「吐き出すことでラクになる」説は本当か?

私はメンタルの不調で療養中だ。けっこう、辛いときも多い。だけど、このnoteには「辛い」といった愚痴は書かない。

いや、正確にはそういった感情だけを書くことはしない。

辛い気持ちについて書くときは、何かしらの工夫をするようにしている。


それがどういった類の辛さなのかを分析してみたり……


対処法を考えてみたり……



せりふや情景描写を多用して私小説風にしてみたりする。


私は、感情まかせの愚痴は書かないようにしている。

けれど、「感情まかせの愚痴を書いてはいけない」とは思わない。

たしかに、他人の愚痴なんて読めたもんじゃない。でも、読めたもんじゃない文章を書く権利は誰にだってある。

それに、そういった文章を書くことは「可能」だ。書いて公開をクリックしても、「この文章は痛々しすぎて公開できません」みたいなエラーが出ることはないだろう。

一般的にgoodでなくても、canではあるのだ。

◇◇◇

じゃあなぜ感情まかせの愚痴を書かないかというと、その理由は3つある。


ひとつめは、読んだ方に「読んで良かった」と思われたいから。

最初はただ書き散らかすためだけに作ったこのアカウントだけど、最近はありがたいことにコメントやサポートをいただくようになってきた。そうなると欲が出てきて、「もっといいものを書きたい」と思うようになった。

私の書く記事が「作品」で、それが読む方にとって「読書」であればいいなぁ。なんて、おこがましいことを願っている。


ふたつめは、理屈っぽい性格だから。

辛くなると、その原因と対策を分析したくなる。ときには図解してまで考えごとをしてしまう(私の手帳には謎の図解がたくさん残されているので、もし今殺されたら刑事さんが「ガイシャの手帳にこんなメモが……!」とか言うだろう。)


そしてみっつめは、愚痴を書いてもラクにならなかった経験があるからだ。

辛いことがあったとき、よく「吐き出したらラクになる」と言われる。

私自身、そう思い込んで吐き出しまくっていた時期があった。

だけど、吐き出しても吐き出しても、全然ラクにならない。むしろ、書くほどに辛くなっていった。

◇◇◇

私が初めてネットで文章を書くことを覚えたのは、専門学校生時代のmixiだった。

当時の私はとても情緒不安定で、生きづらかった(今もだが)。

専門学校生活は密度が濃かった。東京で文芸創作を学び、友達にも恵まれた。小説の同人誌を作ったり、文学賞に応募したり、飲んだくれたり、就活したり。バイトと彼氏は何度か変わった。

そんなガチャガチャとせわしない生活の中で、私は何度も病んだ。

リストカットや過食はなかったものの、どうしようもなく心が苦しくなって自分でもどうにもできないことがあった。

そんなとき私は、mixiに感情を書き殴った。

辛い。なんで私はこんなにダメなんだ。あいつのせいだ。自分のせいだ。誰も私のことをわかってくれない。自分が嫌い。死にたい。

嫉妬。呪詛。孤独。怒り。他罰。自己嫌悪。ありとあらゆるマイナスの感情を書き散らかした。

当然、マイミクは減った。

私はネット上の友人を作らず、リアルでの友人とだけマイミクになっていた。つまり、マイミクが減ることは友人が減ることだった

マイミクを切られるたびに「嫌われた!」とひどく傷ついた。

もともと異常なほど好かれたい願望が強いのに、本音を書き散らかすたびに、嫌われてしまう。

そして、「わかってもらえない」と相手を呪うのだ。

◇◇◇

今になって思うと、マイミクが減るのは当たり前だ。

そりゃああんな呪詛みたいな文章、誰も読みたくないよなぁ、と思う。

呪詛のような文章は、読んでいる人の心にも影を落とす。あのとき私と距離を置いた人たちは、自分の心に影を落とすものから身を守ったのだ。

それは真っ当な反応で、むしろ離れなかった人たちがいたことのほうが奇跡なのだ。

それに。

あのときの私は、愚痴を書いてもまったくラクにはならなかった。

なぜかはわからないけど、書いてもスッキリしなかった。それどころか、書けば書くほどに落ち込んでいった。

書くことで私自身が癒されるのであれば、それは、友達を失ってでも書くメリットがあったかもしれない。だけど、私の場合はそうじゃなかった。

私の場合、友達を失うリスクに対し、得られるリターンは何もなかった。

◇◇◇

重ねて言うけど、私は「感情まかせの愚痴を書いてはいけない」とは思わない。

書きたい人もいるだろうし、書くことで救われる人もいるだろう。書きたいなら書けばいい。その自由は、誰にだって認められている。

だけど私は、辛いときに「辛い」と書いてもラクにはなれない。

辛いことを書いても別のことを書いても、どっちにしろ辛いのだ。

だったら、書いていて楽しいほうを書く。

療養中でも、療養のことより友達の恋愛のことばかりを書いている。

なぜだかそれが、私にとっての癒しになっている。




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