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ドメインではなく、法人番号を活用したHubSpotでの顧客管理の手法

みなさま、こんにちは。
DIGGLEというスタートアップでマーケをやっていますYoshi(@motoy0shi)です。

弊社では、現在CRMとしてHubSpotを運用しています。HubSpot自体は、とても良くできたプロダクトで、私自身もかなり助けられています。一方で、顧客管理の点からは1つ大きな問題がありました。それは、同じドメインを持つグループ企業の取り扱いです。

Eメールドメインが一緒だと、すべて同じ「会社」に紐づいてしまう

例えば、AA商事、AA機械、AA建設といったグループ企業が、同じaaa.comというEメールドメインを持っていると、別会社であっても同じ会社に関連づけられてしまいます。だからといって、自動での関連付けをオプトアウトしてしまうと、すべてを手作業で対応する必要があり、そんなことをしている暇はありません。

いろいろ試行錯誤をした結果、法人番号をキーとしてコンタクトと会社を関連づけることで、これらの問題は解決でき、さらに法人番号ごとに会社が存在することで、より高度なCRM活用もできるようになってきています

そこで本日は、私たちが試行錯誤してたどりついた、HubSpotでの顧客管理の手法をご紹介します。HubSpotを例に取り上げていますが、他のCRMツールでも役立つ部分もあるはずです。

顧客管理に悩むマーケターの方は、ぜひお読みください。


従来起きていた課題

冒頭でも少し紹介しましたが、HubSpotについてあまり詳しくない方もいるので、改めて以前起きていた課題からお話ししましょう。

HubSpotでは、連絡先(人)を管理するオブジェクトとして「コンタクト」、所属している組織(会社)を管理するオブジェクトとして「会社」が存在しています。

HubSpotのデフォルトの設定での挙動

デフォルトの設定では、コンタクトと会社はEメールドメインを手掛かりに関連づけ(=リンク)がつくられ、相互に参照できるようになっています。また新しくコンタクトが生成された際は、そのEメールドメインから自動的に会社を検索し、関連づけてくれるようになっています。

一方で、このロジックの問題は、同じEメールドメインを持つ別会社の場合、1つの会社に他のグループ会社のコンタクトがすべて関連づけられてしまうことでした。特にエンタープライズ企業では、グループ内が同じEメールドメインを使っている傾向が高いため、この問題は深刻です。

同じ企業に関連づけられていると、この会社とは商談しているのか、顧客なのか、まだリードなのかの判別がつきづらくなります。それゆえ、セールス側での確認作業が増え、業務効率を下げる一因となっていました。

だからといって、この関連付けを正確に行おうとすると、多くの場合、目視でチェックして修正するという地獄のような作業を強いられます。弊社でも、似たような事態になっていました。

そこで何とかこの非効率を解決できないかと考えたのが、法人番号をキーとした顧客管理でした。

法人番号を使った顧客管理の方法

そもそも法人番号とは?

法人番号について知らない方向けに解説すると、法人番号とは株式会社などの法人などが持つ13桁のユニークな番号です。基本的に、日本で登記している法人には付与されており、いわば企業版のマイナンバーとも言えます。

法人番号のメリットは、1企業に1個のみ発行されているので企業が特定できることです。CRMを管理している方なら共感していただけると思いますが、世の中には同じ社名の会社がびっくりするぐらいあります。

国税庁 法人番号公表サイトより

例えば「アシスト」という名前がつく会社は、なんと2,902社もあるそうです。これだけあると、もはやどのアシストさんなのか判別するのは困難です。

こういった時に、法人番号があれば、一発でどの会社なのか特定できます。特定できるということは、同じ会社か、違う会社かを識別して名寄せできますよね。

また法人番号は、公開情報なので、ググればすぐ出てきますし、ビジネスでの利活用も自由に行えます。さらには国が推進しているので、無料で使えるAPIなども用意されています。(参考

そこで、この法人番号の性質を利用してあげれば、悩んでいたコンタクトと会社の関連付けをより正確に行えるのではないかと思ったのです。

現在運用しているHubSpotの処理フロー

現在運用している処理の全体像

現在運用しているHubSpotの処理の全体像は、上記の図のような形です。それぞれ解説していきます。

コンタクト作成時

まずはコンタクト作成のタイミングで、法人番号を極力入れてもらうようにしています。そのためには、フォームなどで法人番号をストレスなく入力してもらえるギミックが必要です。

この部分は、おそらく法人番号を日本で一番愛しているマエスさん(@maes_data)が提供されているイチサンフォームを利用しています。

イチサンフォームのWebサイトより

イチサンフォームは、ユーザー側で会社名を選択してもらうと、裏側でその会社の法人番号を調べてくれて、フォームの項目に取り込んでくれるサービスです。このサービスを使うことで、法人番号をできるだけ簡単に収集できます。

なおこれだけ素晴らしいサービスを無償で提供しているマエスさんには頭が上がりません。改めていつも素晴らしいサービスをありがとうございます。

コンタクトと会社の関連付け(マッチング)

そして今回のコアな部分であるコンタクトと会社の関連付けです。ここ に関しては、現状以下の処理フローを走らせています。

法人番号を手掛かりにして、紐付けを行う
  1. コンタクトに法人番号があるかをチェック

  2. コンタクトの法人番号と同じ法人番号を持つ会社を検索

    1. 会社が存在する→コンタクトと会社の関連付けを作成

    2. 会社が存在しない→新規に会社を作成して、コンタクトとの関連付けを作成

このような処理をすることで、法人番号1個に対して会社が1個となるため、仮にグループ企業であっても適切に関連付けを行えるようになるのです。

なお実務的には、この処理を実装するためにHubSpotAPIを利用しています。具体的には、HubSpotのCRM Search APIを利用して会社を検索して、一致する会社があった場合は、関連付けAPIを利用して、コンタクトと企業を関連づける処理を行っています。

Operation Hub Proを持っていると、カスタムコードという機能があり、JavaScript もしくは Pythonで独自の処理をかけるので、比較的容易に実装できるはずです。

弊社の場合は、独自で連携アプリを開発し、外部(Google Cloud Functions)で処理を行うようなワークフローで実現しています。

(補足)法人番号を入力してもらえないケースへの対応

イチサンフォームを使っていても、一定数は法人番号を入力せずにコンタクトが生成されてしまうことがあります。その場合は、1件1件の法人番号を割り当てるほかありません。

弊社の場合は、外部の有償APIを利用して、会社名とEメールドメインを手掛かりに、法人番号を特定できる仕組みを独自で実装しました。

そうすることで、仮に入力が漏れていても、会社名がユニークであれば、法人番号をシステムが自動で補完してくれるので、大幅に業務を削減できています。

法人番号で広がるCRMの活用

法人番号ごとに会社がユニークに存在することで、名寄せだけではなく、さらにCRMの可能性は広がります。

弊社の場合は、新規に「会社」が作成されたタイミングで、企業情報を提供する有償APIサービスを利用して、その法人番号を持つ会社の企業情報をHubSpotに取り込めるようにしています。

具体的には、自動的に以下の情報が入るようになっています。

  • 業種

  • 上場区分

  • 資本金

  • 売上高

  • 従業員数

  • 決算月

  • 本社が所在する都道府県

これらの情報を持っておくと、マーケティングやセールスでもよりターゲットを絞ったコミュニケーションが可能になります。例えば、以下のような施策です。

  • 東京都の売上高100億以上の会社だけのリストを作成して架電する

  • 製造業の会社だけにリストを絞って、メルマガで事例を配信する

  • 従業員数別の商談化率と受注率をダッシュボードで可視化する

正直なところ、まだまだ使い方はあると思うのですが、会社側に情報をリッチに持たせることで、よりABM的なアプローチも可能になっていくのです。

おわりに

この記事では、法人番号を使ってHubSpotで顧客管理をよりよくする方法について紹介しました。

構想を描いてから実装まで、思ったより大変でしたが、情報をきちんと管理することで、その情報を活かせる幅は大きくなっていきます。まだまだ改良の余地はあるかと思いますが、今後も理想的な顧客管理のあり方を模索していきたいと思っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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