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「俺たちって付き合ってるんだよね?」の人

この前、この記事を読んで「興味深いなぁ」と感じた。

どこまでが無料部分なのかわからないから引用は避けるけど、要するに

・男女交際において「付き合おう」「うん」という申請・承認の文化ができたのは近年

・その背景には、セフレという概念ができたことがあるのでは?(以前はセックス=恋人だったので言葉で確認する必要がなかった)

という内容。

へぇ、そうなのか。

私は今35歳だけど、「付き合ってください」的な言葉によるやり取りがない限り、付き合ってると思わない。つまり、林さん言うところの「告白文化」が根付いている。

これって世代の問題なんだろうか?

なかなか興味深い話題だと思った。

そういえば、以前友人のトシコちゃん(仮名)が「告白されたことない。いつも、気づいたらなんとなく付き合ってる」と言っていた。

「じゃあ、自分は付き合ってるって思ってても、相手はそう思ってないかもしれないじゃん?」

「うん。だから不安になると『私たちって付き合ってるんだよね?』って聞く」

おお……!

あの漫画などでよく見る「私たちって付き合ってるんだよね?」をリアルに言ってる人がいたとは(しかもこんな身近に!)

だけど、どうせ「私たちって付き合ってるんだよね?」と確認するのであれば、最初に「付き合って」と言っても同じじゃないか。

最初に聞いとけば不安になることもないし、確認の手間が省けるのでは?

そう言うと、その場にいた女子みんなに「そうだけど!」「手間とかじゃないんだ!」と言われたので、ごめん、私は恋愛における機微とかわかんないや。

個人的に「付き合うかどうかを言葉にしなくてもお互いわかる」と思ったことがない。

相手の意思を確認していないのに付き合ってると思うなんて、そっちのほうが不思議だ。

まぁ、その線引きの根拠となるのは、林さんが記事で言及しているとおりセックスなのだろう。

だけど私は、セックスしていない相手に「俺たち付き合ってるんだよね?」と言われたことがある。セックスどころか手もつないでない、デートもしていない、ふたりきりで会ったこともない相手からだ。

その人は専門学校の先輩だったのだけど、ちょっとコミュニケーションに難がある人だった。学校で他人と会話しているのを見たことがない。

私は小説ゼミの文集の編集長だったので、ゼミ生全員とメールで連絡を取り合っていた。編集といっても赤を入れるわけではない。掲載の意思を確認し、原稿を集め、デザイナーや印刷所と連絡を取り合うだけの調整係だ。

LINEのない時代、連絡はメール。全員への連絡はメーリングリスト(懐かしい)を使ったけど、「原稿が遅れる」などの連絡は全員にするのが憚られるのか、私個人にメールしてくる人が多かった。

先輩もそのひとり。先輩とは、同じゼミだけどそれまで話したことがなかった。

業務連絡のメールのやりとりをするうち、雑談もするようになった。たいした内容ではない。ふつうの世間話だ。

私にとってそれは特別なことではなく、当たり前のコミュニケーションだ。誰に対してもそういうふうに接している。特に人懐こい性格というわけでもないけど、他人に対して冷たくする理由もないから。

だけど、先輩にとっては「異性とメールする」というのは一大事だったのかもしれない。

ある日、先輩からのメールの末尾にURLが記載されていた。誤って記載してしまったのか、わざとなのかはわからない。クリックするとそれは先輩のブログで、私のことがたくさん書いてあった。名指しではないものの、描写ですぐに私とわかる。

彼にとって私は「生まれて初めてこんな俺に優しくしてくれた女の子」らしい。

たしかに、ほかの人がゼミの飲み会の幹事をやるとき、「どうせ来ないだろうから」とその先輩には声をかけていなかった。私は、幹事をやることになったとき、先輩にも声をかけた。

そのことを、先輩はとても特別に感じているようだった。

けれど、それは別に優しさではない。私は「幹事たるもの、全員に声をかけるべき」と思っている。いわば優しさではなく正しさであって、大げさに感謝されるようなことじゃない。運命感じられても困る。

ブログはそんな話ばかりで、(恋愛感情という意味での)好意を寄せられていると断言できる内容ではなかったけど、なんていうか、私のことをものすごく「特別」と思っているようだった。

いや、それ思い込みだから。なんでそんな重く捉えんの? 私の立場上、当たり前の接し方じゃね?

……と思う。先輩の思い込みの激しさに苛立つし、端的に言って怖い。

私は彼と距離を置くようになった。もともと知人程度の距離感でしかないので、距離を置いたらほぼ他人だ。

すると、しばらくして「俺たち付き合ってるんだよね?」というメールがきた。

いや、誰がどう考えても付き合ってるわけないじゃん……。

どうやって返したかは覚えてない。だけど、言葉は選んだと思う。

「先輩を傷つけたくない」という優しさじゃない。逆恨みされて刺されるのが怖かったからだ。

幸いなことに、先輩から何かされることはなかった。ただ、しばらくはめちゃくちゃ怖かった。

業務連絡の延長で雑談メールを交わすようになっただけで「付き合ってる」と判断する思考回路がまったく理解できない。

けれど、そう思ってしまう人もいるのだと知った。

だからやっぱり、あらかじめ交際の意思を確認していただきたい。付き合ってないのに付き合ってると思われるの、ふつうに怖いから。




あと3分なにか読みたい気分の方はこちらをどうぞ。「会社辞めてフリーになりたいけど、生活を変えるのがめんどくさい。会社行くほうがラク」という友人の話。

……取材したとき(11月)はそう言ってたんだけど、近々転職するそうです。

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