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3億円の使い道

お金への関心が薄い。

別に「お金は汚いもの」という気持ちがあるわけではなく、嫌儲感情があるわけでもない。

だけど、私自身はどうしてもお金に興味を持てない。あったら嬉しいのに、「じゃあどうすればもっと収入を増やせるのか?」「どうすれば資産を増やせるのか?」などなど、考えようとしても、気づいたら他のことを考えている。

子供の頃から夢見がちで本ばかり読んできて、35歳の今もなお、興味は物語の世界に向いている。いつだって楽しいことや美しいもののことばかり考えてしまう私は、資本主義社会での生存にとことん不向きだ。

そんなんだから、ずっと「私と夫が生活できるぶんのお金があれば十分」と思っていた。

だけどあるとき、「その考え方は謙虚なようで実はとても利己的だな」と気づいた。

だって、私と夫が生活できるぶんのお金しかないと、周りの人がお金に困ったときに助けられないから。

「ドリームジャンボで3億円当たったら何に使う?」

友人のミホが言い出した。一年半ほど前のことだ。

「よくあるトークテーマだな、おい」

「いや、この前うちの近くの宝くじ売り場で一等が出たらしくってさ。旦那と使い道の話になったんだけど、旦那がすごい具体的に考えててさぁ」

彼女の旦那さんは、3億の使い道を「マイホームを購入し、残りの半分は投資、半分は貯金」と答えたそうだ。

えっ! そんなに貯金いる……?

別に、その使い道がダメと言いたいわけではない。ただ、あまりにも私とかけ離れた発想だったからビックリした。

じゃあ私ならどうするかと言うと、なんていうか、もっとワクワクすることに使いたい。

パッと浮かんだのは、スーホさんのことだった。

スーホさんは、私と夫が旅をしていたときにチリの安宿で出会ったモンゴル人。日本でモンゴル料理屋をやっていて、お店を閉めて従業員のタカシさんと世界一周の旅をしていた。

数日間の滞在中、私たちはすっかり仲良くなり、宿の中庭でおしゃべりしたり、一緒にご飯を食べに行ったりした。

私たちが帰国してしばらくした頃、まだ旅を続けているスーホさんのfacebookを見て仰天した。

モンゴルに行ったら後輩が交通事故に遭い働けなくなっていたので、旅の資金をすべて後輩にあげた。一文無しになったから日本に帰る……という内容だった。

びっくりした。私がその立場だったとして、同じことができたとは思えなかった。

その後、帰国したスーホさんはタカシ君と赤坂でモンゴル料理のお店を始めた。旅の資金とは別に貯金があったのかもしれないし、融資を受けたのかもしれない。

私たちも、何度かお店に会いに行った。ちなみに、スーホさんは羊一頭を盗まれたことで話題となり、なぜかサンジャポに出演していた。

さて、話は3億の使い道に戻る。

一年半前、スーホさんとタカシ君はフィリピンにいた。赤坂のお店は人に譲ったのだ。

スーホさんは、そこで知り合った貧しい家族にチキンの屋台を購入してあげ、チキンを仕入れて商売の手ほどきをしていた。すべて、自分の貯金から出している。

私はその様子をfacebookで読み、「なぜそこまでするんだ……!」と驚き、協力できない自分に不甲斐なさを感じていた。

だから、ミホに「3億円当たったらどうする?」と聞かれたとき、「3億円あったらスーホさんの支援ができるな」と思った。

けれど。

3億当たらなくても、私にもう少し収入があれば、それはできるのだ。

私に余裕がないばかりに、スーホさんの手助けもできない。

そのときはじめて、「私と夫が生活できるぶんのお金があれば十分」と考えてきた自分を恥ずかしく思った。


私には支援したい人がたくさんいる。

はたから見れば、「いや、お前が支援される側だろ」と突っ込まれそうなくらい収入が少ないのだけど、しょうがないじゃん。支援したいんだもの。

だから、お金を稼ごう。

私は賢くないし行動力もないけど、周りの賢くて行動力のある人たちにお金を託せば、きっと世の中を少しだけ素敵にしてくれる。

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