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SOSを出してくれて、ありがとう

「死にたい」と思ったことがある人は、どのくらいいるのでしょうか?

そういった感情を抱いたとき、精神科へ行くのはもちろん有効な手段のひとつです。しかし、それだけでは改善されない生きづらさもあります。

そんな生きづらさと向き合う活動をしているDr.ゆうすけさんにお話を伺いました。



誰かの「死にたい」に向き合うのがライフワーク

Dr.ゆうすけさんの本業は内科医ですが、ライフワークとして、顔と本名を公開せずに「Dr.ゆうすけ」名義でメンタルヘルスに関わる活動されています。

精神科医ではないので、治療行為をするわけではありません。生きづらさを抱える人たちの悩みに耳を傾け、できる範囲でサポートをしています。相談者の多くはSNSやコミュニティで知り合った人だそうです。

1時〜3時くらいがコアタイムで、誰かと電話やメッセをしてることが多いです。今の状況をどうしたらいいか、一緒に考えます。やばいと思ったときは直接出動したりもします。

話を聴いて、不眠とか内科的なアプローチができるときは自分の外来につなぐし、より高度な関わりが必要な場合は専門家の先生につなぎます。

「相手によってはとことん関わる」と言うDr.ゆうすけさん。どういう相手に対して、とことん関わるのでしょうか?

「このひとは確実に変化する。その変化に自分が影響を受けたい」
そう思う相手にはとことん関わるし、そうでない人には距離を持って関わります。

仕事じゃなく、あくまでも自分のために趣味でやってることなので、そこは好きにさせてよと思います(笑)

無償で行っている活動と聞くと、「相手のために奉仕する」といったイメージが浮かびます。

しかし、Dr.ゆうすけさんは「自分のためにやっている」と言います。相談者にとっては、「あなたのため」と言われるよりも気楽に話せるのではないでしょうか。


SOSを出してくれて、ありがとう

ときには相談を受けている相手から「死にたい」と言われることもあるそうです。

死にたいと言う人は、だいたい「死にたい」と「生きたい」の間で揺れています。死にたいくらい辛いけど、その辛ささえなくなれば生きていたいんです。

では、「死にたい」と言われたときは、相手にどのようなことを伝えているのでしょうか?

ひとつは、「死にたいという気持ちがあってもいい」ということ。「死ぬなんて言うな」みたいなことは絶対言いません。

もうひとつは、勇気を出して打ち明けてくれたことへの「ありがとう」。僕を信頼してくれたことに対する感謝です。

あと、これはケースバイケースですが、その人の辛さの原因が解決不可能なものではない場合、「その辛さから逃れるルートは存在するよ」ということも伝えます。

Dr.ゆうすけさんは相談者に答えを押しつけることはしません。一緒に悩み、解決のヒントになりそうな考え方を提示するだけ。決めるのはあくまでも本人だからです。


「死にたい」が「生きたい」に変わる瞬間

死にたい気持ちと向き合うのは大変なことです。金銭的なリターンがないからこそ、なんらかの「精神的なリターン」がないと、活動を続けるのは難しいと想像します。いったいそのモチベーションはどこから来るのでしょうか?


関わっていた人の「死にたい」が「生きたい」に変わった瞬間の、笑顔とか表情の変化を間近で見たことがあるんです。これはもう、鳥肌が立つくらい感動したし、嬉しかった。
ああ、僕はこの瞬間に立ち会いたかったんだなと気づきました。

もともとは友人の自死をきっかけにメンタルヘルスに関わるようになったというDr.ゆうすけさん。この活動を通して、「自分が人間として成長している」と感じるそうです。

人の痛みを理解するきっかけをもらっている。10年前よりも、1年前よりも確実に「ましなやつ」になっていると思います。


人生にいちばん効くのは対話だと思う

私は10代の頃から心の不調を感じ、精神科に通院していました。

当時の私は心の不調に関する知識がなく、病院に行って薬さえ飲めば治ると思っていました。しかし、薬で改善できるのは症状だけです。思考の癖や生きづらさまでは改善されません。

「どうしたら、この生きづらさが軽くなるのだろう?」ずっと、それを考え続けていました。

その問いに対し、Dr.ゆうすけさんは「人生にいちばん効くのは、薬じゃなくて対話だと思う」と語ります。

対話するためにはまず、誰かに助けを求めること。

人に頼ることに罪悪感を覚える人もいるでしょう。だけど元気になれば、誰かが苦しんでいるときに手を差し伸べることができます。また、ひとりがSOSを発することで、周囲の人たちも困ったときにSOSを発しやすくなります。

助けを求めることは、巡りめぐってほかの誰かを助けることにつながる――Dr.ゆうすけさんのお話を聴き、そのことに気づきました。

もっと気楽に頼ったり頼られたりすることの先に、みんながより生きやすい未来が待っているのではないでしょうか。

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