”自分より学歴のいい男としか付き合いたくない”

　そんなのは学歴差別だ、盲言だと、公共の場で口にしたら笑われるかもしれません。でもわたしはこの言葉、”高学歴男子と付き合いたい”とは全くバックグラウンドの異なる言葉だと思うんです。

　大学名を言えば大体の人がわかるような大学を出ました。別にそれをひけらかしたいとは思いません。でも例えば街で声をかけられたとき、例えば居酒屋で隣に座ったとき、留学先でだって同じ日本人同士が会えばまず、「どこ大出身？」と聞かれることが多いです。「学部は？」なんて聞かれることもあります。同じ大学の男性陣は素直に答えるでしょう。でも、わたしの周りの女友達は、みんなちょっと困った顔をします。「＊＊大学の理工学部だよ」なんて素直に言えば、その後に続く反応はもういやというほど経験しているからです。

　わたしもわたしの周りの女子たちも、その多くは別に男性に頼って生きていこうなんて思っていません。社会に出て、いかに学歴が役に立たないフィルターであるかも知っています。学歴なんてどうでもいいはずなんです。仕事に情熱を持っているとか、お金を大事に使えるとか、嘘をつかないとか、そんなののほうがよっぽど大切です。でもそれでも学歴に固執して、”自分より低い学歴の男とは付き合いたくない”という女子が多いのはなんででしょう。

　わたしはそれを、逆学歴差別の経験からくるものだと感じています。

　男の人の、”女の人には負けたくない”っていうプライド、あれは先天性の生物的サガなんでしょうか。「めっちゃ頭いいじゃん！俺らバカだからさ、いやまじ、俺らとは違う人種だわ！」だとかなんだとか言われたって、「そうなのよ、あなた達と違う人種なのわたしたち！」なんて言うわけがないでしょう。そんなこと、思ってもいないです。でも相手の大学を聞いて明らかに優劣がわかる中で「別に頭良くないよ」なんていうこともできなくて、曖昧に「そんな事言わないでよ〜」なんて笑うしかありません。言葉の裏で引かれる無意識な一線を敏感に感じながら、次は絶対にいい感じの女子大を名乗ろうなんて決意します。

　学歴の高い女がモテないのは、男が学歴の高い女を嫌いだからです。私達は常に逆学歴差別にさらされて生きています。学歴だけではなく、キャリアでもそうです。女性の高い社会的地位を、どう繕ったって心の中では許せていない男の人がたくさんいるなと日々感じます。

　たとえ中卒だろうと、その人の内面が素敵なら私はいいと思います。もちろん、結婚するとなれば収入の面もあるから多少考えるかもしれないけど、少なくとも”自分より高い学歴の男しか”なんていうフィルターは設けません。でも必ずと言っていいほど男性は女性の高いキャリアに卑屈になります。それがわたしはとても居心地が悪くて嫌なんです。

　日本にいるときはむしろあまり自分と異なる環境の人と出会わないので、極稀にやだなあと感じる程度でした。留学に来て、いろんな学校から集まった日本人男子と話すようになって、わざとさん付けで呼ばれたり、〜さんは俺らのこんな馬鹿な話聞きたくないと思うってはじかれたり、〜さんめっちゃ頭いいんだからお前敬えよ！なんてネタにされたり、いやまじ雲の上の人だわとか言われたり、私を持ち上げることで残りの人達が結束しているのを感じてここでもかとげんなりします。別に話すことや遊ぶ内容なんて学歴に関係ないのに、いい大学の人はいつも高尚な話をしているとでも思われてるのかな。男性同士でもそんなやり取りはあるんだと思います。でも、日頃から逆差別にさらされている女だからこそ、より敏感にああいやだなと感じてしまいます。

　高学歴女子は一度は聞かれたことがあると思います。

「自分より下の学歴の人でも付き合える？」

　能力や、男性に求める資質で言えばそんなの別に学歴で測るものじゃないし、もちろん気にしないって答えたい。でも頭の隅で考えます。お前のほうが頭いいんだからさ、とか、どうせ俺よりたくさん稼いでんだろ、とか、ヒモになっちゃおうかな〜、とか、いいよな頭いいと人生楽で、とか、お前にしたら簡単だろうけど、とか、もし付き合ったら毎日言われるのかなって。考えて、考えて答えます。

”自分より学歴のいい男としか付き合いたくない”