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『足利のラッパー・SATORUインタビュー』 少年院で学んだ自由。彼の人生を変えた2人のラッパーとは?

ツイッターからポストされた新曲「MAKA」が突如バイラル。攻撃的なリリックとインパクトのあるMVが注目されているSATORUに、これまで育ってきた複雑な環境や、今後の展望について、電話インタビューをさせていただきました。

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足利出身ということなのですが、育った環境について教えてください

3歳の時にブラジルから引っ越してきて、そこから足利に住んでいる感じです。母がブラジル人で父が日系です。小学2年生までは、母親と再婚相手と住んでたんですけど、3年生から別居になって、それからは母と姉と兄の4人で暮らしてました。

シングルマザーの家庭で育ったということで、何か苦労した経験とかはありましたか?

んーー... ありすぎてパッと思いつかないですね...

夜は母親がいないことが多かったんで、それが辛かったです。(夜は)目を瞑るのが怖いんで、目を開けながらシャンプーをしてました。だからシャンプーがすげえ痛かった...笑

HIP HOPを聴き始めたのはいつ頃ですか? 

中一ですね。きっかけはYoutubeで、AKさんです。「Ding Ding Dong」って曲があって、それにハマってから「And I Love so」とかがリリースされて

最初は中一だし、リリックで何を言ってるかはわからなかったんですけど、何回か聞いていくうちにだんだんハマってきて...

どういう部分にハマったのですか?

ファッションだったり攻撃的なラップだったりで、聞いているだけで強くなるような感じがしたんですよね。

それから聞いていく音楽はどのように変わっていきましたか? 

そっから関連の動画でAnarchyさんだったりとか、般若、オジロ、だったりも聞くようになりました。

ラップを始めたのはいつ頃ですか? 

16の冬です。地元にライブハウスがあるんですけど、曲のタイトルにもなってるMAKAくんのライブがあったんですね。当時MAKAくんのことはまだ何も知らなくて、友達の繋がりで行くことになったんです。そのとき、自分は地元で「C.M.D 13」ってギャングに入ってたんですけど、ライブにギャングの仲間を大勢連れていったんですよ。乗り込んでやるぜ、みたいな感じで。

それで、ライブが始まると、MAKAくんが即興でフリースタイルを始めたんですね。その途中でMAKAくんが、自分たちの方指差して、「そのあたりは服装が真っ赤」ってラップしてて確か、真っ赤、バカ、みたいな感じで韻を踏んでいたんですよ。今思うと超簡単な韻だったと思うんですけど、当時の自分は、「即興でそんなことできるんだ」ってめちゃめちゃ食らって。

そのフリースタイルの後、MAKAくんが千葉に転勤する友達に向けた曲をアカペラで歌ってたんですよ。それが最後の曲だったんですけど、バチーンとくらって。(ライブが終わってから)自分もラップやりたいんですけどってMAKAくんに直接連絡をとりました。

(ギャング時代の様子:総勢約80名からなるC.M.D 13。No1とNo2が双子の兄弟で、SATORUはNo3であった)

MAKAさんとはどのくらいの付き合いになるんですか? 

そこからちょうど7年くらいです。でも、自分は捕まったり、地元離れたり、音楽自体から距離をおいていた期間もあるので、ずっと一緒にいたというわけではないです。

その7年で印象に残っていることはありますか? 

地元の菌って意味で「フッドバイラス」ってクルーを作ったんですけど、自分はちょっと変わったことをしたくて、SNSでクルーのアカウントを始めました。

やっぱフォロワーが多い方がかっこいいじゃないですか。それで自分は、ギャルの画像とか拾ってきて、キャバ嬢になりすましてフォロワー増やしたんですよ。ある程度フォロワーが増えたら、画像を全部削除して、クルーのアカウントとして運営していくつもりでした。友達とかに頼んで、クルーの宣伝画像をポストしてもらって、SNSをハイジャックした状態で9時に重大発表をするって打ったんです。

なんですけど、その大事な日に寝坊してしまいました。パスワード知ってるのは、自分しかいなかったんですけど、ギャル時代の画像もまだ消えていなくて... 今はそのアカウントはもう使ってないです。

そのクルーはそれからどうなっていたんですか? 

それこそクルーのアカウント作ったり、結構勢いに乗っていたんですよ。MAKAくんも戦極に出たりして、やべえみたいな感じになってて。結構みんな音源とかも、出しててすごいいい感じだったんです。そんときにちょうど自分がパクられちゃって...

パクられたというのは? 

少年院に1年4ヶ月くらいいたんです。出てきたらMAKAくんがすごい有名になってて、東京に行ってフリースタイルダンジョンとかにも出てました。少年院にいたころに、出てきたらどうやって活動していこうか考えていたので、それから1年くらい積極的に活動していました。ただ、

ただ? 

自分が少年院にいる間に本当色々変わってしまってて、ラップやめたやつだとか、それこそクルーも解散していて、結構ショックを受けたんです。そんときのHIP HOPも、ダサい変なラッパーが売れたりしてて、本当つまんねぇなと思いました。言葉が軽くて、行動と伴ってないというか。近年フリースタイルが流行ってて、小僧たちのなんでも言っていいみたいな感覚は、すげえHIP HOP下げてるなって。でもリスナーとかは、それをみて盛り上がってるわけで、クソだなと。

自分は捕まってた時のフラストレーションもあったので、1年間くらいはRECをしまくったんですよ。ただ熱も冷めてしまって、1年後にはキッパリとラップをやめていました。

(釈放された当時、MAKAは初のMVをドロップするなど、活動の幅を広げていた)

少年院という周りとは全く違う環境で青春時代を過ごしたと思うのですが、そこで学んだことは何かありますか?

今まで当たり前だと思ってたことが、当たり前じゃないんですよ。毎日お風呂入ることも、コンビニでお菓子を買ったり、お酒を買ったりすることも、本当に小さいことかもしれないんですけど、当たり前じゃないんだなって。

外にいれば、本気になればなんでもできちゃうんじゃないかなと思ったんです。誰とでも話せるし、好きなときに寝れるし。それを振り返ると、今まで有効に時間を使えていなかったなと思いました。

あと捕まる前は、カッコつけた感じで、周りの受けを気にしてラップをしていたんです。1年4ヶ月少年院にいたことで、本当に自由が恋しくて、なんでもっと自由にラップしていなかったんだと思いました。出てきてから、自由にラップすることが本当に楽しくて、HIP HOPが好きなんだと気づきました。そのときにできたのが「SATORU行進曲」という曲です。

これはどういった内容の曲なのですか?

シャバに出てきて、1日目でキャバ嬢抱いて、2日目にシャンパン開けてもらって、3日目にこのままじゃやばいってなってその日に作った曲です。少年院って行進をするんですよ、「イッチニー、イッチニー」みたいな感じで。行動訓練っていうんですけど。その行進が、出てきてからの俺の歩みと似てるなと思ってできた曲です。

少し話は戻りますが、ラップを一時期やめていたのに、復帰しようと思ったきっかけはなんですか? 

MAKAくんがフリースタイルバトルに出たときに、明らかに勝っているのに、延長に持ち込まれた事件があったんです。審査員も、対戦相手も気に入らねえなってずっと心に引っかかってたんです。そんなとき、ちょうどAnarchyさんが栃木に来ることがあって。

これまでライブとか全く行ってなかったんですけど、子供の頃からAnarchyさんは大好きだったので、これは行くしかないなと。そこでめちゃめちゃくらったんですね。3年前までラップはやらないと頑なに言い張ってたんですけど、そんなことどうでもよくなるくらい吹っ切れたんです。その次の日に、曲も何もできてない状況で、RECする場所を抑えました。そうしてすぐにできた曲が、あの「MAKA」って曲です。

「MAKA」はどういった内容の曲なのですか? 

1つは、音楽始めるきっかけはMAKAくんだったので、そのMAKAくんに対して恩返しするような曲を書きたいなと。あと、MAKAくんのことを知らない人もいっぱいいるだろうし、MAKAくんもあまり自分からそういうことは言わないので、みんなに知らしめたいという気持ちから作りました。

2つ目は、自分の家庭環境だったり、ネガティブな感情だったりを詰め込みました。フリースタイルバトルとか見ればわかる通り、MAKAくんは地元のヒーローなんですね。MAKAくんとは全く関係ないんですけど、「MAKA」にこのリリックを乗せれば、そのネガティブなものさえもうまくいく気がして、あえて混ぜました。

あとは、インパクトがあると思ったんです。MAKAくんは優しい性格で、世界に向けてだったり、子供達に向けての曲を作ってるんですね。そのイメージと自分は正反対なので、「MAKAの後輩にこんなやついんの? 」ってなれば面白いなと。これからMAKAくんに対する見方とかも変わっていったらいいなとも思ってて、「舐めたらかちこむぞ」ってリリックも入れました。

今後はこういった攻撃的なリリックが注目されることが多くなると思うのですが、その歌詞を通して、リスナーにどのように受け取ってもらいたいですか? 

2つあるんですけど、1つはこういう層に聞いて欲しいってのがあって、受験勉強を頑張っている女子中学生とか、門限にガチガチに縛られている人だとか、会社に飼い殺しされてるサラリーマンだとか... そういう社会に制限されている人たちに聴いてもらいたいです。全く正反対の人たちが、自分の曲を聴いて前を向いていけるようなことがあったら、クソ面白いなって感じます。

もう1つは、もう少し先を見据えたことになります。自分の考えるHIP HOPの本質ってのは、メッセージを伝えることなんですけど、今のスタイルって実際に起きたことだけをブワーっと言ってるだけで、メッセージ性はまだないんですね。自分は逮捕歴もあるし、世間から見たら犯罪者な訳じゃないですか。そんな犯罪者が伝える、自分のありのままの生活を曝け出したメッセージってのは、すごい勇気を与えれると思うんですね。自分はまだその段階までいけてなくて、そこに差し掛かったときってのが、自分がボーンと飛躍するときだと思います。

「MAKA」のMVについてなのですが、赤を基調にしたスタイルは、6ix9ineだったりCardi Bといったブラッズっぽい印象を受けました。そういった面で海外から影響を受けている部分はありますか? 

自分めちゃくちゃテカシが好きなんですけど、テカシの赤と自分が使ってる赤は全く結びつかなくて、ギャング時代の「C.M.D 13」の赤を連想させてます。思い返すとMAKAくんとの出会いも、赤い服装でライブハウスに乗り込んだことが原因でした。リリックでも映像でも、青春時代の思い出を全部詰め込みたいって気持ちから、自分にとって重要な色の赤を使いました。

今後はどのようなプランを立てていますか? 

今は、1stアルバムの制作を急ピッチで進めています。チャラ目線に走ったりラブソング歌ってみたりとか、アルバム全体で見れば1つや2つ入っていてもいいのかなーって曲あるじゃないですか。自分はそういうの飛ばして聞いちゃうんですね。なので、これは常に最初から最後まで攻め続けるイメージで作っています。バックギア入れることなくとにかく攻めで。

今までは4小節、8小節の終わりにパンチラインを入れるスタイルだったんですけど、最近は常にパンチラインで押し切るスタイルにしています。格闘技みたいな感じで、情報の処理が仕切れないくらいの連打をアルバムでもぶち込んでいきたいですね。

最後の質問になるのですが、コラボしたいアーテイストや、注目してるアーティストなどはいますか?

若い子でいったら、静岡のGreen Kidsですね。彼らも団地育ちで、自分と同じく全員外人なんですけど、自分がブラジル人なのですごい親近感があるなと。すごい頑張ってほしいと思ってるアーティストです。

あと最近バズってたアーティストなんですけど、Eric Bって17歳のラッパーです。これも食らったんですけど、一緒に曲作ったらすげえ面白いだろうなって思います。

あと大人だったら、T.O.P.さんとかすごい好きなんで、一緒に曲作ったら半端ないものができるんじゃないかなと。

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