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ファッションの好みが勝手に変わっていく

「サキちゃん、昔と比べるとすごく変わったよね」

肉バルを出て下北沢の街をブラブラ歩いていると、由美にそう言われた。真奈も「昔は派手だったもんね」と言う。

ファッションの話だ。

由美と真奈との肉バルでの会話はこちら。


由美と真奈(どちらも仮名)とは19歳からの付き合いで、ふたりの言う「昔」とは学生時代のことだろう。

「15年経てば、そりゃあ変わるでしょう」

「そうかな? 私と真奈ちゃんはあまり変わってないよ」

たしかにそうだ。由美も真奈も、出会った頃からファッションのテイストが変わっていない。由美はアースカラーのナチュラルな服を好むし、真奈はメンズライクでロックな服を好む。

ふたりとも、時代とともにアップデートされているものの、ジャンルそのものは変わっていないのだ。

私はというと、もう何度、方向転換したことだろう?

入学当初は古着を好んで着ていた。派手な柄のワンピースにジャージの上を合わせたり、そういう格好が好きだった。

途中からエスニック系の格好にハマった。長い髪を頭のてっぺんででかい団子にし、アクセサリーも大ぶりのものだけをつけていた。

卒業後は山小屋で働き始めたこともあって、アウトドアMIXで着ていた。そして、20代後半からはだんだんと「ふつうのカジュアル」になっていった。

30歳からはできるだけシンプルにしたくなり、白・黒・紺・グレーの服ばかりを着るようになった。

由美は言う。

「そういうふうにちゃんと自分を更新していくの、素敵だなあって思う」

「いやいや、そんないいもんじゃないよ。意図的に更新してるんじゃなくて、勝手に変わってちゃっただけだよ」

私が言うと、由美は「えー? クローゼットの中の服が勝手に変わってくことはないじゃない」と笑った。

たしかに、クローゼットの中の服が勝手に変わっていくわけはない。その都度、私が自分の意思で買っている。

だけど、私の好みは勝手に変わっていくのだ。気づいたら、それまで興味がなかったファッションに手を出したくなっている。なぜかは自分でもわからない。

私はその変化をメタモルフォーゼと呼んでいて、自覚しては面白がっている。

ここ1年ほどは「好きな服より似合う服を着たい!」というフェーズに入っていて、いろいろ着てみている。

これは、人目を気にしているわけではない。これまでさんざん「好き」を追求した結果、一周回って「好きより似合う優先」な気分になっているのだ。

今はそういう気分だけど、数年後には「似合うより好き優先」になってそうだし、そのとき自分がどういう服を好むのか、今の自分にはわからない。

「自分でも『変わってくな』って思うよ。『変わっちゃったな』とは思わないけど

私がそう言うと、由美も真奈も笑顔で頷いた。

私が変わったのはファッションの好みだけじゃない。考え方やライフスタイルも、そのときどきでメタモルフォーゼしていく。

由美と真奈に会うのは1年に1回程度だから、会うたび、ふたりは私の変化を感じているのだろう。実際、「変わったね」と言われることもある。

だけど、ふたりとも決して「変わっちゃったね」とは言わない。私の変化にものすごく肯定的なのだ。

だけど、友人だった人の中には、私の変化に否定的な人もいた。

長くなったので続きます。




由美が出てくるエッセイです↓




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