400.「区別は差別ではない」ですよね?トランス女性には多目的トイレを使ってもらう(女性専用スペースは使わない)というのは、一般女性が安心して女性スペースを使うための区別であって、差別ではありませんよね?
2023年7月11日に経済産業省に勤務するトランスジェンダーの方がトイレ制限をされていることについて、最高裁が判決をだしました。
最高裁判所はこの方に女性トイレの使用制限を認めた国の対応は違法だとしました。
この件については、NHKの以下の記事が詳しくまとめていますので、ご覧ください。
今回の最高裁の判決は「職場」のトイレ利用についてのものでした。一般のスーパーや大型商業施設、映画館、などといった場所でのトイレ使用についてまで「そうしなさい」という内容ではありません。
さて、今回の質問ですが、この考え方はいわゆるLGBT理解増進法の成立までずっと(そして今でも)主張されていることです。
この「区別」と「差別」の話は性的マイノリティについて語られるときによく使われるのでここでおさらいしておきましょう。
大分県が作ったパンフレット「人権入門:区別と差別」の説明がわかりやすいので引用します:
このパンフレットのいい点は次のように強調されているところです。また引用します:
さて、本題にもどります。次のように整理します:
1:トランス女性に女性スペースを使うことを許すと、一般女性(シスジェンダー女性)が安心できない、不安がある、恐怖心をいだく。
2:それは身体男性でトランス女性が性犯罪を犯す危険性があるから。
3:また、トランス女性を装って性犯罪者が女性スペースに入ってくるから。
4:だから、トランス女性は女性スペースを使わないように決める。
これは「一般女性」からの見方ですが、逆にトランス女性から見ると「等しく幸せに生きたいという願いや要求をふみにじる」ことにならないでしょうか?
自分が自認する性のトイレが使えないというのは、例えば一般男性(シスジェンダー男性(生まれた時に男性だとされ、戸籍に「男」と登録され、自身も男性だと認識している人)に「あなたは自分の自認する性」のトイレは使えません」と言っていることと同じではないでしょうか。
性別移行を完全に行っていないトランス女性は犯罪者でも犯罪者予備軍でもありません。
トランス女性に女性トイレを使わないで、多目的トイレを使ってと制限することはトランス女性の「女性としての」尊厳を傷つけつことになりませんか?
そのようにトイレ使用を制限することで「あなたは女性ではない!」とレッテルを貼ることになりませんか?
なぜ他人が「あなたは女性ではない」と決めつけることができるのでしょうか?なぜ他人が「あなたは男性だ!とかあなたは女性だ!」ということができるのでしょう?
ここで私は生物学的な性の話をしているのではありません。身体の在り方で男女の「区別」をするのは1つの方法ですが、それがすべてではありません。
「身体の在り方」という物差しだけでは測れないものがあるのです。
また、前の記事でも書きましたが、トランス女性といっても、様々な考え方の方がいらっしゃいますし、その方の体の在り方もさまざまです。
そして、今までトランス女性の方はなるべくトラブルにならないように公共施設のトイレ使用を制限したり(例:外出先ではトイレに入らない)、使用する場合でも、男女共用になった場所を使用する(例:コンビニのトイレなど)という工夫をされてきました。
このことは、トランス女性側が「区別」に特別の注意を払い、「トラブルを起こしてはいけない」という「配慮」を自ら働かせ、そして「差別」を受けないようにどうすればいいのかということを考えての行動なのではないでしょうか。
なぜトランス女性はここまでしなければ「女性」として扱ってもらえないのでしょう?
わたしは、トランス女性にこのような「配慮」をさせている時点で、社会はトランス女性を差別していると考えます。
そしてトランス女性に多目的トイレを使うように一方的に押し付けるのは差別だと思います。
今回の最高裁の判決は職場でのトイレ使用に関するものでした。公共施設でのトランスジェンダーのトイレ使用についてはこれからさまざまな議論があると思います。
性的マイノリティの人権についてどう考えるのか。みなさんにもぜひ考えていただきたいと思います。
参考資料
大分市「人権入門:区別と差別」
画像:UnsplashのAlexas_Fotosが撮影した写真