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「なんで頑張るの?」と言われてしまう

夫に連れられて長旅をしていたとき、旅行記ブログを書いていた。

私は書くのがとても遅い。

よく「話すように書けば早く書ける」という人がいるけど、私は話すのも遅い。書き留めておきたいことが多すぎて、一日分を書くのに一時間以上かかる。

書くのを一日休むと、二日分の書きたいことが溜まる。「書きたいこと」はけして消えない。シンクに溜まる食器や洗濯物のように、書かなければ溜まっていく一方なのだ。

だんだん書くのが追いつかなくなって、ブログは旅の途中で中断してしまった。

帰国後、ブログを再開した。

旅の間、その日にあったことは箇条書きで手帳にメモしていた。メモや写真を見ながら、半年遅れの日記を書き続ける。次の仕事が始まるまでの間は無職だったから、一日12時間くらい書いていた。

友達に「今何してるの?」と聞かれて「ブログ書いてる」と言うと、彼女はいぶかしげな声(電話だったのだ)を出した。

「ブロガーってこと?」

「いや、広告貼ってないから収入はないよ」

「えっ、じゃあなんで書くの?」

えっ……!

たしかに、なんで書くんだろう。仕事でもない、誰に頼まれたわけでもない旅行記を毎日12時間以上も書き続ける理由は、なんだろう。

しいて言えば「書きたいから」なんだろうけど、このときの私はほとんど強迫観念のように「絶対に書かなきゃ!」と感じていた。

なんでと言われても困るけど、帰国したときにはすでにそう感じていたのだ。

「書かない」という選択肢を旅の途中で落としてきたのかもしれない。

◇◇◇

小学1年生からピアノを習っていて、4年生くらいまでは上手になりたい一心でけっこう練習していた。

結果から言うと、私は練習したわりには上達しなかった。

小学校の6年間習って、ブルグミュラーはなんとかクリアしたもののソナチネは2曲くらいしか弾けなかったし、『エリーゼのために』もついに最後まで弾けなかった。

子どもながらにうすうす感づいていたけれど、私には音楽のセンスがなかった。

頑張っていたのは、単純に弾くのが好きだったからだ。

もちろん、練習は楽しいことばかりじゃなかった。先生は怖かったし、けっこう辛いときもあった。それでも続けていたのは、辛さもひっくるめてやっぱりピアノが好きだったからだと思う。

弾きたいから、弾く。好きだから、練習する。

なんていうか、「そりゃあそうだろう」という感じだ。

◇◇◇

当時、誰かに「なんでピアノの練習するの?」と言われたことは一度もない。

当たり前と言えば当たり前だ。

習いごとを頑張っている子どもに、

「ピアニスト目指してるわけでもないのになんで練習するの?」とか、

「何のためにそんなに頑張るの?」なんて、

そんな興ざめするような質問を投げかける人はいない。

だけど、大人になって仕事以外の何かを頑張っていると、「なんで頑張るの?」と言われてしまう。

……なんでだろう?

そんなこと、私だって知りたいよ。


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