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都会(まち)の空気

ライブ :  花田裕之 “流れ” (表参道・The Moon under Water、2024年5月5日)

5月の連休も終盤。久しぶりの原宿駅。改装されて随分大きくきれいになったことに驚く。と同時に人の多さに圧倒され、思わず本気で帰りたくなる。これだから田舎のネズミは。人混みの中、表参道をキョロキョロウロウロ、路地を曲がり曲がりして、店にたどり着く。地下1階ながら、外階段が見える大きなガラス窓から外の光が入るようになっており、意外と開放感。

GWとあってか、あるいは場所柄か。ライブはのっけから早々に観客の盛んな拍手で沸く。熱い声援も飛ぶ。それが花田さんをのせたのか、あるいは客がのせられたのか、この日の花田さんは重い扉を力で押し切るような、パワフルな攻めのプレイが印象的だった。

「Cocaine」という曲を初めて聴いた。ちなみにウィキペディアによると、1977年に JJ ケイルが発表、さらに同年エリック・クラプトンがカバーし人気を博したとのこと。へー、そうだったんだ。アッパーで軽妙、だが何といっても最後のキメ(というかオチ)の一言が突き抜けている。ウィットともとれるけれど、かなりダイレクトでインパクト強し。

アコースティックの「お願いひとつ」がしばらくぶりに聴けてよかった。「お天道さま」に続いて本人の曲が並ぶ。やはり自身の曲を自身が歌って聴かせてくれるのはとてもいい。

しばらくぶり、という点ではサンハウスのナンバーも戻ってきた。「なまずの唄」「ロックンロールの真最中」「にわか~雨」など。それからハートブレイクな「ぬすっと」もあり。甘くて、酸っぱくて、苦い。なのにどこか爽やかなレモンソーダのような切ない味。この妙味はもちろん原曲のおかげもあろうが、しかしそれだけではなく、花田さんならではの独特の隠し味が効いてこその味わいなのだろうと思う。

さらに「風が吹いてきた」からの「Do the Boogie」が面白かった。このふたつを予想もつかない形で徐々につなげていく演奏は、ちょっと不意を突かれた感じ。このギターフレーズは何だろう?と首を傾げるギャラリー。やがてその音のカタマリの中から、例のあの聞き覚えのあるフレーズがはっきりと姿を現した時の反応といったら。まるで店内中の空気が音をたてて一気にはじけたようだった。

この晩、終始精力的なステージで魅了し、楽しませてくれた花田さん。今さらだけど惚れ直してしまった。都会まちの空気といい、ライブといい、田舎のネズミにはいい刺激だった。

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