モンテディオ山形 サッカー×将棋コラボ2014 イベント報告②

〜トークショー後半〜

――では、棋士の先生から波戸さんへ、または波戸さんからプロ棋士への質問を聞いてみたいと思います。 

遠山 将棋のプロの対局はほぼ無観客試合。サッカーはお客さんがいっぱい入ります。ホーム&アウェーの違いを選手はどう感じているのでしょう。ホームのチームが強豪チームを迎えて倒したりすることもありますが、やはり自分たちの力以上のものが出るものですか? 

波戸 出ますね。練習試合などと、お客さんが入る試合では全く違う。プロ入りした頃は、3〜4万人のサポーターが入った中でやるのは緊張して、なかなか練習でやっているプレーが表現できなくて悩んだこともありましたが、慣れてくると、声援によって自分が描いているプレー以上のものが表現できたりします。 

遠山 みなさんに応援に来ていただくというのは大事なことなんですね。 

波戸 逆に質問ですが、対局中、相手の表情をうかがったりしますか? 自分が指した手に対して、相手は嫌がっているかな?とか。 

遠山 しますね。さりげなく、席を立ってトイレに行くふりをしてチラッと見たり。1対1の濃密すぎる空間なので、「こいつ困ってるな」とか「自分がやれると思ってるな」とか、伝わってくる。だから一局指すと相手のことがよくわかる。 

広瀬 自分はそこまで見ない。時々、最後の方でちょっと表情を見たりしますが、盤を挟んでいる時間は長いので、ずっと見るのも変ですし。 

野月 僕は見ますけど、相手の目や顔は見ない。至近距離で座っているので、男同士で目が合うのもちょっと(笑)。どちらかというと、盤を見るふりをして相手の手の動きを見たりします。集中している時には手に表情や癖が出てくる。 

佐藤 僕はあまり見ないですが、形勢に差ができた時に「どうなのかな?」と思って見ます。自分の思い違いかなと思って見たら相手も困った顔をしているから、さすがに差がついているのかなと思ったり。難しくて勝負がわからない時は、盤上に没頭している気がしますね。 

――波戸さんに伺いたいのですが、1対1のマッチアップの時には、相手の顔は見ているのですか? 

波戸 サイドバックというポジションはすごく運動量が必要なので、ラスト20分くらいは気力だけの戦い。だから、自分は足がつりそうな時でも「いつでも仕掛けて来いよ」というオーラを出す。本当はトラップを逃げたいような苦しい状況でも、余裕をかましてポンと止めると相手が踏み込んで来られないとか、そういう駆け引きがあるので、僕はピッチに立った時点で相手の顔を見ていました。 

――他に質問はありますか? 

野月 僕はコンサドーレのゴール裏で飛び跳ねるサポーターですが、プレーしていて、アウェーのサポーターの声に圧倒されることもありますか? 

波戸 ありますね。在籍したこともある柏は、相手にするのは本当に嫌でした。浦和もそうですが、アウェー感をすごく感じる。ピッチとスタンドが近いと、圧力、威圧感を感じますね。ヤジでプレーが乱れる事もあります。 

野月 逆に、アウェーに行って、いいなあと思ったチームは? オファーが来たら移籍してもいいかな、ぐらいの。 

波戸 今だから言えますが、エスパルスのサンバの応援歌はすごくいいなあと。アウェーに来ているのに逆に自分が乗っちゃったり。 

野月 もしもいいオファーが来ていたら… 

波戸 間違いなく、前向きに考えていました(笑)。移籍と言えば、山形の石井肇テクニカルダイレクターは、今年マリノスからモンテディオに“移籍”して来た方。昨日、駅に着いたら石井さんが来てくれていて、一緒に温泉に入って熱いサッカーの話をしました。石井さんの山形への情熱がすごく伝わって来ました。マリノスでも、去年に続いて今年も将棋コラボイベントをやらせてもらいます(9/13に実施)が、山形がJ1に上がって来たら将棋つながりで一緒にイベントができる。ピッチでのいい戦いがあるのは前提として、それ以外でも、スタジアムで楽しめるようなことをこれからもどんどん企画して、スタジアムを盛り上げていきたいですね。  

野月 それ、コンサドーレも入れておいてください(笑)。

波戸 将棋とサッカーのコラボをぜひ広げて行きたいです。Jリーグのチェアマンも将棋に興味を持ってくれていますしね。

――では、お客様からの質問はありますか? 

Q.駒を動かす棋士は、選手を動かす監督のようなお仕事。自分をサッカーの監督に例えると、どの監督に似ていると思いますか? 波戸さんには、自分を駒に例えると何かを伺いたいです。 

遠山 モウリーニョ監督が大好き。モウリーニョみたいな人を目指しています。戦術に優れた監督で、口が悪いので有名ですが、あれは選手を守るために自分が悪者になっている。そういうところがかっこいい。あんなダンディなおじさんを目指して、日々研鑽を積んでいます。 

広瀬 難しいですが……遠山さんが言ったモウリーニョ監督のサッカーは、守りを固めて速攻で決めるイメージ。自分の将棋は穴熊が多いのですが、穴熊というのは隅っこに玉を囲い、守りを固めてカウンターを狙うという戦法ではあるので、例えるならモウリーニョ監督かな。 

波戸 サイドプレーヤーだったので、よく「香車?」と言われますが、自分では飛車だと思っています。香車だと戻って来られない。僕はアップダウンが売りだったし、サイドバックの醍醐味はやはり攻撃参加。1対1の相手をはがしてクロスを上げたり、突破してチャンスをつくる。だから僕は飛車で、相手陣地に入った時に「龍」に成る、そういうイメージですね。 

――今日のコラボイベントのPRのために、モンテディオの石川竜也選手のメッセージ動画がYouTubeにアップされていますが、その中で石川選手は「自分は角」と言っていました。 

波戸 マッチアップしたことがあるので彼のプレーはわかります。彼は左サイドバックですが、アップダウンというよりボールを持って起点になるタイプ。左足のキックの精度が高くて斜めのロングキックが武器という意味で「角」でしょうね。すごくイメージに合うと思います。 

野月 僕は極端な攻め将棋で、守りはあまり考える気もしない。サッカーに例えると、キーパーだけ残して全員で攻撃に行って、それでボールを取られたら戻らずに「あーゴメンナサイ」(笑)。そういうタイプなのでサッカーの監督にはいません。ただ、(山形の監督の)石﨑さんは大好き。以前コンサドーレの監督もしていただいたので、ずっと注目しています。 

佐藤 トルシエさんが日本代表の監督をされていた時、すごく好きでした。ラインコントロールして押し上げる、フラット3ですね。将棋でいうと抑え込み。自陣を固めるというよりも陣形をぐっと抑え込む。そういう圧力をかけるスタイルがすごく好きでした。自分はそういう将棋が指せる時は調子がいいんです。

Q.今、Jリーガーで将棋が強い方がいるのか、知っている範囲でいいので伺いたいのですが。

波戸 現役ではありませんが、マリノスの先輩の小村徳男さん。練習が終った後にいつも将棋を指していました。2時間でも3時間でも。練習時間よりも長い(笑)。最初の頃は僕が勝っていましたが、オムさんも相当負けず嫌いなので、自宅で勉強されて、勝ったり負けたりでした。今のマリノスの中では、中村俊輔は将棋好きですね。

――モンテディオでは、伊東選手や宮阪選手、日高選手、石川選手などは指せるようですが、強いかどうかは不明です。

波戸 わかりました。試合後に将棋クラブに勧誘しておきます(笑)。

――最後に、皆さんの今後の活動予定や抱負を伺って終わりたいと思います。

佐藤 将棋の対局は年に30局から40局、月に3、4局ですが、負けてしまうと次の対局がなくなってしまうこともあるので、毎回一局の将棋をしっかりやること、その準備をしっかりやること。あとの趣味の時間には、サッカーなどでリラックスして、自分のプラスにしていければ。

野月 サッカーの話ですが、棋士としてはモンテさんを全力応援させていただく。将棋のイベントやタイトル戦でもよく天童に来ますし、プライベートでもスタジアムに来ることがあると思うので、一緒にわいわいできれば。コンサドーレのサポーターとしては、空いている時には全国どこでもサッカーを見に行って、必ずゴール裏にいますので声をかけてください。みなさん一緒にサッカーを楽しみましょう。

波戸 微力ですが、サッカーの新しい楽しみ方や発展につながっていくことをやっていきたい。こうして将棋界の方々とご一緒したイベントもできているので、将棋とサッカーのコラボを広めていけるように頑張っていきたいと思います。

広瀬 自分は趣味が少ない人間ですが、サッカーを見ることは一番の趣味。それが将棋の実力の源となっている気がするので、今後もこうした場で皆様と関わって行きたい。また、今自分が在籍しているリーグ(順位戦A級)はレベルが高くて、サッカーでいうと残留争いをしているようなもの。なんとか残留できるように頑張っていきたいと思います。

遠山 波戸さんがマリノスでいろいろ活動されているように、私も将棋連盟ではプロデューサーという肩書きを持って普及活動に取り組んでいます。今日のような機会に、将棋にはあまり興味はないけれども来て見たという方々が、引き続き将棋に触れていただけるように、イベントなどを通して話題を提供したい。また、自分自身もいい活躍をしていけるようにしますので、将棋界の事もぜひ応援していただければと思います。

――今日は楽しいお話をありがとうございました。

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