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279. 先日(2021年10月30日)、アメリカでパスポートの性別欄を「X」にすることができるようになったとニュースがありました。これって男でも女でもないってことですか?

はい、男女どちらの性別にも属さないということです。自分の心の性やジェンダー表現(例:男物の服を着るか、女物の服を着るか)が男女いずれかという二分法的な考え方に当てはまらない人や当てはめる必要がないと感じる人がいます。このように二分法的な考え方(白か黒か、陰か陽か、男か女かなど)を拒否する例として、宇多田ヒカルさんについて記事を書きました(記事番号213)。こういった人をノンバイナリーと言います。

今回はアメリカで初めて「X」がパスポートの性別記載欄に用いられたことで話題になりましたが、他の国ではすでに「X」を使っているところがあります:オーストラリア、ニュージーランド、ドイツ、デンマーク、バングラデシュ、インド、ネパール、パキスタン、マルタなど。西欧の国ではこういった施策が進んでいる印象を受けるかもしれませんが、インドやその周辺には「ヒジュラ」(先の記事で北アメリカの「トゥースピリット」について書きましたが、インドを中心とした周辺国でも男でも女でもない存在として認められている)と呼ばれる人たちがいるので、「X」も早くに導入されていると思われます。

私も知らなかったのですが、日本では2013年からパスポートの性別欄に「X」が記載できるよう活動がなされてきているとのことです。Yahoo!ニュースから引用します:

一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会(東京都日野市)は、性別欄再考事業を展開。2013年4月には、「必要性を検討することなく設けられている性別欄は多くの性同一性障害当事者に生きづらさをもたらす」として、岸田文雄外務大臣(当時)に要望書を提出した。     ■要望の要旨
1.旅券に記載する性別は、少なくとも身体の状態に合わせた性別表記としてください。更に、社会生活上の性別を基準とすることを検討してください。2.パスポートの性別欄に、MとFだけでなく国際民間航空機関(ICAO)でも認められている 「X」記載を選択できるようにしてください。

最後に本の紹介をします。『第3の性「X」への道;男でも女でもない、ノンバイナリーとして生きる』では、性別欄に「X」と記されたパスポートをカナダで初めて(2019年)手に入れたジェマ・ヒッキーさんの半生が綴られています。興味のある方はぜひ読んでみてください


参考資料

Yahoo!ニュース 「パスポートの性別欄の「X」記載、日本での可能性は」(2021.10.30)

国弘暁子 2005「ヒジュラ:ジェンダーと宗教の境界域」『ジェンダー研究 : お茶の水女子大学ジェンダー研究センター年報』巻 8, pp. 31-54.

ジェマ・ヒッキー(著)上田勢子(訳)2020 『第3の性「X」への道;男でも女でもない、ノンバイナリーとして生きる』明石書店


画像:Photo by Andrej Lišakov on Unsplash