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(15) 事象からの帰納法①知識の必要性

ここからはデータではなく、モノや事象などから考える帰納法です。データは比較ができるため、多いや少ない、増えたや減ったなどの意味合い(メッセージ)抽出はやりやすいですし、そのメッセージを人と共有することも難しくありません。一方、モノや事象からの意味合い抽出は、人によって異なることがあります。極端な言い方をすると、その意味合いが見える人と見えない人がでてきます。それゆえ、その部分が差別化要素になることもあります。

早速やってみましょう。帰納法は、複数の観察事象から意味合いを取るものですから、次の3つの事象から結論となるメッセージを考えてください。

・昨夜、40度を超える急な熱発があった
・関節や筋肉など節々が痛い
・全身がだるく、食欲もなくなってきた
→(結論は?)                             

これは「インフルエンザ(または風邪)にかかったようだ」でいいでしょうね。ただ、3つの観察事象にはインフルエンザや風邪などの言葉は一つも入っていません。それでいてインフルエンザというメッセージを引き出しました。ここにモノや事象からのメッセージ抽出の基本があります。メッセージには、観察事象より一段上の意味を持たせてください。例えば、上3つの事象をまとめたメッセージを、「発熱と体の痛みと食欲不振です」にしてしまうと単なる言い換えに過ぎません。So What? (だから何?)とツッコミを入れられてしまいます。

ところで、「あれ? この問題って前にやってなかったっけ?」と思われた方、正解です。以前は、関節や筋肉が痛いだけでした。今回は、根拠は複数という鉄則に沿ってほかの情報を統合し、インフルエンザという結論を導きました。形としてはピラミッド構造になるのですが、先ほど述べたように上層のメッセージは、下層の根拠群から一段上の意味を持たせます。

次のお題です。同じく次の3つの事象から、結論メッセージを出してください。

・ホテル事業は、稼働率が利益の決め手である
・エアライン事業は、稼働率が利益の決め手である
・病院事業は、稼働率が利益の決め手である
→(結論は?)                     

さぁ、どうでしょうか?
先ほどのインフルエンザと異なり、こちらの結論はバラつくかもしれません。一つの答えとしては、「固定費型産業(または資本集約型産業など)は、稼働率が利益の決め手である」があると思います。ここでポイントになるのは、固定費型や資本集約型というビジネスやその考え方を知っているかどうかです。これもメッセージ抽出の基本ですが、同じ事象を見ても、知っている人にはわかるけど、知らない人には(いくら根拠が複数あっても)わからない、のです。

私の教室では、「キプロスの10年度の宇宙戦略を考えてください」というお題を出すことがあります。キプロスという国を知らなければ、宇宙戦略にも興味がなく、そのさらに10年後って言われても…、と全く考えられない人(私を含めて)がいます。つまり、知らないことは考えられないのです。

そういう意味で、MBAに限らず学ぶということは、「知らないことを減らすこと」でもあるでしょう。メッセージには一段上の価値が必要ですが、そのベースとして知識が支えているのです。

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池田吉成(いけだよしなり)

RBS(立命館大学ビジネススクール)講師「論理的思考とプレゼンテーション」担当。 経営コンサルタント、企業再生の現場を経て、現在は千里リハビリテーション病院 統括事務長。
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