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トラブルこそトラベルの醍醐味! 長い目で見れば喜劇/海外旅行のすすめ(後編)


◆2014年2月「ヴェネツィアの悲劇」

 
前回の「海外旅行のすすめ(前編)」となる記事はいかがだったろうか。多くの人に感想をもらい、「私も一緒の考えなので、80億分の3にしてください」と申し出る方もいた。嬉しい限りだ。
(80分の3の意味が分からない方は、前回などの記事をぜひ一読していただきたい)

後でできると思ったら大間違い。人生にはタイミングがある/海外旅行のすすめ(前編)|吉田裕児@人と組織を咲かせる人財育成コーチ (note.com)
 
ところで海外旅行に限らず、旅の思い出はどんなものがあるだろうか。私の場合、一番思い出に残っているのは旅先でのトラブル(想定外)。今思うと、それが一番楽しい思い出になっている。
不思議なものだ。なぜ、トラブルが楽しい思い出になるのかお伝えしよう。
 
2014年2月、9年前のちょうど今頃、イタリアのヴェネツィアを訪れた。ゴンドラに乗り美しい運河や街並みを夫婦で堪能する予定だったが、あいにくの雨…。傘をさしながらの観光になる。
それでも、ディズニーシーとは比べものにならない本物は圧巻だ。どこを観ても素敵なところばかり。ちょっと浮かれて、妻にグッチのバッグをプレゼントした。
 
美しい街並みを散策していると、道の真ん中にずらっと木の台が並べてある。これが悲劇の予告だと知らず、縁日でもはじまるのかとディナーを楽しむことに。ワイン、イカ墨のパスタやシーフードを堪能し気分よくレストランを出ると、外は道ではなく川になっていた。
あるのはさっき見た縁日用だと思った木の台の道。木の台の意味がはじめてわかった。その上を歩けということか。
 

 
ヴェネツィアが水没するとは聞いていたが、ここまでだとは想定外!(雨と満潮が重なるとこうなるらしい)
「どうするんだ!?」と一瞬顔が青くなる。
 
リーズナブルなツアーだったので、ホテルはヴェネツィアの外。船に乗るために港まで、木の台もないところを膝まで水につかりながら妻の手を取り船まで必死に歩くことに。もちろん妻の片手には、しっかりグッチのバッグが握られていた(笑)。
 
今思うと本当によく帰れたものだと感心する。一歩間違えば、運河に落ちていたかもしれないのだ。無事ホテルに着いたが、ズボンも靴もびちょびちょに。それでも私も妻も大笑い。
 

◆日本でトラブるよりも絆が深まる理由

 
想定外はこのぐらいにして、本題に入ることにしよう。今回は夫婦の絆、パートナーシップについてだ。なんでこんな想定外の出来事がパートナーシップにつながるかお伝えしたい。その理由は二つある。
 
一つ目は、想定外の出来事に海外では二人で乗り越えるしかないこと。日本では周りの助けがたくさんあり、トラブルを回避できたり旅行を辞めてしまったりすることも簡単にできる。日本語が通じるし、携帯電話だってほとんどの場所で使える。
 
ところが海外では言葉は通じないので、思うとおりになかなか頼めない(本当は「ヘルプ・ミー!」とか言えば、たいてい助けてもらえます)。それに、簡単には日本に帰れない事情がある。二人でピンチを乗り切るしかないのだ。
 
このピンチを乗り切る共同体感覚(仲間意識や自分の居場所がある感覚)が絆(きずな)を深めてくれる。この共同体感覚は、『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)の著者岸見先生もおっしゃっているアドラー心理学なので、まんざら嘘でもない。
 
一人でも後になれば笑い話で済むエピソードになったかもしれないが、二人だとそれに絆が深まるというオマケがついてくるのだ。
 
今でもイタリア旅行の写真を見ると、ヴェネツィア事件の話題になる。「あの時、大変だったね!」と、想定外を乗り越えた共同体感覚が思い出され、絆を感じることができる。
 
旅の写真は、額に入れたり壁に貼ったりしておくことをお勧めする。普段険悪なムードになってもその写真を見ると、ほんの少し良い雰囲気になるからだ(笑)。
 

 ◆誰かのせいにできない海外旅行

 
 二つ目の理由は、小言や不満を言っている場合ではないということ。日本にいれば、何かアクシデントが起きると、「なんでこんな場所を選んだ?」とか「なんでこの時期にするんだ!」と言いたくなる。そんな経験はないだろうか。
 
しかし海外にいると、そんなこと言っても日本よりははるかに状況は変えられない。日本では自力でなんとかできてしまえる分、ワガママを言えるから、2人で乗り越えようとはしない。最悪、1人で勝手に帰ってしまうことだってできるくらいだ。
 
海外では、パートナーのせいにしたり誰かの八つ当たりをしたりしても、状況が変わることはない。やるしかないのだ。
 
水没したヴェネツィアを妻の手を取り、とにかく目的地まで進む。特に男性のやりきる姿は頼もしく見えるものだと勝手に思っている。こんな機会は日本ではなかなかないだろう。
そんなことは当時思っていなかったが、めったにないサバイバルが夫婦の絆を深めてくれたと思っている。
 

 
難易度の高いトラブルが起きてしまうんだったら、海外旅行に行きたくないと余計に思ったかもしれないが、水没事件はめったにないので安心してほしい(笑)。あくまでわかりやすい例を挙げただけで、海外旅行ではこのようなことが起きることはめったにない。
(外務省のサイトで「退避勧告」が出ているような治安の悪い地域だと、命も脅かすほどのもっと厳しい状況になっているが、手軽かつ日本人がよく行くような観光地なら、水没事件的なものは割と珍しい部類に入る)
 
ちょっとした想定外が、日本にいるときよりも起きやすいということだけだ。こんなトラブルを乗り切れば、絆は深まっていく。

 ◆当たり前が尊く思える機会

 
最後に最も大切なことをお伝えする。
海外旅行の経験をすると、日本での当たり前の生活に感謝できるようになることだ。
 
日本でずっと暮らしていると、日本の平和すぎる状況になかなか気づけない。パートナーと一緒にいられることはもちろんのこと、普通に水や電気が使え、食事に困らず、ほとんどの地域なら夜遅くまでコンビニで必要なものが買えることが、とても尊いことに思えてくる。
 

当たり前がいかに大事なのか、恵まれた環境で暮らしているのか。海外旅行こそ、それに気づく絶好の機会だと確信している。
 
さあ、今年はどこで想定外を楽しめるかな?
ただ、いつものように、今回のお話しこそ、あくまでも80億分の2の生き方なのでご注意を(笑)
 
※作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部https://digi-den.net/より転載
 
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