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お悩み相談「電子書籍で漫画を売って暮らしたいです。」

先日珍しくDMでお悩み相談をいただいたので、回答しました。
もしかしたら役に立つかもしれませんのでシェアいたします。
何かの参考になりましたら幸いです。
(公開について相談者ご本人に了承を得ています。)

初めまして。お忙しい中突然のメール失礼致します。 現在、細々とデジタル漫画を描いているものです。 吉田さんのnoteやインタビュー記事を拝見し、私も個人で漫画を売っていきたいと感じています。ただ、うまくいくイメージがもてず足踏みして時間ばかり過ぎてしまい、ご迷惑とは思いつつ思い切ってメールさせていただきました。
吉田さんは個人で漫画を売って軌道にのるまでにどのくらいの量やペースでやっていかれたのでしょうか?
紙媒体への考え方が変わってきたというお話もされていましたが、今から同じように個人で電子書籍を売っていく道を志すのは無謀でしょうか。
もしよろしければ短くて結構ですので個人でやっていく上で上手くいかせる為に必要な行動や覚悟を教えていただけないでしょうか。
今他の方を参考にやっていこうと思っていることは、インスタグラムやtwitterで個人活動を知ってもらい、noteへきてもらい、そこで自作の漫画を販売したいと考えています。自己PRが苦手で、SNSで知ってもらったからといって売れるのか?と考えてしまい中途半端な状態です。お返事いただければ幸いです。
【自己紹介と簡単な経歴】 社会人経験後、出版社に持ち込み、受賞をきっかけに某週刊誌にて2年連載を目指しましたがデビューできず、年齢的な焦りや収入面を考えデジタル漫画の分野に移動しました。Web媒体で2年ほど連載経験あります。(書籍化はないです)


ご相談ありがとうございます。
うまくお答えできるかわかりませんが、できる限り素直に僕の意見を書いていこうと思います。
ただ、僕はそれほどうまくいってるわけではなく、僕より上手くネットを使いこなし、きちんと利益を出してる漫画家さんもたくさんいると思います。
色んな方の意見を聞いて、自分ができそうなことを選ばれるのがよいかと思います。
「ネットで何とか生き延びてる作家(4年目)」の意見として聞いていただけますと幸いです。
出版社を介さず、webで漫画家の活動していくにあたり、大変なこと、気をつけたほうがいいこと、を経験を踏まえて書いていきます。

Q1:吉田さんは個人で漫画を売って軌道にのるまでにどのくらいの量やペースでやっていかれたのでしょうか?

僕の漫画「やれたかも委員会」がTwitterでバズったのが2016年9月のことでした。それまでは漫画家の佐藤秀峰さんの所で雇って頂き、事務作業をしていました。
働きながら漫画を描いていたということですね。
当時は月にやれたかも委員会を1話20~24枚ほど描いていました。それをnoteで販売して、翌月cakesという閲覧数によってお金がもらえるサイトに載せてもらっていました。また「マンガonウェブ」というウェブ雑誌にも掲載してもらっていたので、その掲載料も重要な収入源でした。
単行本1冊分(約180P)描き終えるまでの半年は、「日中の仕事の給与」と漫画の「noteの売上」「cakesでの掲載料」「web雑誌掲載料」で暮らしていました。
単行本1巻が出るタイミングで仕事をやめて独立し、その後は「note、cakesでの売上」「電子書籍売上」が主な収入源になりました。
当時はクラウドファンディングもやって、ドラマ化も決まって、書籍印税も入り、今考えれば浮かれていて、このまま大儲けできる!と思いましたが、そうはいきませんでした。

Q2:個人でやっていく上で上手くいかせる為に必要な行動や覚悟を教えていただけないでしょうか。

「SNSで知ってもらい、noteにきてもらい漫画を販売する」という作戦自体は、基本的にはいいと思います。
努力次第でバズを起こすことはできると思いますので、それを売上に繋げられれば、大きな収入を得ることができるかもしれません。
ただそれをずっと続けて、「暮らしの軸」にしようと思うと、かなり難しいのではないかというのが、僕の所感です。
バズった当時の僕のnoteの売上を貼っておきます。
この売上規模では一人暮らしでも生活するのは厳しいのではないでしょうか。

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会社で働きながら副収入として稼ぐならとてもいい収入になるかもしれません。
僕の場合は「noteの売上」と「電子書籍の売上」を軸にして、人を雇用して、コストをかけて漫画を作る道を選びましたが、それは結構厳しかったです。
どんどん売上は上がっていくものだと楽観視してしまったのですが、電子書籍の売上にもものすごく落差があり、月100万円の時もあれば、月15万円の時もあったからです。
収入の得かたが「執筆業」ではなく「小売業」に近いのかもしれません。
なのでwebでやっていくために必要な行動や覚悟は何ですかと問われると「儲かってもお金を使わないこと」「コツコツやること」と答えます。


まとめ 〜電子書籍で漫画を売って暮らせるのか。〜

結論から言うと「可能性はある!」です。
ただ電子書籍を売って利益を上げようと思うと、漫画の人気と同じくらい、「コンテンツ数」が大事になります。今からコンテンツ数を積み重ねていくとなると、当分収入が安定しないので、結構いばらの道になるかもしれません。(でも僕にできたのでできないことはないとも言えます。)
逆に出版社と組んで、原稿料をもらいながらだと収入は一定期間安定します。
ただその場合、打ち切られたら翌月から無職になりますし、描きたくないことを描かされてしまうかもしれません。あなたが経験されたように2年ぐらいネームのやりとりだけをやらされてしまうこともよくあります。
どっちも結局大変ですね。

どっちがいいのかな。と僕もよく考えます。
以前「寄生獣」の岩明均先生が何かのインタビューで「(頑張ってやってみるけど)漫画を描くのが嫌いになりそうになったらその雑誌を離れる」というような趣旨のことをおっしゃっていて、ものすごく共感しました。
ネームの直しを無限にやらされたり、無理矢理描かされたりしても漫画を嫌いになってしまいますし、あまりに評価されなさすぎたり、収入がなさすぎたりしても漫画を好きでいられません。
どのような道を選んだとしても「漫画を嫌いにならない。」というのが長く続けるために最も大切なんだと思います。
僕にとっては電子書籍がその助けをしてくれました。
そして今後も強力な味方である予感もします。
あなたにとっても「漫画を嫌いにならない道」が見つかればいいなと思います。

せっかくご相談いただいた縁ですので、うまくいくことを願っております。


と、いうわけでコマーシャル!

CM
1年ぶりの新刊です。
「やれたかも委員会
5巻 2021年6月1日(火)発売!!

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何卒よろしくお願いいたします!!



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