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フランス人ミュージシャンとMix作業したので、その過程を書いてみた。

去年自分のやっているバンドでフランスのフェスに参加し、その時仲良くなったフランス人のミュージシャン友達Felixが、2週間ほど僕の自宅に遊びにきてくれました。

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彼はプロのドラマーで、キーボードも弾くマルチプレイヤー。
僕は彼と一緒に曲を作ったりもしたこともあり、
特にMixのスキルが素晴らしいと思ったいたので今回お願いして、
僕のバンドの曲を1からミックスしてもらいました。

僕のMac環境でやってもらったので、彼が使いたいVSTが無かったりしたのですがとりあえずやれることだけやってもらいました。
以下に手順と共に残しておきます。ご参考にまでどうぞ。


1.レコーディングした素材の確認


まず最初の各トラックの状態から確認しました。
Drumは、以下の10本の要素でレコーディングされています。

1. Kick の内側にマイクを立てたもの
2. Kickの外側にマイクを立てたもの
3. スネアの表面にマイクを立てたもの
4. スネアの裏面にマイクを立てたもの
5. ハイハット
6. フロアタム
7. ハイタム
8. Roomマイク
9. 10. オーバーヘッド✕ 2


今回の楽曲のジャンルとしてはギターロック、そしてOasisのようなガレージ・ロックサウンドを目指そうということに決めて、
使用するマイクを厳選しました。結局使ったのは以下の7本です。

1. Kickの外側にマイクを立てたもの
2. スネアの表面にマイクを立てたもの
3. スネアの裏面にマイクを立てたもの
4. ハイハット
5. Roomマイク
6. 7. オーバーヘッド✕ 2


この大胆な削りっぷりに、僕は初っ端から衝撃を受けました。
でも以前マスタリングエンジニアの森崎さんにもキックは1本で良いって言われたことがありました。今後は1本で良いのかもなぁ・・・。


2.ドラム波形のタイミング合わせ

波形を拡大して、山、谷のずれがないかを確認して微調整しました。
特にRoomマイクや、Overheadは距離が離れて録音しているため、少し手前にずらす等のタイミング調整が必要です。

3.キックとBassの関係性を決める


まずはキックとBass、どちらが下の帯域を担当するかを決めました。
これも表現したいこと、ジャンルによって異なってきますが今回は、サウンド的にベースがキックよりも下に来て支える形に決めました。


4.キック、スネアにGateをかける

生ドラムのレコーディングのため、各素材には音かぶりが発生します。
それを極力無くすために、キック、スネアの素材にGateをかけました。
この設定がけっこうシビアでかぶり音を上手くカットできる場合とできない場合があります。
スネアにはハイハットがかぶり過ぎて上手くかけられなかったので最終的にはGateをかけるのはキックのみになりました。


5.各ドラム素材にEQ、コンプをかける

ここから各素材の音作りをしていきました。
手順的には、

Kick

Snare

Overhead

Hihat

Room

の順番で音作りをしました。


各素材をソロで聴きながら、余計な帯域を削り、欲しい帯域を上げています。
ご参考までにEQの結果を載せておきます。


Kick

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Snare表

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Snare裏

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Hihat

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Room

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Overhead

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個人的にはhihatとRoomをがっつり削っているのが興味深かったです。

コンプはキック、スネアには味付けのないオーソドックスなコンプをかけ、
Room、オーバーヘッドには真空管モデリングのコンプをかけました。(今回V-compを使用)


ちなみにオーバーヘッド素材はそれぞれ右と左にパンを振り切っています。
(その他の素材のパンは動かさず)


6.Bassの音作り

続いてBassの音作り。こちらはベーシストからライン録音した素材をもらっています。これに対してEQ、コンプの処理をしました。

こちらもご参考までにEQ結果を。こちらも要らない帯域を削る意図ですね。
コンプは真空管モデリングのコンプ(CubaseデフォルトのTube Compressor)を使いました。

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7.ギターの音作り

ギターはKemper(アンプ)からアウトプットしたものをそのままライン録音しています。
ギターとBassをソロで同時に鳴らしながら作業しました。バンドサウンドでは同時に聴きながらバランスをとるのが大切だそうです。
ここでもEQ、コンプで音作りをしました。EQ結果を載せます。(コンプはオーソドックスなものを使用。)


バッキングギター(3kあたりをボーカルのために削ると言っていました、なるほど!)
リードギターとの帯域の棲み分けも大切だと言っていました。

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リードギター
(ノイズの除去とがっつり削っています。ガレージ・ロック感を出すための意図かと)

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8.ピアノの音作り


この曲にはうっすらピアノがいるのですが、同様にEQ、コンプ処理をしました。元のピアノ素材はAddictive Keyです。

ローカットと1400Hzあたりを少しブーストしています。

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9.ボーカルの音作り

オケが仕上がったのでここからボーカルの音作りです。
(普段は僕はドラム→ベース→ボーカルの順でやっているのでこれも興味深かった)


まずVocal素材を複製してレイヤーします。

-1つは普通のコンプをゆるめ、音量大きめ(メイン)
-1つは真空管系のコンプをがっつり、音量小さめ(サブ)


で用意しました。このレイヤーテクニックは僕も知っていましたがボーカルの存在感を出すのには良いかと思います。
(ただ最近はやっていなかったのでありかもと思いました。)

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メインのVocalのEQはこんな感じ。
僕のマイクの特性上ハイが出すぎてしまう所があって、それをがっつり削っていますね。
普段僕はハイがきらびやかの方が好きなのでここまで削らないのですが、聴きやすさを考えると適切なEQかなと思いました。

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サブのボーカルの方はがっつりローとハイを削っています。中音域を強化する意図ですね。

そのあとWavesのVocal Riderをかけて音量のオートメーションを書いてます。(Vocal Rider、便利です)

10.エフェクトトラックの追加(コンプ・リバーブ・ディレイ)

全ての録音素材の処理が終わったので、リバーブ等の処理をしていきます。
今回6つのエフェクトトラックを用意しました。(Send&Returnできるトラックのこと)


-1つが真空管系コンプとEQをインサートしたトラック
-ステレオリバーブ
-モノリバーブ
-ドラム用のリバーブ
-ボーカルのためのテンポディレイ
-ギターソロのためのテンポディレイ


コンプをバスで使うテクニックや、ステレオリバーブ、モノリバーブを複合して使うテクニックは僕は知らなかったので大変興味深かったです。


コンプをインサートしたエフェクトトラックにはEQを以下のような形で掛けているので、中音域のガッツを出すための意図です。キック、スネア、オーバーヘッドの音をセンドしていました。

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モノリバーブと、ドラム用のリバーブにはAbbey Road Chembersを使用。
Roomの音とBassの音をうっすら送っていました。臨場感を出す狙いだと思います。Bassにもリバーブをうっすらかけるのは僕にはけっこう興味深かったです。

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(ステレオリバーブも同様にAbbey Road Chembersを使用。)
ギター、ボーカル、オーバーヘッドなど多くのものを送っています。


11.Mix完了(本当は別モニターで確認したかった)


これでほぼほぼ完了です。もちろん何度も環境を変えつつ、リファレンス曲と聴きくらべながら微調整をしました。
彼は本当はモノスピーカーで確認したかったらしいですが、家になかったので断念。

とても大事、必ず買えと熱弁されました。
このオーラトーンというスピーカーがめちゃくちゃ良いらしいです。

ダウンロード

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/249383/

パッシブスピーカーなのでパワーアンプも必要。ケーブルも特殊となかなかやっかないなヤツですが、クインシー・ジョーンズも使用していた素晴らしいモニタースピーカーだそうです。

僕も早く導入したいです!

後日Ozoneにmonoボタンが付いているのを発見して、
これで確認するのも良いね、とのことでした。


12.マスタリングして完成

この後のマスタリングはOzoneを使って僕がやりました。素晴らしい洋楽ライクなMixで、特にドラムが際立っていると思います。
最終的なサウンドは以下の動画でぜひご確認ください。



13.おまけ -おすすめ機材-

機材をおすすめされまくったので以下に載せておきます。
ご興味のある方はどうぞ。

Aperta Aluminum

スピーカーの位置調整が甘いのでこれを必ず買えと言われました。
すっ・・すみません!すぐに買いました。そんなに高くないしね。

https://item.rakuten.co.jp/rockonline/35666/?gclid=EAIaIQobChMI9_zH2Ie35QIVRa6WCh0ejA7LEAQYASABEgKDjfD_BwE&scid=af_pc_etc&sc2id=af_113_0_10001868


AURATONE ( オーラトーン )

文中で触れたモニタースピーカー。メインのスピーカーと切り替えながら使うと最高だそうです。
調べた所、日本で使っている人に記事は少なかったです。

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/249383/


PreSonus Monitor Station V2

上のオーラトーンを買ってこれも買えばスピーカーの切り替えラクじゃん。買えと言われました。金!!!笑

https://nomadiary.hatenablog.com/entry/monitor-controllers


マイク ASTON ORIGIN

このマイク安いけどノイマンっぽくてなかなか良いと教えてくれました。
おーたしかにこの値段なら良いすね。検討します。

https://store.roland.co.jp/shopdetail/000000000824/?utm_source=roland&utm_medium=referral&utm_campaign=send_os&utm_content=pp_asorigin_features&_ga=2.175389089.2079916893.1572159797-887903820.1547194206


Bass 、バスドラム用 マイク

ベースとかバスドラ用のマイクはこれが最高だそうです。ドラマーの方はどうぞ。

https://fr.audiofanzine.com/microphone-dynamique/audix/D6/


13.さらにおまけ


フランス人の彼と話していて気づいたことをつらつらと。


-ドラムのオーバーヘッドをTOPと呼んでも伝わなかった。

これは日本だけなんですかね?少なくともフランス人には通じなかったのでオーバーヘッドが良きと思われます。

-サカナクションとコーネリアスを気に入ってくれた

日本のバンドを色々と聴かせてみましたが、サカナクションとコーネリアスが特に気に入ったようでした。
流石です。コーネリアスは海外公演をしているイメージがありますが、サカナクションはもっと世界に出ても売れそうですね。


-英語でトラック名付けておいたのでラクだった

普段からWindowsとの互換対策でトラック名は英語表記にしているのですが、海外の人とやりとりするのにも役に立ったなぁ〜と感じました。

-日本の街はフランス語がたくさん

僕は普段何気なく見過ごしていたのですが、日本の街中にはフランス語がたくさんあるみたいで彼はたくさん反応していました。確かに意味も分からずなんとなくかっこいいという雰囲気でフランス語を商品名とかに使ってるんですよね。


来年くらいにはまた僕もフランスに行って、色々と観てこようと思います。制作事情も色々と知れたら嬉しいですね。その時はまたレポートします。


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