸康広氏は2011年シーズンを以て現役引退後、横浜F・マリノスのアンバサダーとして活動しているが、今年からは将棋親善大使の肩書きが加わった。アマチュア初段の棋力を持つサッカー界随一の将棋通だ。 

一方のプロ棋士の顔ぶれは、広瀬章人八段、野月浩貴七段、遠山雄亮五段、佐藤慎一四段。日本将棋連盟でも指折りのサッカー通として知られる面々である。 

なんとも豪華な「サッカー×将棋コラボ」メンバー5人によるイベント。第一部のトークショーは約一時間に渡って繰り広げられた。その内容の一部を紹介する。 

■ ■ ■

――波戸さんは、横浜フリューゲルス、横浜F・マリノス、柏、大宮、そして日本代表で活躍した右サイドバックのスペシャリスト。山形へようこそ。

波戸 NDスタジアムには現役時代にも何度か来ています。今、山形にいる選手とも交流があり、山﨑選手とはマリノスで、清水健太選手、小林亮選手とは柏で一緒。小林選手とはよく食事に行き、サイドバック同士、真面目な話やそうでない話をよくしていました(笑)。

――今年1月に行われた引退試合の場で、日本将棋連盟から「将棋親善大使」に任命されましたが、将棋はいつごろから指しているのですか?

波戸 小学校3年生ぐらいから。家の近くの理容師さんの所で髪を刈った後に、理容師さんと将棋を指していました。僕は淡路島の出身なのですが、ある時、島で将棋の大会があり、そこで優勝することができました。次の大会に進むはずだったのですが、その日がサッカーの県大会とかぶってしまった。「サッカーか将棋か」の選択を迫られ、サッカーを取ってしまったんです。あの時に将棋を取っていたら今頃は「羽生か波戸か」と言われるようになっていたはずです(笑)。

――サッカーを選んでからも、将棋は指していた?

波戸 中学からはあまり指す機会もなくなりましたが、プロに入ってから、新幹線や飛行機で移動をする時に詰め将棋をやっていました。周りの選手からは「波戸、なにやってんの?」と言われましたが。それで、引退する直前にマリノスの広報誌上で、佐藤和俊さんという棋士と対談させてもらった。それがきっかけで、今日ここにいるような棋士の皆さんと交流を持ち、なんと日本将棋連盟の親善大使になってしまいました。

――サッカーと将棋は共通するところがありますか? 

波戸 すごく似ています。サッカーはゴールを奪うスポーツ、将棋は王将を取るゲーム。ディフェンスも攻撃もすごく参考になる。将棋をやっていたからサッカーに役立ったという部分がすごくあります。 

野月 そういうプレーヤーがもっといっぱい出て来て欲しいですよね。 

波戸 でも野月さんは当初、僕のことを……。 

野月 「体力自慢の選手」と思っていました。頭は使ってないんじゃないかと(笑)。 

波戸 失礼でしょ! 

野月 波戸さんは、足は速いしスタミナもあるし、サイドを上下してすごく動いているから、身体能力が凄いんだろうなと思っていたんです。話を聞くと、プレーしながらめちゃくちゃ考えていたんだとわかりました。波戸さんから見て、将棋がサッカーのイメージと重なる部分はどこですか? 

波戸 駆け引きですね。例えばサッカーで言う「食いつかせる」プレー。遊びのパスを使いながら相手を前に出て来させて背後を突く。これは、歩を垂らしておびき寄せて、背後を突くのと似ています。 

遠山 将棋もサッカーも、戦術がすごく大事という部分はすごく似ていますよね。サッカーで言うサイドアタックは将棋だと「端攻め」というように、戦術的な共通点は多いと思います。 

広瀬 波戸さんとは数局指したことがありますが、サッカーのプレーのイメージと、将棋の気風はなんとなく似ている気がします。攻めっ気の強い攻め将棋。サイドで1対1を仕掛けるのが好きと本人がおっしゃるのもうなずけます。 

佐藤 僕は昔、サッカーをやっている時に、頭の中で人を将棋の駒に例えたりしていました。小学生の頃は、上手い人と一緒のチームになったり、下手な人と一緒になったりしますよね。飛車・角のような上手い人と一緒の時は「自分は銀ぐらいだから、点を取るのは任せて僕は後ろでパスを出せばいい」とか、自分より下手な人と一緒だったら「自分が前に行って点を取りに行かなきゃ」思ったり。将棋の駒に例えてみて、自分の役割は、今日は香車かな?なんて考えていました。 

――今日いらした棋士の方々は本当にサッカーが好きで詳しい。みなさんのサッカーとの関わりや、好きなチームについて伺えますか? 

遠山 サッカーはやるよりも見るのが好き。特に戦術やシステム論が好きです。海外サッカーも見ていますが、今は戦術が幅広くなっている。最近はボランチが下がってボールを回したり、攻めと守りでシステムを変えたりする戦術がトレンド。将棋にも戦法の進化がありますが、サッカーも同じだなと興味深く見ています。

広瀬 今はアーセナルが好きなんですが、注目しているのはラムジーという若い選手。これからブレイクするのではないかと思って見ています。遠山さんが言ったように将棋も戦術の移り変わりがありますが、監督によってチームのサッカーが変わったり、選手の配置やフォーメーションのちょっとした変化でチームがどう変わるかなども面白く見ています。 

野月 僕はプロ棋士として、この天童が大好きなので、モンテディオを応援しています。ただ、北海道出身なので、今日の対戦相手である“白い恋人”の人たちが大好きで(笑)。地方のクラブは、地元に住んでいるとか出身地ということが応援のモチベーションになる。モンテディオもコンサドーレも、サポーターさんのクラブ愛が深いところが似ています。今日はどっちが勝つの?と聞かれると非常に困りますが、良い試合が見たいです。 

佐藤 僕は小学校の時にサッカーをやっていて、その頃からプロの将棋指しを目指していましたが、実はサッカーの方が好きで、サッカー選手になりたいと思っていました。 

波戸 僕と逆になりましたね(笑)。 

佐藤 僕にとってのヒーローは何と言ってもゴン中山(中山雅史)さん。ドーハの悲劇(アメリカW杯アジア最終予選のイラク戦)の時、ゴンさんが2点目を取って2−1とリードした時にはもう僕は部屋の中を暴れ回って、勝った勝った!と喜んでいたんですが、ロスタイムに追いつかれて号泣。それは今でも覚えていますね。

(後半につづく)


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