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東大を出たけれど18「親方と福地誠」

 その夜親方の差し馬相手となったのは、麻雀雑誌編集の福地という客だった。
 親方、というのは本郷界隈の寿司屋の大将である。差し馬好きで、ヒラではまず打たない。麻雀の方は暴走機関車さながらで、どんな状況でも全ツッパを貫き通す。回る、とか降りる、とかそういう概念が身についていない。親方が店で打つと聞けば、方々から下卑た思惑の客が集まったものだった。同卓を果たした福地もほくそ笑んでいただろう。
 

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