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与論に住まう陸の動物①哺乳類

①与論町誌のページ数

36(下段)~39ページ

②要約

●与論は元々沖縄や台湾と連なる一大陸橋の一部で、地殻変動や氷河期を経て現在の島に至っていると考察されているんだって。
●与論にはコウモリがいるよ。出会えるのは夕方から明け方までの暗い時間までのよう。
●ネズミは、食虫類のリュウキュウジャコウネズミ・ワタセジネズミ (オナガジネズミ)。齧歯類のクマネズミ(イエネズミ)・ドブネズミがいるんだよ。
●イタチは天然の分布種じゃない。サトウキビの加害対策のため持ち込まれたんだよ。

③感想(私的解釈や学び)

哺乳類に牛や豚などが記されていないことから、家畜として島に入ってきたものは外されたのかな?
犬や猫といったペット系の種も記されていないです。アマミノクロウサギ、イリオモテヤマネコといった動物がいないということは、そのような動物たちが生きられる環境では無かったということなのか?!
このページもまたあれこれ考察すると奥深い。動植物のルーツがみえてくるのも与論島の成り立ちがあれこれと想像できますね。

④本文引用

第三節 陸の動物
 地質学者の手による古代地理図を見ると、一億三千六百万年前(白亜紀初め)には、日本列島全域がアジア大陸の東岸にあたり、三千八百万年前(新生代第三紀漸新世)頃には東シナ海ができ、その東側に琉球列島が中国大陸南部から台湾を経た一大陸橋として日本列島と連なっている。その後の大きな地殻の変動や氷河期の出現で島になり、隆起や陥没をくりかえし現在にいたったと考察されている。
 与論島は、その基岩は島尻層でその上を琉球石灰岩でおおわれている。このことは、琉球列島中の島尻層群の最下部の層にマストドン象の仲間の化石やさらに、琉球石灰岩層の中にアマミノクロウサギ・イリオモテヤマネコ・ケナガネズミ・イノシシ・陸カメなどの化石が含まれ出土していることから、前述の大陸橋の存在がうなずけよう。また、日本列島の動物や琉球列島の動物を概観すると、この陸橋の存在が重要な意義を含み、特に沖縄や奄美大島の固有の遺存種はそれらの貴重なアカシと考えられよう。
 与論島の陸上動物は、低平な石灰岩地形で河川が発達せず極端な乾燥地のためか、生息する動物の種類や個体数は少ないが、琉球列島は中部陸塊すなわち奄美大島から沖縄島まで陸続きであったことを示す連続的な変化の見られる種も生息している。以下、哺乳ホニュウ類・鳥類・は虫類・両生類・魚類(淡水産)・昆虫類・クモ類・甲かく類など、顕著な種について取り扱うことにする。

 一 哺乳類
この島には、奄美群島の他の島のような遺存種や固有種と呼ばれるものは生息していない。哺乳類には一部、人爲的に移入した種や、琉球の中南部との共通種や汎世界的な種類も分布している。 その他迷獣も含まれる。

 (一) 翼 手 類 (コウモリ類)
 1 オリイオオコウモリ (オオコウモリ科)
 オオコウモリはアフリカ・オーストラリア・アジア南部の熱帯・亜熱帯に分布し、我が国では、トカラ列島の口永良部島にエラブオオコウモリ、沖縄本島北部にオリイオオコウモリ、南大東島にダイトウオオコウモリ、八重山諸島にヤエヤマオオコウモリが分布する。
 与論島では、通称マンクウギ (クスノハカエデ) 山の樹林やガジュマルなどの樹上で観察されている(筆者の標本による)。本種は季節的に沖縄本島との間を往来するものと思われる。沖縄本島でも名護市以北では、二、三羽から数羽の小群で行動し、昼間は山麓の樹林中で休息しているものも見かけられる。植物食で果実類を主食とし、夜間には、人家の防風林として植えられたフクギの実を求めて飛来し、特異な奇声を発して樹上を飛び交っているのが見られる。

 2 オヒキコウモリ
 中国東北部・ウスリー・朝鮮・日本に分布する。
 日本では、福岡県北方の沖の島で停泊中の漁船の乗組員の漁具箱の中にひそんでいたのを、一九四四年五月初旬に一回だけ採集記録した例がある。
 本種と同種と思われる個体を、筆者は現在保存している。これは、一九六八年十月八日に大島高校与論分校生物部員川上則子さん (茶花出身) が夕方自宅の居間に飛来したのを捕獲したものである。近似種は米国のテキサス州にも分布している。珍種である。
 以上の二種、未記録の種を記載する。奄美群島の他の島には小型種が数種類知られているが、本島には分布していない。

 (二)食 虫 類
 通称、方言名ギジンと総称する次の二種が分布。

 1 リュウキュウジャコウネズミ
 琉球列島の全域と九州の薩摩半島、長崎県の出島、五島などに分布する。食虫類で昆虫・ミミズ類などを餌とする。夜行性で大きさはイエネズミほどである。昼間は床下の湿った暗所や石垣の中などの巣に潜み、夜間に、キィー・キィーと鳴きながら行動する。体側に特有の側腺があり特異な臭気を発する。このため猫も捕らえない。筆者は、本種が昼間、森林中の山道で日射しのもれる場所に静止していたハラボソトンボを捕らえるのを目撃し、これを捕獲したこともある。本種は、衛生面の改善で放置されたチリ捨場などがなくなり好適な生活場所が失われ、今は非常に少なくなり、絶滅する種ではなかろうかと思われる。

 2 ワタセジネズミ (オナガジネズミ)
 奄美大島・徳之島・伊江島に記録があるが、与論島にも分布する。筆者は滞在の三年間でかなりの個体を観察した。特に路上で車にひかれたものであった。体長は五~六センチメートル、尾が四~五センチメートルほどの小型種で、一般には夜行性であまり人目につかない。性質は体に似ず激しく、共食いや大型のネズミなども襲う。筆者は昼間ヤモリの鳴き声を耳にしたので飛び出してみると、本種が小屋の柱の上でヤモリを捕らえているのを見たことがある。 食性の範囲は広いようである。

 (三)齧 歯ゲッシ
 ネズミ類(ユムヌ)には、クマネズミとドブネズミの一種が生息する。
 クマネズミはイエネズミとも呼ばれる。住家性で住宅地の屋内やその周辺で活動する。雑食性である。
 ドブネズミは市街地の下水・暗渠アンキョ・石垣・畑地周辺に巣をつくり、農作物に加害する種である。性質は荒く、住家の近くではニワトリのヒナなども襲うことがある。

 (四)食 肉 類
 この仲間は天然の分布種ではなく、コイタチとホンドイタチの二種は、町の主要作物のサトウキビに加害する野ネズミ対策として、町により計画的に移入された種である。
 昭和二十八年に村の事業として喜界島から、雌五匹・雄八匹の計十三匹が移入、放飼されている。種子島から喜界島に導入された経緯から、種子島産はコイタチと呼ばれる小型種である。
 昭和三十年には鹿児島県衛生部を経て計六十匹が九州本土から導入された。雌雄については明らかでない。これは県北部のホンドイタチと呼ばれる種である。与論島における両種の生態的な関係は明らかでないが、他に大型の天敵獣や毒蛇の分布しない島であるため、比較的順調に定着、繁殖し、子連れもよく見かけられ、野ネズミ対策にも十分な効果をあげている。
(林文次・城出身・元農業改良普及員の教示による)

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出典:「第一編,第一章 自然環境,第三節 陸の動物,一 哺乳類」.『与論町誌』.与論町誌編集委員会.与論町教育員会,1988,p.36-39

⑤関連記事・資料


出典:動物図鑑,かぎけんWEB

出典:与論島ブログ~はなアンニャーのおーしゃん便り~

出典:さすらいの風来簿,原田誠一郎さん

https://kyushu.env.go.jp/okinawa/awcc/pamphlet/alien/alien_amamiguntou.pdf

出典:奄美群島の外来種,環境省 那覇自然環境事務所

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