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縄跳びとHIP HOPの関係性

「ボートを漕ぐ時はみんなでタイミングを合わせ漕ぐことになるだろう。前の人が漕ぎ始めたら、自然とそのリズムに合わせて自分も漕ぎ始める。脳が勝手にやっていることなんだ」

ウィスコンシン大学の教授Carl Fosterはそう語る。何か生活の中でリズムが生まれると、それに沿って行動してしまうことはよくあるだろう。音楽は生活から生まれたものだからなのか、実生活からリズムを切り離すことはできない。

音楽と実生活を考えたときに真っ先に浮かぶものは、「エクササイズ」ではなかろうか。イヤホンをつけた人がそのペースに合わせ、ランニングマシーンに夢中になったり、体幹を鍛えたりするのは珍しいことではない。ワークアウト用のプレイリストがSpotifyに無限に存在しているのがいい例だ。音楽をつけることで、その辛さから逃れられ、もう少しだけ頑張れたりなんて思ってりして... 

実は科学的に証明されている。

ブルネル大学のCostas Karageorghisが「アスリートにとって音楽は合法のドラッグだ」と話すように、この2つは非常に相性が良い。20年に渡る研究の結果、1)音楽と行動はシンクロする 2)興奮状態を増幅させる 3)辛さや痛みから紛らわす 傾向があることが明らかになった。具体的数値でいうと、15%ほど忍耐力を増加させるという。

そうこう調べていく中で、数あるエクササイズである1つの運動が、音楽的に強く影響を与えていることがわかった。「縄跳び」である。そしてその縄跳びが影響を与えたのはHIP HOPだ。

ブロンクスで確かに存在した縄跳びの文化

アメリカのダブルダッチチャンピオンが出演したDJ Freshの「Gold Dust」は、ブロンクスのBrownsville Projectで撮影された。それには確かな理由があった。

ダブルダッチの歴史は300年前に遡る。オランダ人によってハドソン川の辺りに持ち込まれた文化は、スペースをあまりとらず、縄が2本があればできる手軽さもあり、瞬く間に大陸中に広がっていった。(ダブルダッチの呼称もイギリス人が、オランダ人がおかしなことをしたときに「ダブルダッチ」と呼んでいたところからきている)。私も小中学生の頃は、縄跳びを必ず購入させられたのを思い出す。

1950年ブロンクスで生まれた、女の子の特権

音楽民族学、ソーシャルメディア研究家のKyra Gauntによると、1950年代はブロンクスの道端で、多くの女の子が縄跳びをしているところをよく見かけたそうだ。アメフトやバスケットボールなどに参加できない女の子たちにとって、縄跳びほど代変えになるスポーツはなかったのだろう。服装がよりタイトになり、スカートを履いていてもできることから、何かと理にかなっているスポーツであったのも間違いない。

生活とリズムが密接な関係であることは述べたが、縄跳びほど「リズム」が重要なスポーツは他にない。地面と縄がぶつかるたびに生み出される音は規則的であり、その音に乗ることは、縄を飛ぶ上で必要不可欠な能力であった。縄を回すスピードに合わせ、多くのローカルな歌が生まれたに違いない。リズムがあれば音楽が生まれる。Kyra Gauntは動画の中でこう語った。

「NellyのCountry Grammarがヒットしたのは馴染みのある曲だったからです。歌い出しの部分は「Down down baby down down the roller coaster...」という都市部の黒人コミュニティにいれば誰でも知っている曲なのです」

この曲をみんなで口ずさみながら、大勢で縄を囲む映像は容易に脳内で再生される。音楽がいかに生活の延長線上にあるかがわかるだろう。そう言われるとFlo RidaのTurn Around(5,4,3,2,1)も縄跳びの文化がヒットを助けていたような気がする。

コーラスでの5,4,3,2,1は、縄跳びをカウントする声。Turn Aroundは縄跳びソングでも有名なTeddy Bear, Teddy Bearから来ているかもしれない。裏で等間隔でなり続けるベースは縄跳びが地面を弾く音で...

少しこじつけのような気もするが、生活の奥深くに縄跳びの文化が刷り込まれていることは事実だろう。気づかないだけで、多くの曲が縄跳びソングに影響された曲かもしれない。

縄跳びにリスペクトを


written by YOSHI


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