ディスプレイの製品開発における製品仕様担当職とはどんな仕事か?やりがいや厳しさ、必要なスキルを解説。
普段生活をしている中で、1日に1回はディスプレイを見ているのではないでしょうか?
ディスプレイは、スマートフォンやタブレットの他に、生活家電、車のインテリアなどにも組み込まれ、情報表示には無くてはならないものになっています。最近では折り曲げ可能なディスプレイが搭載されたスマートフォンもよく目にします。今後も、ますますディスプレイが必要不可欠なものになっていくのではないでしょうか。
私は、このようなディスプレイ製品を製造する企業で働いています。今回の記事では、ディスプレイ製品の開発における製品仕様担当職の仕事内容について解説します。
最後まで記事をご覧いただければ、製品開発における仕様担当の仕事について知ることができます。これから製品開発に関わる仕事を担当される方や、製品の仕様担当に興味のある方には、少しでも参考になると思います。
製品開発とは
はじめに、『製品開発』とは顧客と製品の仕様を取り交わした上で、仕様を満足した製品を量産できる状態にまで進めることです。
一言で言うと簡単ですが、ディスプレイ製品では開発スタートから量産化まで、半年~1年近くの開発期間が必要になります。期間に幅があるのは、製品の難易度により設計・仕様検討に時間がかかったり、評価に時間が必要となったりするためです。
また、車へ搭載するディスプレイ製品では、2年程度の開発期間が必要となってくる製品もあります。
このため、製品開発は複数の部門が協力し、製品を開発していくことが基本となります。製品開発に関わる部門と主な役割の例を以下に記載します。
(企業によっては部門名や担当範囲が異なる場合があるので、一例と考えてください。)
この中で、私が担当する部門は仕様部門です。
仕様部門では、開発する製品の仕様担当として、顧客との交渉を通して、『製品仕様』を決定し、量産化に至るまでを中心となって進める役割です。
特に、製品仕様は製品の特性や機能を決めるもので、顧客交渉と社内の協議を経て、『製品仕様書』として顧客と締結することとなります。この製品仕様書に基づいて製品設計、製造を行うため、製品開発においては非常に重要な文書となります。
製品仕様書とは、電化製品を購入した際に付属している取扱説明書のようなものです。
製品仕様担当の主な仕事内容
仕様担当の主な仕事内容として、以下の4項目について説明していきます。
仕事のやりがい
中々堅苦しい説明になってしまいました。まとめると、顧客への交渉を通して製品仕様を決定し、その製品仕様で量産できる状態にまで導く仕事と思っていただければよいかと思います。
それでは、仕様担当の仕事のやりがいを、3つ説明していきます。
顧客との打ち合わせを経て、製品仕様を決定したとき
自分が担当した製品の試作サンプルが完成したとき
量産が開始され、顧客からも感謝の言葉をいただけたとき
1は、顧客と打ち合わせを行い、製品仕様書を決定したときには、大きな一歩を踏み出せたような感覚を持てます。この仕様書の決定によって、製品の試作が始まるためです。
2は、試作を行い、初回のサンプルが完成したときです。今まで紙面上で見ていたものが現物となり、ディスプレイが光ったときは何度経験しても感動します。
3は、顧客からの感謝の言葉です。製品開発では自社だけでなく、顧客とも協力し、一つの製品を作り上げていくからです。顧客と自社では立場は違いますが、最終的に製品を完成させたいという気持ちに変わりはないと思います。感謝の言葉を顧客から直接受け取れたときは色々あったけど、やってきて良かったと思えます。
仕事のきびしさ
続いて、仕事の厳しさについて、簡単な例も挙げながら説明していきます。
顧客からの製品仕様に対する要求が厳しいとき
製品仕様書の重要性
次期モデルでの継続受注獲得
1は、顧客や製品によって、独自の仕様が満たせないか?と要求をいただく場合があります。要求仕様に対して、自社の製品がどこまで満足できるのか
を事前に検証し、実現性を確認した上で顧客への提案が必要になります。要求をすべて満足できない場合ももちろんあり、その場合はデータを元に、妥協点を見出す必要があります。
2は、製品仕様書が常に重要であるということです。
前述したように、顧客との交渉・契約において、製品仕様書が最も重要になります。誤記や仕様書内で矛盾がないようにすることは当然ですが、顧客からの要求仕様を仕様書としてどうのように盛り込んでいくかも考えなければなりません。
3は、1つの製品を開発した後、次期モデルの開発のお話をいただくことがあります。その場合、『現行製品よりもさらなる付加価値を追加したい』というような追加の要求をいただくことが多いです。製品単価に関しても次期モデルでは要求が厳しくなるのが一般的です。このため、現行モデルの開発と合わせて、顧客のニーズに合わせた新技術の開発を社内へインプットし、開発を進めておく必要があります。
必要なスキル
以下のような知識やスキルが必要となります。
とは言うものの、私も初めの頃はどの項目も満足にはできませんでしたが、PCでの文字入力が少しでもできれば、仕様担当として仕事に取り組む中で十分に身につけることができると考えます。
ディスプレイの特性や動作させる方法などに関する基礎知識
Word、Excelスキル・・・製品仕様書や書類作成、データ整理のため
Power Pointスキル・・・顧客交渉、社内レビューで説明するため
DFMEA、DRBFMスキル・・・各レビューで製品のリスクを分析するため
AUTO CADスキル・・・部品や製品の外形図を作成するため
製品単価の構成・・・製品単価の見積試算を行うため
コミュニケーションスキル・・・社内の調整、顧客交渉が必須となるため
これらのスキルは、製品の仕様担当職だけでなく、商品企画や商品開発へも十分応用ができると考えます。
まとめ
今回は、ディスプレイ製品の開発や、製品仕様をとりまとめる仕様担当職の仕事内容や、やりがい、厳しさ、必要なスキルを解説しました。製品仕様を通して、顧客と自社を技術的につなぎ、製品を量産化まで導く仕事です。
なにより、製品の量産化まで進め、自社の製品が組み込まれた顧客製品が発売されたときは、この上ない達成感を味わうことができます。自分の子供にも『この製品の、このディスプレイはパパが担当したものなんだよ』と大人気なく、自慢しています。
必要なスキルの項目でも記載しましたが、専門性も比較的少なく、仕事に取り組む中でスキルを身につけることができます。そのため、製品開発に携わりたいと考えている方には、取り組みやすい仕事であると思います。製品開発や製品仕様担当に興味がある方は、ぜひ候補の一つに考えていただければ、幸いです。
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