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No expectationsで、自由に歩いて愛して

ライブ :  花田裕之 “流れ” (吉祥寺・Black And Blue、2024年4月26日)

昨年12月のband HANADA以来のブラック・アンド・ブルー。ライブのスタートは高木栄一郎さん。花田さん、来ますから、と曲間に何度も繰り返しつつ、繊細な心情を素直な声で歌う。1980年生まれ、岡山出身。東京暮らしの方が長くなりました、という自己紹介と曲の雰囲気、納得。いくばくかの既視感と懐かしさ。

客席があたたまってきたところで、小休止の後はいよいよ花田さん登場。おなじみ「Tell Me Why」から始まり、まったりムードが続いていく。そのムードが最高潮に達したのが「No Expectations」 。この曲はこれまで私自身、ステージ終盤やアンコールで聴くことが多かったので、個人的にはなんとなく学校の終鈴のイメージがあるのだが、最近は前半や中盤に順番がシャッフル。魅惑のスライドギターも絶好調で、なめらかに音を引っ張ること、引っ張ること。その音色が心地よく、こちらのタマシイ丸ごと引っ張られて、どこかへ持っていかれてしまいそう。今日はもう、このままずっと持っていかれちゃってもいいかも....。魂抜かれる、ってこういう気分のことだろうか。

さてこの晩、このザ・まったり・「No Expectations」と双璧をなしたのが「自由に歩いて愛して」。「No Expectations」の1曲あとに突如現れ、アップテンポで押しまくり、会場の空気を一気に覚醒。さっき魂抜かれたくせに、今度は逆に魂吹き込まれた感じ。と同時に、花田さんのプレイを目の当たりにしながら、頭の中では以前どこかで絶対聴いたことがある、と確信するこの曲のタイトルがどうしても思い出せず、もどかしくて悶々状態。しかし翌日、ある方のSNSの投稿で曲名を発見した途端、安井かずみの作品だったことを真っ先に思い出した。それから作曲は井上堯之、PYGの楽曲ということを今回あらためて知った。たぶん初めてこの曲を耳にした時は、自分にとっては安井かずみの詞が何より鮮烈だったのだろう。

ショウの幕引きは、花田さんとOA・高木さんから借りたというバンドメンバー3人とのセッション。これが予想以上に見応えあり。花田さん自身はもとより、ドラムス、ベース、ギターのお三方がとても楽しそうで、また、よい意味での緊張感と興奮が真っ直ぐに伝わってくる、面白いセッションだった。

ライブがはねた後の吉祥寺は週末金曜日。おまけに明日から大型連休。浮ついた街を目でからかいながら、といきたいところだったが、そんな洒落たこととは縁遠く、ぼそぼそ地味に帰途につく。でも、いい時間、いい夜。ありがとう、吉祥寺!


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