のぶくんの猫
のぶくんが幼稚園児のころ、家にメスの三毛猫がいました。
ミケと呼ばれていました。ミケはよく子猫を産みました。
押し入れで産んで何匹もの子猫にお乳をあげているのを、のぶくんはいく度も見たことがありました。
子猫が産まれるたびに、おばあちゃんが世話をしていました。
子猫もある程度大きくなると、近所にもらわれていきました。
親猫はときどき旅に出ました。
何日も帰らないことがありました。
帰ってくると、子猫を産みました。
あるとき、親猫がまた旅に出ました。
おばあちゃんは「そのうち帰ってくるわ」と心配はしません。
しかし今回はなかなか帰ってきません。
「帰ってこんね」親猫は結局帰ってきませんでした。そのかわり少し柄のちがうメスの三毛猫がやってきました。その猫は、もといた猫の居場所におさまり、まるでもとの猫のようにふるまいました。
ご飯に鰹をふりかけた猫まんまも食べるし、ふつうにのっしのっしと居間を横断するし、ちゃぶ台に上がって、焼き魚に手を出したところを、おじいちゃんに頭をげんこでこづかれたりもしました。
その猫もときどき旅に出て、もといた猫とほとんど同じ行動をとりました。その猫は、もとの猫と同じ名で「ミケ」と家族から呼ばれるようになりました。
やがて旅から帰ったミケは、もとの猫と同じように押し入れで子猫をたくさん産んで、子猫たちは近所にもらわれていきました。
「それにしても、もとのミケはどこへ行ったんだろう」
小学生になった今でも、のぶくんにはその謎がとけません。 おわり
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