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(8) 統合の論理展開 「演繹法」②

大前提と個別事象からなる演繹法に、ニーズである個別事象からスタートする流れを紹介しました。それをさらに進めて、「結論」からスタートすることもあります。「結論ありき」と言われるものですが、何の問題もありません。ロジカルシンキングは、結論を満たすための根拠探しでもあるからです。

ロジカルシンキングの成果として、行動提案メッセージを出しましょう、と言ってきました。前回の結論「この映画を観に行こう」がその例です。この例は自分の行動ですが、ビジネスや日常の場面では、相手(顧客、上司、同僚、友達など)を動かすための提案が多いでしょう。お客さんに商品を買ってもらったり、上司に自分の提案を了承してもらったりするなどです。

この例を相手への行動提案メッセージにすると、「あなたはこの映画を観に行くべきだ」となります。この結論を出発点として、相手に提案通り動いてもらえるように演繹法を使って根拠を揃えます。まずは個別事象です。こちらはニーズでもありますから、相手が映画を観たいと思うことです。この段階で、忙しくてそんな余裕ないよ、ではその提案は受け入れられません。ニーズを喚起(気分転換した方が良いアイデアが出るよ)したり、できない問題を解消(作業を手伝ってあげるよ)したりすることから始めなければなりません。

運よく映画を観たかったとして、次は大前提であるこの映画を面白いと思ってくれるかです。前回は、口コミや星の数を基準にしましたが、今度は相手の趣味趣向も考慮することになります。私のようにホラーが苦手な人に、このホラーは面白いよ、と言っても「ちょっと無理」になりますから。相手の興味に合わせた、面白い作品をチョイスしてあげましょう。そう考えると、行動提案における大前提とは、「選択できる中でもっとも良いもの」とも言えるでしょう。

これら個別事象と大前提とが揃って、無事映画を観に行ってくれたとします。ただ、相手に合わせて作品をチョイスしたために、当初提案していた「この映画」とは違う作品になっているかもしれません。ここで、個別事象と大前提のどちらを満たしたいかによって考え方が分かれます。個別事象であるニーズ(映画を観たい)を満たしたいのであれば、違う作品になっても構わないでしょう。映画を観るという行動自体が目的だからです。もう一方の大前提(この映画)を満たしたいとき、今の相手に無理強いしては今後の関係性に問題が生じるかもしれません。その時は、潔く提案する相手を変えましょう。あなたから彼や彼女にターゲットを変えるのです。

少しでも前に進めるには、とにかく動いてもらうことです。動いてもらうために、自分で根拠を探したり、動いてくれる可能性のある人を見つけたりするのです。「今、目の前にある商品を、今、目の前にいる人が買いたがっている」といった大前提や個別事象があらかじめ揃っているケースばかりではありませんから。

逆に、全ての根拠が用意されていて、誰がやっても同じ答えになるケースばかりだと面白くないでしょう。誰しも「自分はこうしたい」という想いがあると思います。その想いは、現時点では仮説です。仮説は根拠が揃えば、正しい結論になります。

「結論(仮説)ありき」はウェルカムです。その結論が正しいと言える根拠を揃えること、それが考えることですから。ただし、根拠が揃わなければ間違った結論になりますので、それは素直に認めて別の仮説に切り替えましょう。さて、その根拠、とりわけ大前提の揃え方として、次回からは帰納法に進みます。

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池田吉成(いけだよしなり)

RBS(立命館大学ビジネススクール)講師「論理的思考とプレゼンテーション」担当。 経営コンサルタント、企業再生の現場を経て、現在は千里リハビリテーション病院 統括事務長。
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