それはあなたに向けた発信じゃないよ
悩める女子大生がいる。
名前をみどりちゃん(仮名)としよう。
みどりちゃんは、賢くて礼儀正しい。しかし、とてもよく悩む子だ。
他人の「○○すべき」という言葉を真に受けては、「私はできてない……」と悩むのだ。
それがみどりちゃんに向けたアドバイスであれば、真に受けてしまうのは仕方ない。親や友達、先生に「○○したほうがいいよ」と言われれば、素直な子ほど信じてしまうだろう。
だけど、彼女は「ネットで読んだ社会的に成功している人の言葉」までも真に受けて、悩んでしまう。
しかも、その中にはあきらかに「みどりちゃんを対象としていない記事」もあるのだ。
たとえば、就職活動への提言。
「就活で勝ち抜くには学生のうちから○○すべし」みたいな記事を読んでは、「どうしよう、そんなことできそうもない!」とオロオロする。
彼女がその記事のリンクを送ってきたので、私も読んでみた。
すると、それは就活ヒエラルキー最上位の学生に向けた記事だった。
本文中に明記されていないものの、おそらくは「一流企業に就職したい一流大学の学生」を想定した記事なのだ。
みどりちゃんは一流大学の学生ではないし、野心家でもない。これといった目標もなく、「とりあえず生活できるだけのお金が稼げれば」といった感じだ。
どうしたって、みどりちゃんはその記事のターゲット層(読者層)ではない。就活戦線を離れて久しいおばさんの私にもわかるほど、あきらかだ。
なのに、彼女はその記事を真に受けてしまう。
他にもみどりちゃんは、クリエイターや起業家に向けた「成功するためのマインド」の記事を真に受けては「私にはこんなに夢中になれることがない……」と落ち込む。
えっ、それはあなたに向けた発信じゃないのでは……?
念のためにクリエイターや起業家を目指しているのか聞いてみたけど、そんなことはないらしい。
つまりみどりちゃんは、自分に関係のない発信まで受け取って、悩まなくていいことで悩んでいるのだ。
◇◇◇
ノウハウ系記事はある程度、読者の人物像(ペルソナ)を想定して書かれている。
発信する側は、読者をターゲッティングしている。
しかし、発信者だけではなく受信者も「ターゲット」という概念を持つことで、情報を取捨選択できるのではないだろうか。
この情報過多の時代、なんでもかんでも真に受けていたら頭がパンクしてしまう。
自分に必要な情報は受け取り、不要な情報は(たとえ読んでしまっても)スルーする。
そんなスキルが必要になっていると思う。
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