公正証書遺言の証人(9人目のAさん)

Aさんは75歳。一人暮らしですが元気そのもの。
若いころから苦労してきたらしく、訪問すれば昔の苦労話をよく聞かせてくれます。
元々前任者が担当していたのですが、定年退職のため私に代わりました。
前任者からは、難しい人だから大変よ、との申し送りがありました。
特に介護サービスを利用しているわけではないのですが、字が読めないため何か届けば相談に乗っていたようです。
一度在宅で一人暮らしは大変と聞き、施設を探したこともあるのですが、そのときの対応がAさんには不満だったとのこと。

最初会ったときは、意外や意外、とても親切にもてなしてくれ、約1時間、今までの半生や前任者のことなどいろいろ話してくれました。

ある日、地域包括支援センターから連絡がありました。
Aさんがもしもの時のために遺言書を準備したいので、証人になってほしいといっている、とのこと。
元気なAさんですが、まわりの知人が亡くなるのを見て、不安になってきたようです。
年金暮らしの慎ましい生活、自分にもしものことがあったときのことは、今から決めておかないとみんなに迷惑がかかる、と考えての相談でした。

遺言の方式は公正証書遺言になるので、公証人役場に証人として出向くことになりました。証人は二人必要で、私と地域包括支援センターの担当者がなるということでした。
同時に、任意後見契約も行います。

当日、任意後見人になるAさんの甥とAさんを連れて、公証人役場で地域包括支援センターの担当者と待ち合わせ。
事前に遺言書の内容は打ち合わせをしていたらしく、当日は公証人が読み上げて確認、証人欄に名前を書いたのですが、ものすごく書きにくい筆ペン。署名前に何回か練習をしましたが書きづらかったです。

でも遺言書の証人というと住民票とか印鑑証明とか免許証とか身分証明するしっかりしたものが要りそうに思いますが、特に何も要らず、名前、住所を書くくらいで、こんなものでいいのか、とすごく意外。
任意後見契約は本人が元気なうちに、将来の判断能力低下に備え、あらかじめ後見人を選定しておく内容で、公正証書を作成しておきます。
Aさんが甥に頼んで了承を得ていたので、これも公証人が内容を説明し、それぞれの自署で無事終了。
公証人役場というと堅苦しく難しそうな感じでしたが、公証人は楽しい人でいつでも研修会で講師やりますよ、と言ってくれました。

公証人役場を出るとき、これでいつぼけても大丈夫、としっかり言ってたAさん。

なかなかぼけそうにはないけど。

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