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アフィにも役立つ行動経済学:「感情」への訴えかけと「数字」への訴えかけは共存できない

ハフポストのこのニュース記事が話題になってるのを見て思ったこと。

ああ、ハフィントンポストというメディアは金融政策という「数字」が大事なお仕事でさえ、こういう「感情」に関する訴えを優先するんだな…と。

この記事に対してはてなブックマークでは「日銀総裁の仕事はそういう感情論じゃなくて、マクロな数字を見て判断することだろうが」という反応がずらっと並んでたし私もそう思う。普通の良識あるメディアなら日銀総裁への質疑のまとめでこういうタイトルはつけない。


でもね、悲しいけどこれはハフポストのこのタイトルのつけ方は「有効」なんだよ。それはこういうことです。


人間は「統計」の話になると感情移入のスイッチが切れる。

この動画は行動経済学の基礎中の基礎の話をしてくれています。
そこで語られているのは

①「感情」大事にするモードになっている状態の人は、数字や統計の話をしても通じにくい。
②「社会的モチベーション」と「金銭的モチベーション」も両立が難しいということ。

この考え方は結構大事だなあと思ってて、例えば今自分はしきりに「Landreaallが60%offセール中だからこの期間に買ってほしい!」って言い続けてますが、これは「数字」モードや「金銭的モチベーション」の話です。これと併せて作品の面白さを同時に語っても、読者の人は「うーん」ってなってしまうということです。

◇セールの安さを強調するときはむしろ徹底してセールの話をする! 
◇面白さの話をするときは徹底的に面白さの話をして、それが落ち着いたら最後にちょろっと安さの話をする程度にとどめる。
話の中でこれが行ったり来たりすると脳がフリーズしてしまって「購入」という決断をしてもらえなくなる……ということで次の記事からは気を付けようと思いました。

他にもVTuberにおける「スパチャ」の心理学的効果とかについても語られていて面白いので見てみるといいよ!



この話を踏まえてハフィントンポストの話の続きです

「ハフィントンポスト」や「東京新聞」の読者はご存じの通り「自分のお気持ち」が大事すぎて、常に「感情優先」のスイッチが入りっぱはしの人たちですそして、自分が社会的に正しい人間でないと気がすまない「社会的モチベーション」が暴走してるような状態です。

なので、統計の数値の話なんかしても全く頭に入ってこないんです。社会的正義のためなら経済的な正しさもぶっちぎってしまう。そういうモードなんです。

「いやいやさすがに主語がでかいでしょ」と思って、上のハフポストの記事に関するツイッターの感想を見てみたけど、ダメでしたね……。人気コメントが「黒田さんの庶民感覚のなさ」に抗議する「社会的モチベーション」に支配された人たちばっかりでした

本当に、ハフィントンポストはこういう読者によって成り立ってるんですね……

なので、そういう人たちに対してCPIの話とかしても無駄なんですね。同じ日本語を話してるからといって、こういう話が通じると思ってはいけないんです。


ハフィントンポストの標準的な読者に

「そもそもなぜ今円安が起きているのか」
「スーパーの物価は物価指数の中のごく一部に過ぎない」
「コストアップインフレと、需給バランスによるインフレの違い」
「日本とアメリカの経済状況の違い」
「黒田さんはなぜそれでも国債利上げをしないのか」

などなどをいくら丁寧に説明しても、理解できないんです。

なぜなら「自分の頭でも理解できるか」「自分のお気持ちにそうかどうか」を優先する感情スイッチが入りっぱなしだから。

記事にはちゃんと黒田さんの回答がのってます。彼の役割上こう答えざるを得ないんですよね。

黒田氏は「4月の生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、エネルギー価格の上昇を主因としてプラス2.1%まで上昇している」とした一方で、「我が国経済は依然として感染症による落ち込みからの回復途上にあり、雇用・所得環境は全体として弱めになっている」と述べ、「家計の所得が伸び悩む中での物価の上昇というのは実質所得の減少を通じて、経済の下押し要因として作用するため望ましくない」との見解を示した。

日本はアメリカと状況が全く違うので、インフレ抑制のためとはいえ、アメリカと同じように金利を引きあげたら、アメリカとの我慢比べに負けて経済が死ぬんです。そのために円安になってもまだ金融緩和を止められないし、金利上昇を抑えないといけない。そのくらい、日本経済はモロいんです。

というか主婦感覚の「インフレが起きて経済が苦しい」という意見は、実は日銀総裁の「日本経済が苦しいから金融緩和は継続だ」という判断と合致してます。

ところが、標準的なハフィントンポストの反応はこれです。まさに「群盲、象を撫でる」というような状態。これを見たら「まぁ、ハフィントンポストの読者に向けてはこういうタイトルで書かなければいけないのかな」という気持ちにはなりますね。

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