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短編小説

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#自然

いつか見た星

いつか見た星

小学校の時だったろうか。

立山かどこかの大きな山に、学校で登らされた。

野球をしていたから体力には自信があった。でも山を登るのは億劫になる。

ましてや何千メートルもの山を登るのは。

「頑張ったら報われる」

なんて言葉は、小学校の私は信じることができなかったけれど、先生にそう言われて頑張っていたことを覚えている。

ああ、なんて純粋なんだろう。何周りも年上の先生の言うことだから、その時の私

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鏡は自分の何を「ウツス」か

鏡は自分の何を「ウツス」か

「目は口ほどにものを言う」

人間は、自分を「映す」鏡で顔を確認し、表情を変えてみせる。

そんなに表情が大切なのだろうか?

そんな自分の顔を見るより、自分たちの行動を見てほしいと、私は氷の上で思うのだ。

人間たちが遊びに行くという夢の国には、現実を見せないためにトイレに鏡がないそうだ。

鏡を夢の世界に「移さない」ことで、現実から解放する。

そこまでして現実から目を背けたがるのか。

確か

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世界の広さに比べたら

世界の広さに比べたら

「海の広さに比べたら、なんて私は小さいのだろう」

小説やドラマ、演劇でよく使われている言葉だ。

この言葉を実際に使ったことはないが、海は確かに広い。僕なんかを寄せ付けないくらいに。

高校生の時に水泳部だった僕は、学校の小さいプールで泳いでいた。そのプールを何往復しても、海の広さに比べたら、到底敵わない。

海という自然の産物に広さで勝負を挑んでも、荒唐無稽、お門違いこの上ない。

だが、やは

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打ち上げ花火

打ち上げ花火

夏を題材にした映画や小説は、なぜ心をこんなにも揺らすのだろうか。

僕は夏を題材にした小説をよく購入する。春や秋や冬より、圧倒的に。

タイトルから夏を感じる小説もよく買うのだが、やはり表紙が夏模様だと、つい手に取ってしまう。内容もよくは読まずに、そのままレジに並ぶことが、よくある。

近頃は、そんなジャケ買いが増えている。

小説家に知られたら怒られてしまいそうだ。

家に帰って自分の部屋で買っ

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