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ダラスの注目若手ラッパー -Female Rapper編- part.2

part.1ではすでにスターダムの階段を上がり始めている2人のラッパー、Bobby SessionsとYella Beezyを紹介させてもらった。part.2に入ったのでここは少し趣向を変えて、女性ラッパーを3人取り上げていきたい。

このように女性ラッパーと枠組みを作って紹介してる時点で、まだまだ彼女らの立場はHIP HOPでも弱く、その原因はこのように取り上げる我々にもあるのではないか。なんて思ったりもするのだが、これも1つのプロセスであると信じたい。

最近の女性ラッパーの成功といえばCardi B。彼女が示した女性ラッパーとしての新たな成功の道は、確実にシーンに浸透しつつある。まずはGucci Maneにフックアップされたこのラッパーからいこう。

Asian Doll

Gucci Maneに惚れ込まれ、1017と契約してからの彼女の成長は爆発的だ。まずは最初の1曲。Gucci Mane & Smokepurppの全米ツアーにも途中参加が決まり、絶好調なNEWミクステ、『So Icy Princess』から「1017」

10月17日にリリースされた(Gucciラブすぎる)このミクステは、Gucci Maneが手厚くサポートをしていることもあり、一気に拡散されていった。TrinaやGangsta boo、Young Moneyの影響を受けたと語っている通り、超派手なスタイルと確かなラップスキルはみんな大好きなやつだろう。レーベルの巨大な助けがあってこその彼女のヒットではあるが、正直1017の対応には疑問もある。同レーベルと契約したLil Wopは、Gucci Maneからサポートを受けられていないことに不満を漏らし、半泣きの動画をポストしていた。おそらくGucci Maneの、Asian Dollへの過剰な愛が原因だろう。まぁこの才能に恋してしまうのも納得できるが...

彼女の人気が出てきたのは積極的にREMIXをやり始めた頃からだろう。「The Way Life Goes Remix」に「Lame Ni@#z Remix」、「Gummo Remix」と本家に負けず劣らずのクオリティーの曲をリリースし、人気を獲得していった。いずれもMVが最高なのでご覧いただきたい(リンクはめんどくさいので貼らない)。NEWミクステでは、彼女のラップスキルにスポットライトを当てた作品になった。個人的には、前作の「Doll Szn」やPnB RockとPnB Meenとの客演で見せた、メロディアスなビート上でのキャッチーなフロウ。私の一押ししたいAsian Dollの1面である。絶対聴いてくれよな! 

Cuban Doll

ラップを始める前はモデルをやっていた経歴を持つ彼女。金銭的な理由でモデルは相当ハードだったらしいが、その時に得たであろう経験、Cuban Dollとしての見せ方は、Youtubeでも一際輝きを放っている。

デトロイトっぽさ、ベイっぽさを掛け合わせたようなスマッシュヒット「Bankrupt」は瞬く間に再生回数を伸ばし、800万回再生に到達。この曲は後にLil YachtyとLil Babyが参加したRemix版も出ており、こちらはこのままいくと1000万回再生にまで届きそうだ。少し前のめりで、畳み掛けるようなラップをする彼女のスタイルは、ベイエリアのラッパーとかなり相性がよく、『Cuban Link.2』にはいずれもベイ出身のMozzy、OMB Peezy、SOB x RBEが参加した。Chief KeefやLil Kim、Nicki Minajを聴いて育ったと話しているが、そんなの彼女の曲を聴けばすぐにわかるだろう。

学校に行っていた頃から問題が多かったと話すCuban。ゲームに参加してからも彼女の立ち位置は問題児だ。シカゴのラッパーTadoeと別れた後に、彼とビーフ状態になった6ix9ineと距離を縮めて見たりと... しかし彼女の場合は6ix9ineほどセルフマーケティングが上手くなかった。

2ヶ月ほど前、ビーフ中のRocky Baddを偽のライブに呼び込み、そこを襲って檻に閉じ込める事件が発生。やりすぎとの意見がSNSから上がった。それを見たレーベルは彼女との契約を切り、その後理由はわからないがCuban Dollは入院することとなる。一見Cuban Dollがバカみたいに暴走したように思えるが、実際はレーベルとの契約が切られていなかったことなど、嘘ばかり出てきたため、何がしたくてこんなでかい事件に発展させたのかよくわからない。マーケティングかどうかはわからないが、この手のやり方は完全に失敗だろう。

Tay Money

2018年に突如現れた、Tay Money。WORLDSTARHIPHOPにアップされたこのMVは瞬く間に広がっていった。

現在25歳であるが、ラップを始めたのは23歳とかなり遅め。初めからラッパーになりたいと思っていたわけではなく、2015年にダラスに移住してきてスタジオに足を運んだときに、ラッパーになることを決意したそう。彼女が最初にレコーディングした曲、「Lewis & Clark」は人の彼氏を奪う強気な女性像を、始めて北アメリカ大陸を横断したルイス・クラーク探検隊と重ね合わせた(両親は2人とも白人と語っていたので、そこもルイスクラークを選んだ理由かもしれない)。全米中の注目を集めるとまではいかなかったが、ダラスに存在を知らせるには十分だった。

ダラスのHIP HOPファンとしても知られる、プロボクサーのエロール・スペンス・ジュニアは、ダラスのカルチャーはとても協力的だと語っているが、そのカルチャーに女性はどうやら含まれていないように思える。ダラスに移ってきた身だとしても、Tay Moneyを誰も「ラッパー」としては見てくれず、時にはセクシャルな対象でしか見られないこともあると話す。

逆にそれが彼女のモチベーションであることも確かだ。固定概念をぶっ壊すようなSavageすぎる彼女のバースは、独特のサウス訛りのラップとともに現在も進化中である。2年前は1度もレコーディングをしたことなく、サロンで働いていたなんて今となっては誰も信じてくれないだろう。


written by YOSHI

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