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ヴェトナムの壇蜜似の彼女 8最終話

日本とヴェトナムの遠距離恋愛。

最初はSkype会話だったが、今はメールだ。


トィは完全にカラオケ屋を辞めて、
ポーカーで食べていた。

毎日数千円で酔客を接待するよりも、
ポーカーで1万円稼ぐ方が良いに決まっている。

そうなると以前以上に時間が無い。

ポーカーは上手くなれば、やればやる程稼ぐ。

長時間やれば時給800円で13時間も打てば
1万円になる。

まぁ順調に稼げてるのは良い事だ。

弟の方もたこ焼き屋は順調だし、
ポーカーでも日当で五千円程稼いでいた。


そんなある日、大志君が聞いて欲しい事があるという。

「ヴェトナムの彼女から、お金を振り込んで欲しいと言われました。」

「なんかあったの?」

「お父さんが病気で働けなくなった。
病院代もかかるし、生活費も足りないそうです。」

「ふむ。」

「これ、例のアレですよね.....」

「例のアレの可能性あるね.....」

「この前会った時はピンピンしてましたから。」


大志君はだいぶショックを受けている。

俺の感覚だと99%金目当て、1%本当だろう。

大志君は51%本当で、49%金目当てと思っている。

いや、そう思いたいのだ。


「どうしましょう、僕はお金を振り込んだりとかは
嫌いなんです。」

ふむ。

「じゃあこうしよう。

今俺も親が病気になって大変なんだと。

好きな人に迷惑をかけたく無いから、
お金を貸してとは言えないと思っていた所だった。」

これでイーブンだ。


「後は向こうさんの対応次第だと思う。」

「わかりました。それで反応をみます。」


しかし結果は......


それならもう別れましょうと言われたそうな。


大志君!

早めにわかって良かったと思いましょう!

良い女は他にいっぱいいるぞ!


大志君はお酒が飲めないので、
俺は彼の好きなB級グルメをご馳走しまくり、
慰めまくった。


丁度俺も仕事が忙しくなり、
ヴェトナム行きは中止になった。

その間もトィとのメールは続いた。

内容はポーカーの戦略についてとか、
昨日の勝負でこんな事があったとかがほとんどだ。

まるでポーカーの師匠と弟子の会話のようだった。

お互いに恋愛感情よりも、
師弟愛や友情に近いものが
芽生え始めたのがわかる。


日本での仕事がひと段落したので、
2ヶ月ぶりにヴェトナムに訪問した。


いつものホテルでトィが到着を待っていてくれた。

2ヶ月ぶりの再会。

燃え上がる炎の様な感情は無く、
静かな安心感と言った感じだった。


「あなたのおかげで貯金がたくさん出来た。
開店資金と運転資金をお返しします。」

そう言って封筒を差し出した。

中には50万円が入っていた。


「ポーカーで60万円は勝った。

運転資金は手をつけなかったからそのままの20万円。

開店資金は弟と折半で15万円づつで30万円。

本当にありがとう。」

あげたお金のつもりが帰って来た。

それはそれで嬉しい。

借りたお金をキチンと返せる人は少ない。

良い友達になれそうだ。


そう、2人の恋が終わった事をお互いに感じたからだ。


遠距離恋愛は難しいな。


トィは最近英語に興味を持ったようだ。

ポーカーにどっぷりハマり、英語でしか読めないポーカー教本を読み漁りたいとの事。

「いずれマカオやラスヴェガスで勝負したい」

彼女はそう語った。


こうして俺と大志君のヴェトナムの恋は終わった。

でも来て本当に良かった。


おしまい


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